グレートバリアリーフで史上最大の「白化現象」対策案に気候操作
世界最大のサンゴ礁にして、日本と同じ面積を持つオーストラリアのグレートバリアリーフ。この場所で今、前代未聞の危機が起きています。海水温の上昇で、観測史上もっとも広い範囲に、サンゴ礁の白化現象が発生しているのです。
ジェームズクック大学が3月下旬に上空から行った調査によると、サンゴ礁全体の25%に深刻な白化現象が起きていたとのことです。また、史上初めてグレートバリアリーフの北部・中部・南部のすべての地域で、この現象が起きていることも判明しました。
白化現象とは…
白化現象とは、どのような状態でしょうか。
海水温が上がるなど、海の環境が変化すると、サンゴにストレスがかかります。すると、サンゴと共生している「褐虫藻」という藻類が追い出され、鮮やかな色が失われ、サンゴの白い骨格が透けて見えるのです。
再び環境がよくなれば、褐虫藻を獲得して、サンゴも元の状態に戻ります。しかし、環境が改善せず白化現象が続くと、壊滅的な状態に陥ります。
グレードバリアリーフの海水温
今年2月グレートバリアリーフ近海の海水温は、1900年の観測開始以来最も高い気温を記録したようです。
調べてみると、平年よりも1、2℃高い30℃超となっていました。サンゴの生息に最適な水温は25~28°Cで、30°C以上の状態が続くと白化現象が起こるといわれています。
グレートバリアリーフの白化現象は、1998年、2016年、2017年に続き、4度目のことです。もし温暖化効果ガスを大幅に削減できなければ、2044年以降には毎年のように白化現象が起こるとも予測されています。
気候操作で解決なるか
深刻化する状況に、オーストラリア政府は1億5000万豪ドルを投じて「サンゴ礁修復・適応計画」に取り掛かると表明しています。
43個の方法が思索されていますが、その中の一つに「クラウド・ブライトニング」と呼ばれる人工的な気候操作法があります。
これは、塩の粒を海上から空に向かって散布して、空中に雲粒を作ることで、太陽光をより多く反射させるというものです。
すでに実験が始まっていますが、「クラウド・ブライトニング」には問題もあるという研究者もいます。
これによって、効率的に一部の地域を冷やすことができる一方、地球規模の大気の流れを変えてしまい、他の地域の天候を変化させてしまう可能性があると指摘されているのです。
また、もし海水温の上昇を和らげることができたとしても、台風の巨大化に伴う大波や、二酸化炭素の上昇による海洋の酸性化もまた、サンゴの破壊や衰退の原因となります。地球規模の対策が必要であることは、言うまでもありません。
(↑実際にグレートバリアリーフ近海で行われている、クラウド・ブライトニングの実験の様子)