【Yahoo!ニュース 個人】11月の月間MVAとMVCが決定
■Yahoo!ニュース 個人、11月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました
社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、すぐれたオーサーコメント「月間MVC」も選出しました。厳選5本の記事と1本のオーサーコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。
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11月のMVA
■国内リーグ、インフラ、そして育成 未知の国・キルギスのサッカー事情(宇都宮徹壱)
筆者による受賞コメント:4年ぶりに月間MVAをいただけることを、とてもうれしく光栄に思います。サッカーは、単に「勝ち負け」だけがすべてではありません。ましてやキルギスのように、日本代表の試合がなければ絶対に赴くことがないような国での試合。だからこそ「キルギスって、どんな国なのだろう?」「かの国では、どんなサッカーが営まれているのだろう」といったことにも目を向けてみたい──。
そんな思いで取材した記事が、このような形で評価されたことに、あらためて取材者としてのやりがいを感じることができました。現地で快く取材に応じていただいた皆さん、そしてアテンドと通訳を引き受けていただいた二瓶直樹さんに、心からの感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。ありがとうございました。Спа Шеба!(宇都宮徹壱)
選出理由:11月14日に行われた、サッカーW杯2次予選の相手・キルギスのサッカー事情をまとめた記事です。
国内リーグ事情や育成、背景にある国民性など、あまり知られていないキルギスという国を解説しています。試合当日のタイミングで公開されており、スポーツを通じて対戦国を知る一助になったのではないでしょうか。
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■人生会議のPRポスターが1日で発送中止になった件 緩和ケア医の視点(大津秀一)
筆者による受賞コメント: この度はご選出頂き、ありがとうございました。人生会議に関しては以前も記事を書きましたが、その際は何も反響がありませんでした。今回のポスターは良くも悪くも大きな話題になり、記事も読んで頂いたようで、言葉が広がったことは疑いないと考えます。
今回の件をきっかけに、近しい人との人生や医療に関する話し合いがより進むことに期待したいです。また一方で、健康人と病者の感じ方の隔たりもまた浮き彫りになったと思います。患者さんと医療者のみならず、健康者と病者など、様々な立場の違いから生じるギャップが埋まり、手を携えて進める一助となるべく、引き続き発信していきたいと存じます。(大津秀一)
選出理由:もしもの時のために自身が望む医療やケアについて事前に家族や医療関係者と話し合う「人生会議」をめぐり、厚生労働省のPRポスターが批判を浴びたことを取り上げた記事。
ポスター内容への違和感を指摘しつつ、炎上で目がそれてしまいがちな「人生会議」そのものの意義や効果に改めて目を向けさせてくれます。苦痛を和らげるための「緩和ケア」に向き合う医師だからこその視点が光る内容です。
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■大人のひきこもりを救えなかった自立支援施設を考える 「新東名高速で男性飛び降り死」ニュースの衝撃(加藤順子)
筆者による受賞コメント:11月半ばに起きた新東名高速での飛び降り死事故で、神奈川県内の「自立支援施設」の存在が報じられたことを契機として、ひきこもりの「引き出し屋」による関与が疑われています。今回の記事掲載後、共同通信も、<静岡県警によると男性は30代でひきこもりだったとみられ>、と報じました。また、捜査を単純な事故や自死事案といった形で早期終結させまいと、ひきこもりに詳しい識者や家族会、支援業界団体も、セクターの垣根を超えて意見集約を始めています。さらに衆院法制局が、強引な引き出しや連れ去りの行為は犯罪性や違法性が高いと見解を示したことから、引き出し屋に対する規制化に向けた議論の機運が高まっています。(加藤順子)
