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ノニト・ドネア、井上尚弥との死闘で「私はミステイクを犯した」 WBSS決勝後独占インタビュー

杉浦大介スポーツライター
井上尚弥との試合を終えて単独インタビューに応じたノニト・ドネア(筆者撮影)

 今回のインタビューは7日のワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級トーナメント決勝後、前WBA世界バンタム級スーパー王者ノニト・ドネア(フィリピン)が滞在するホテルで収録された。

バンタム級史に残る死闘を終えて

ーー凄まじい試合でした。終了後、会見に出ずに病院に向かいましたが、身体は大丈夫ですか?

ND : まったく問題ないですよ。ハードなファイトだったし、何度か効かされてしまったから、病院で診断を受けて、大丈夫だと確認しておきたかったんです。余計な心配をせずに家に帰りたいですからね。

ーー井上尚弥(大橋)選手との激しい戦いをどう振り返りますか?

ND : 良い試合になりましたが、私は多くのミスを犯してしまいました。ゲームプランを間違えたところがあります。パワーに頼りすぎてしまったことを否定はしません。もちろん井上を讃えなければいけませんね。彼は単なるパワーパンチャーではなく、タフなファイターであることを証明しました。私はこれまで左フックで多くの選手を倒してきましたが、彼は最後まで立ち続けました。

ーー井上選手の戦力は事前に予想していた通りでしたか?

ND : パワーはありましたが、人々に言われているほどではありませんでした。ただ、スキルは想像以上。そして、タフネスは素晴らしかったと思います。

ーー11ラウンドは左ボディでダウンを喫しましたが、ダメージは激しかったですか?

ND : あれは効きましたね(苦笑)。あのパンチを受けた後、私には選択肢があり、立ち続けることもできました。ただ、その上でまたボディを打たれたら、そこで終わってしまうかもしれない。だから膝をついてカウントを聴いたんです。そのカウント中に回復したのですが、その後の私はまた顔面へのビッグパンチを狙いにいってしまったのは頂けなかったと思います。

ーーその前の9ラウンドにはあなたのパンチを浴び、井上選手は効いていたようにも見えました。あそこで詰めにいけなかった理由は?

ND : 先ほど“ゲームプランを間違えた”といったのはその部分です。カウンターで井上にダメージを与えたから、その後もカウンターを狙い続けてしまった。あそこは自ら仕掛け、仕留めにいくべきでした。それこそが今戦で私が犯した最大のミステイク。その代償を敗戦という形で支払うことになりました。

ーー確かに敗れましたが、リングを去る時、日本のファンはあなたにスタンディングオベーションを送りました。

ND : ファイターとして、私たちはすべてを出し切りました。2人のウォリアーが全力を尽くしたことに、日本のファンも感謝してくれたのでしょう。

井上はこれまでで最高の対戦相手

疲弊していることを隠せなかったドネアだが、それでも最後まで丁寧にインタビューに応じてくれた (杉浦大介)
疲弊していることを隠せなかったドネアだが、それでも最後まで丁寧にインタビューに応じてくれた (杉浦大介)

ーーそんなファンの反応が示す通り、井上のKO勝利が濃厚と目された一戦で、あなたは人々が間違っていると証明しました。そのことに満足感は感じませんか?

ND : 自分に何ができるかはわかっていたので、周囲が間違っていると示すことに興味はありませんでした。それよりも、大切なのは私にはまだ改善点があるということ。この試合からも多くを学びました。まだ最高の自分には到達していないし、そこに辿り着きたいと思っています。

ーー試合後、井上選手からは何を言われたのでしょうか?

ND : それほどしっかりとした話をしたわけではないですが、彼は私に尊敬の念を盛んに示してくれました。

ーー戦い終えて、井上選手はこれまでで最高の相手だったと感じていますか?

ND : そうですね・・・・・・はい、確かに彼こそがこれまで対戦した中で最高の選手だったと思います。難しい試合でしたし、多くのパンチを浴びました。彼は私が望んでいた通りの戦いをさせてくれませんでした。

ーー井上選手の今後をどう予想しますか?

ND : これから先に階級を上げるのであれば、より難しい旅になるでしょう。ただ、この階級に止まるのであれば、長い間勝ち続けられると思います。

ーーお話を聞いている限り、あなたはまだ現役引退を考慮するつもりはなさそうですね。

ND : もちろんです。私は依然として戦うのが大好きです。今回の試合で、私が衰えているわけではないと示せたはずです。誰もが恐れた“モンスター”と戦い、1ラウンドで倒されると考えた人がたくさんいたにも拘らず、私は戦い続け、逆に倒してしまう寸前までいったんですからね。まだ力を残しているし、世界に向かって示すべきこともたくさん残っています。

ーー当面のプランは?

ND : リラックスして、子供たちと一緒に多くの時間を過ごしたいです。ずっと子供たちと遊ぶ時間がありませんでしたからね。しばらくはゆっくりするつもりです。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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