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女性従業員に対する日本の「メガネ禁止令」海外メディアは女性差別にビックリ! アメリカなら訴訟に発展 

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
女性従業員にメガネ着用を禁止する職場があるとは!写真:flipboard.com

 ネットのニュースに目を通していたら、信じられない見出しが目に飛び込んできた。

「日本の女性たちは仕事ではメガネを着用しないように言われた。彼女たちは激している」

というワシントン・ポスト(電子版)の見出しだ。

 何事かと思いサーチすると、他にも多くの海外メディアが女性従業員に対する日本企業の「メガネ禁止令」について取り上げている。

BBC放送職場での女性に対する日本の“メガネ禁止”は反発を誘発

Quarts「メガネは冷たい印象を与える」:日本企業が女性スタッフにメガネ着用を禁じる理由

フォーブス誌「何を身につけろと言わないで」:日本の女性が職場でのメガネ禁止に抗議

ザ・ガーディアン日本の女性たちが、職場でメガネを着用する権利を要求

 メガネ着用を禁止している職場とその理由については、・航空会社(安全上の理由)・美容部員(メイクがお客さんに見えにくい)・企業受付(冷たい印象を与える)・料亭(和装にメガネは似合わない)などが挙げられているが、海外メディアもこれらの例を記事内で紹介している。

非常に差別的

 また、識者のコメントも紹介されている。

「女性だけにメガネを禁じているなら、女性差別だ」(ヒューマン・ライト・ウオッチの日本ディレクター、土井香苗氏)

「メガネをかけてはならない理由が全くおかしい。ジェンダーを問題にしている。非常に差別的だ。古くからある、伝統的な日本の考え方を反映している。企業は、女性らしさという女性の見かけに価値を置いており、メガネをかけている女性は女性らしくないと考えている」

(京都外国語大学の根本宮美子教授)

「メガネをかけることが職場で本当に問題なのなら、男女全員、メガネを禁止にすべきだ。メガネ問題はハイヒール問題と全く同じ。女性従業員にだけ適用される規則になっている」(ハイヒール強制に異を唱えて、#KuToo ムーヴメントを起こした石川優実氏)

 また、根本匠前厚労相が、6月の国会答弁の際、石川氏の訴えに対し「社会通念に照らして業務上必要かつ相当な範囲」と現状を容認する発言をしたことも指摘されている。

 さらに、世界経済フォーラムの「世界ジェンダーギャップレポート」では、日本は149位中110位と、男女のジェンダーギャップが大きいことに言及しているメディアもある。

 実際、このレポートは衝撃的だ。日本は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダを含めたG7の国々の中では最下位。しかも、中国、インド、マレーシア、ネパール、ミャンマーよりも下のランクなのだ。

アメリカは職場での服装において、ジェンダー差別を禁止

 海外メディアが驚くのも無理はない。どう見たってこれは女性差別だ。それどころか、中には、医療上の問題を抱えている女性もいるだろうから、メガネ着用を強制することは大きな人権問題にもなる。アメリカだったら、訴訟に発展してもおかしくない。 

 アメリカには、職場での服装差別を禁じる法律があるからだ。1964年に制定された公民権法には“タイトル7”というセクションがあり、これは、15人以上の従業員を抱える雇用主が、人種、肌の色、出生地、性別、宗教上の理由で、従業員の雇用を拒否したり解雇したりすることを禁じている。“タイトル7”はまた、宗教やジェンダーを理由に、職場では服装に対して差別してはならないことも明確化している。

 つまり、宗教上、その服装が従業員にとって必要なら、雇い主はそれを理由に従業員を解雇することはできない。

 また、“タイトル7”は、服装においてもジェンダー差別を禁じており、雇用主は、服装に関して、女性に対して男性とは異なる対処をしてはならない、としている。そして、これに遵守しなければ、雇用主は性差別訴訟を受けうるという。

(参考:Laws on Discrimination for Clothing Attire in the Workplace

 つまり、今回の「メガネ禁止令」はもちろん、「ハイヒール強制令」も、アメリカなら、性差別訴訟の対象になりうるのだ。

メガネをかけて職場に行こう!

 安倍政権は女性のエンパワーメントを訴え、女性活躍推進法を制定し、「すべての女性が輝く社会づくり本部」というものも設置したが、職場での時代錯誤的な女性差別の現状を見る限り、本当に女性を輝かせたいのか甚だ疑問だ。

 それでも、ツイッターで、日本の女性たちが「メガネ禁止令」は女性差別だと怒りの声をあげていることには一縷の光を感じる。結局、性差別の被害者である日本の女性たちが声を上げない限り、何も変わらないからだ。

 そして、次は、アクションだ。

 現在、職場でコンタクトレンズをつけて働いている日本の女性たちへ。

 明日は、みな一斉にメガネをかけて職場に行ってはどうだろう! 

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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