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新成長戦略の女性活躍支援は女性企業戦士をつくることなのか

前屋毅フリージャーナリスト

「企業戦士」という言葉が流行したのは高度成長のころだった。個人生活も家庭も顧みず企業のために働くビジネスマンを、戦場に送りこまれてすべてを犠牲にして戦う兵士に例えた言い方だった。

安倍晋三政権の新成長戦略である「日本再興戦略改訂版」に盛り込まれた「女性の活躍支援のための学童保育の拡充」が、「女性企業戦士を増やす」ことに真意があるようにおもえてならない。安部首相も「学童保育で待機児童ゼロを実現して、女性の活躍を阻んできた『小1の壁』を突き破る」と女性支援を強調してみせるが、ほんとうに心底、そう考えているのだろうか。

保育園などでは延長で子どもを預かってくれるが、小学校には延長制度がない。帰宅した子どもを放っておけないので、仕事をする機会や時間が限られてしまう。これが、いわゆる「小1の壁」である。

だから学校の授業が終わったあとに子どもを預かってくれる学童保育の制度を拡大し、入りたい子どもは全部を受けいれる、待機児童ゼロにすれば、女性は働きやすくなり、活躍できるはずだ、というのが政府の理屈のようだ。

確かに、もっともだ。もっともなのだが、どうにも引っかかる。ひねくれた見方といわれるかもしれないが、人手不足で経済成長がおぼつかなくなったので、労働力として女性を担ぎ出さなければならなくなったが、それには子どもが問題になりそうだから、学童保育で面倒をみさせればいい、という発想にしかおもえないのだ。

女性の活躍というが、もっと女性個人に活きいきと生きて欲しいということを真意にしているのだろうか。どうも、企業のために活躍してもらって日本経済に貢献して欲しい、と言っているだけにしかおもえない。

学童保育に子どもを預ける働き方が、多くの女性にとって有意義なことなのだろうか。それが有意義な面をもっていることを否定するつもりはまったくないが、そういう働き方しか選択の余地はないのだろうか。

女性の活躍を阻んできたものは、もっと根深いのかもしれない。それを安倍政権が新成長戦略で突き崩したとはおもえない。女性の活躍支援は、女性企業戦士をつくることではないはずだ。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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