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米気象局「イグアナが落ちてくる」と注意喚起 本当に落ちたのか?

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
凍ったイグアナを手に持つ男性 (2018年)(写真:ロイター/アフロ)

ある爬虫類の飼育書によれば、イグアナは低温が苦手で、適温は25℃以上とあります。たしかに、よく見るイグアナの写真は、日光浴をしているのが多いというのが印象です。

そのイグアナに試練が襲っています。近年イグアナが大量発生しているアメリカ南部のフロリダ州に、一時的に大寒波が到来しているのです。

気象局も異例の呼びかけ

このため気象局は、21日、珍しい注意喚起を行いました。

「いつもの予報と違うのですが、今夜は気温が0℃近くまで下がるため、木からイグアナが落ちてきても驚かないでください。ぶるぶるぶる。」

なぜ落ちるのか?

イグアナは変温動物のため、気温が低くなると代謝も下がって、無駄なエネルギーを使わないように、動きを鈍くしたり、止めたりするそうです。また特に7℃以下になると、ショックで死んだようになるといいます。

そのうえでアメリカ気象局は、現地時間21日夜から22日朝にかけては非常に冷え込むため、木にしがみついていられなくなったイグアナが落ちてくる可能性があると言ったのです。

予報の精度

22日朝マイアミでは、この時期の平均を10℃近く下回る、4℃まで気温が冷え込みました。また強風の影響で、体感温度は氷点下3度でした。

では果たして、本当にイグアナが木から落ちてきたのでしょうか。

本当に落ちてきたようです。

地元のニュース番組はこの話題を大きく扱っていて、実際に外から中継をしているほどです。Local10Newsは、目を開けたまま地面に転がっているイグアナを、男性レポーターが素手で持ちながら紹介していました。男性が持ったイグアナは30センチくらいでしたが、イグアナのオスは、大きいものだと体長1.5メートル、体重9キロにも達するそうで、考えるだけでぞっとします。

動かないで死んでいるように見えても、実は生きていて、また気温が上がれば動き出すのだそうです。

ただ、イグアナの別名が「木になるチキン」と呼ばれているように、一部の人々はこれを食すようで、すでに木から落ちたイグアナが売買されているようです。レシピの例としては、シチューやタコスに入れたり、アーモンドとソテーしたりするのだとか。

ワニの寒さしのぎ

今回と同じように、強烈な寒波が襲った2018年の冬にも、木から落ちたイグアナが見つかっています。

さらにその年は、凍った池の水面に、鼻だけ出している静止状態のワニが何匹も見つかりました。凍死しているように見えるのですが、実際ワニは生きていて、寒さから身を守るために冬眠していただけだったのです。

爬虫類の越冬方法は、実にユニークです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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