選出理由:「大人の引きこもり」当事者に対して、自立支援施設による「引き出し行為」が疑われる事件に際して書かれた記事。
勃興する悪質な支援施設を見分ける方法は? という問いに、そうした施設を好意的に報じたメディアや、福祉から見放された当事者の母親のコメントを取り上げながら『「見分け方」なんて、ない。』と筆者は答えます。
仕組みが整わない引きこもり支援について社会がどう向き合っていくのか、という問いを投げかけてくれました。
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■ノニト・ドネア、井上尚弥との死闘で「私はミステイクを犯した」 WBSS決勝後独占インタビュー(杉浦大介)
筆者による受賞コメント:月間MVAに選出いただき、ありがとうございます。日本ボクシング史上に残る激闘の取材は個人的にも忘れられないものとなりました。実は試合後のドネアを乗せた車は道に迷い、病院での検査に必要以上の時間がかかってしまったのだとか。
ドネアがまっすぐに病院に到着し、私よりも早くホテルに戻っていたら…。混乱の中で、もう連絡も取れなくなっていたかもしれません。ボクシングの試合同様、わずかな違いで運命が変わるものですね。
日本滞在中に最大限のアクセスを許してくれたドネア夫妻、そしてニューヨークから取材、執筆を応援してくれた愛妻(&2歳の娘)に心から感謝したいです。(杉浦大介)
選出理由:11月7日に行われたボクシングのWBSS決勝で、井上尚弥と対戦したノニト・ドネアの独占インタビューです。
筆者は、日本のメディアが勝者の井上に集中する中、敗者のドネアを滞在先で待ち構え、試合直後の取材に成功しました。激闘の真実を引き出した言葉は、これまで数多く取材してきた筆者ならではの記事です。
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■患者の声にじっくりと耳を傾け、人工乳房・乳頭をオーダーで作る職人(若林朋子)
筆者による受賞コメント:このたびは月間MVAに選出いただき、ありがとうございます。とても励みになります。
オーダーで人工乳房・乳頭を製作する伊藤尚美さんの記事を書くにあたり、本人から「断定的な表現を避けてほしい」との要望がありました。そこで、本来なら確信を持って言い切りたい部分でも「・・と感じる」などと柔らかく表現してあります。「がん患者の決断をジャッジしない」というスタンスを尊重したつもりです。
近年、当事者同士が支え合う「ピアカウンセリング」の重要性が注目されています。伊藤さんによると、「言いっぱなし」「聴きっぱなし」が原則だそうです。インタビュイーの「傾聴の姿勢」を、文体も含めて表現することが、原稿のテーマだと感じました。新たな気づきを得た取材でした。
インタビュアーも突っ込んだ質問をする前に、まずは「傾聴の姿勢」が大切なのかもしれません。今後も、魅力的な人との出会いを記事にしていきたいと思います。(若林朋子)
選出理由:日本人女性の11人に1人が罹患すると言われる乳がん。自らも手術を受けた経験があり、オーダーで人工乳房と乳頭を製作する富山市の伊藤尚美さんを紹介した記事です。
患者の心身の痛みを理解し、寄り添いながら、精巧に1つ1つを作っている様子が伝わってきます。伊藤さんの生き方も参考になる記事です。
11月のMVC
■『日韓合同でりゅうぐう観測 来秋にも、北大の特殊望遠鏡で』の記事へのオーサーコメント(秋山文野)
元の記事には、「日韓共同観測」という言葉尻だけをとらえたコメントが並んでおり大変悲しくなりました。「はやぶさ」計画で活躍された石黒正晃教授がソウル大学で研究されている背景に、太陽系科学研究のポストが日本の大学、研究機関に多くないという面もあります。
私のコメントでは研究環境の問題まで踏み込んでいるわけではありませんが、意義ある観測計画であることは少しでもお伝えできるようにと思っています。(秋山文野)
選出理由: 小惑星りゅうぐうの観測を日韓合同チームで始めるというニュースに対して、まとめ役である石黒教授とソウル大学のチームがこれまで「はやぶさ」計画に貢献してきたポイントを解説。日韓合同で観測することの意味についてフラットな視点で教えてくれました。