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猛スピードの北朝鮮のミサイル開発 新型ICBM「火星18」も数か月内に完成させ、生産体制に入る!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮が13日に発射した新型ICBM「火星18」(労働新聞から)

 Jアラート(全国瞬時警報システム)の発令で日本中が大騒ぎとなった北朝鮮が発射したミサイルは新たに開発された固体燃料を使用する3段式の大陸間弾道ミサイルであった。

 今朝の北朝鮮の国営通信によると、ミサイルは「大出力固体燃料多段エンジンの性能と段分離技術、異なる機能性制御システムの信頼性を確認し、新たな戦略兵器システムの軍事的効用性を評価するため」試射されていた。

 北朝鮮は昨年12月に北朝鮮国内では初めてとなる140tfの推進力を持つ大出力固体燃料多段エンジンの噴出実験を行っていた。今回、その固体燃料エンジンによる新型大陸間弾道ミサイル「火星18」の発射実験であった。それも、移動式発射台から発射された後、空中で固形燃料(エンジン)に点火するコールドランチ方式が取り入れられていた。北朝鮮が2017年2月にSLBM(潜水艦弾道ミサイル)を地上型に改良した中距離ミサイル「北極星2」を発射した際に使われた技術である。コールドランチ方式は発射台の損傷を防ぐためである。

 日本ではミサイルが途中でレーダーから消えたことで一部では「失敗した」との見方がなされたが、北朝鮮は今回の試射について「周辺国家の安全と領内飛行中多段分離の安全性を考慮して第1段は標準弾道飛行方式に、第2、第3段はロフテッド軌道方式に設定し、時間遅延分離始動方式でミサイルの最大速度を制限しながら、兵器システムの各系統別技術的特性を実証する方法で行われた」として、最初から日本の領海、あるいは領土の通過を避けていたことを明らかにしていた。

 北朝鮮の発表ではミサイルは分離され、「第1段は咸鏡南道金野郡虎島半島の前方10キロ離れた海上に、第2段は咸鏡北道漁郎郡の東335キロ離れた海上に安全に着弾した」とされている。朝鮮中央通信は分離された写真も公開していた。

 北朝鮮は「火星18」について「核反撃態勢の効用性を急進展させ、攻勢的な軍事戦略の実用性を変革させるであろう」と、その意義を強調していたが、まだ「完成した」とは言っていないことから今後さらに試験を重ねることになる。

 今年2月の人民軍創建75周年の軍事パレードで「火星18」は5基登場していた。今回、そのうちの1基が使われたとすれば、残り4基あるのでこれから数回実験を重ねることになるであろう。実際に液体燃料使用の大陸間弾道ミサイル「火星17」も4~5回テストを繰り返した後、昨年11月18日に最終試射に成功させ、生産体制に入っていた。

 驚くべきはそのスピードで2月27日の1回目の試射からほぼ9カ月間で完成させ、僅か3か月間で12基も生産していた。今年2月の軍事パレードには移動式発射台に載せられた「火星17」が11基(予備を含めると12基)登場していた。

 今年7月は朝鮮戦争停戦70周年を迎える。停戦日の27日には再び軍事パレードを行う可能性も考えられる。北朝鮮がそれまでに完成を目指すならば、今後数か月の間に更なる試射を繰り返すことになるであろう。

(参考資料:金正恩政権が8日の軍創建日に12回目の軍事パレードを計画! 直近4回を徹底検証!)

 北朝鮮は2021年1月に開催された党第8回大会で▲核兵器の小型・軽量化と戦術武器化の様々な手段による適用▲中・大型核弾頭の生産▲核先制及び報復手段として1万5千km射程圏内を正確に打撃できるICBMの保有▲極超音速滑空ミサイルの保有▲水中・地上固体エンジン大陸間弾道ミサイルの保有▲原子力潜水艦とSLBM戦略兵器の保有▲軍事偵察衛星の運用▲500kmを精密偵察できる無人偵察機の開発▲多弾頭ミサイルの開発を国防発展5か年計画として打ち出していた。

 中でも▽核兵器の小型・軽量化と超大型核弾頭の生産▽極超音速滑空ミサイルの保有▽1万5千kmの射程圏内を正確に打撃できるICBMの保有▽原子力潜水艦の保有▽軍事偵察衛星の保有を5大課題としていた。

 開発は同時並行的に行われているが、次の優先順位としては軍事偵察衛星であろう。

 偵察衛星の打ち上げに向けた試射も昨年は2月と3月に、さらに12月と3回行っている。年末の12月18日には準中距離弾道ミサイル(旧型ノドン)を使って「偵察衛星開発のための重要な実験」を行っていた。

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記は昨年3月9日国家宇宙開発局を視察した際、「南朝鮮(韓国)地域と日本地域、太平洋上での米帝の侵略軍隊とその追随勢力の反朝鮮軍事行動情報をリアルタイムで我々の武力に提供するため党第8回大会が提示した国防力発展5大重点目標達成で偵察衛星開発が非常に重要である」と発言していた。

(参考資料:軍事衛星発射がカウントダウン? 党軍事会議での「戦争抑止力を攻勢的に拡大せよ」の「金正恩発言」の意味)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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