小鷹に連敗で3月終了。30日は1発で逆転負け、31日はサヨナラ負け…《阪神ファーム》
まず最初に、阪神ファームと社会人チームとの交流試合についてお知らせします。あす4月2日は日本新薬、3日はカナフレックスと鳴尾浜で対戦します。日本新薬は榎田投手の弟・宏樹投手が、またカナフレックスは元阪神の藤井宏政選手がいるチーム。昨年はパナソニックの阪口哲也選手が鳴尾浜にやってきましたが、今度は藤井選手ですね。和歌山箕島球友会とも試合があれば穴田真規選手も見られるのに。
それと4月26日は履正社学園、27日は関西メディカル学院と同じく鳴尾浜で交流試合があり、時間はすべて12時30分からです。以上、お知らせでした。
筑後でのソフトバンク戦
できたてほやほや、ソフトバンクのファーム新球場『タマホーム スタジアム筑後』で行われた、ウエスタン・リーグのソフトバンク-阪神3連戦。29日は打ち勝った阪神ですが、そのあと連敗してしまいました。30日は降りしきる雨の中で青柳投手が牧原選手に逆転3ランを浴び、そのまま敗戦。31日は0対0で9回裏に石崎投手が打たれてサヨナラ負けです。3日間とも寒かったり雨が降ったりで、関西から遠征されたファンの方も大変だったでしょう。次は青空を見たいですね。
では30日と31日、2試合分をまとめてご紹介します。30日は現地で取材したので、いつも通り試合経過とコメントを書きました。31日は結果のみ、30日に聞いたドリス投手の話を一緒にご覧ください。
■30日■
雨中の1発で逆転負けした2戦目
《ウエスタン公式戦》3月30日
ソフトバンク-阪神 2回戦 (タマスタ)
阪神 020 000 000 = 2
ソフ 000 030 00X = 3
◆バッテリー
【阪神】●青柳(1勝1敗)-田面-二神-ドリス / 清水
【ソフ】○笠原(1勝)(7回)-岡本(1回)-Sスアレス(1勝4S)(1回) / 拓也
◆本塁打 牧原2号3ラン(青柳)
◆二塁打 新井、古澤
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率
1]中:柴田 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .265
2]右左:俊介 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .350
3]左:ペレス (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .357
〃右:中谷 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .286
4]三:陽川 (3-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .326
5]一:新井 (4-2-1 / 1-0 / 0 / 0) .421
6]指:原口 (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .267
〃走指:板山 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .217
7]二:坂 (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .156
8]捕:清水 (3-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .333
9]遊:森越 (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .219
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
青柳 5回 98球 (4-2-5 / 3-3 / 3.27) 141
田面 1回 18球 (2-0-0 / 0-0 / 5.00) 143
二神 1回 10球 (0-0-0 / 0-0 / 4.50) 142
ドリ 1回 17球 (0-1-0 / 0-0 / 0.00) 152
試合経過
30日も先取点は阪神。2回に先頭の陽川が四球を選び、新井の左中間二塁打で一塁から一気に生還!さらに1死三塁となって清水が左前タイムリー。でも結果的に笠原をはじめとするソフトバンク投手陣から得点できたのは、この回だけだったのです。
阪神の先発は青柳でした。1回は1死から左前打された牧原の盗塁を清水が素早く阻止!続く塚田に四球を与えると、ここも清水が刺し、あっという間にチェンジ。2回は三者凡退、3回は先頭に四球を与えながらも後続を断って、4回は塚田への四球と江川の右前打などで2死二、三塁としますが抑え、ここまで2安打無失点。
しかし雨が激しくなった5回裏に展開があります。青柳はまず先頭の李杜軒を四球で出し、拓也の三振でまたしても清水が盗塁を阻止!これで2死ランナーなしになったものの、マウンドの状態が相当悪かったのでしょう。青柳は踏み出す左足も着地する右足も何度か滑らせ、古澤への2球目で体勢を崩し手をついてしまいました。
ベンチから西田が持っていったバスタオルで手を拭いた時に少し笑顔が見えた青柳ですが、古澤には左中間二塁打を浴び、続く釜元に四球を与えたところで久保投手コーチが再度要望して、マウンドに乾いた土を入れてもらいます。そして2死一、二塁でゲームが再開された直後、牧原に逆転の3ラン…。塚田から空振り三振を奪って、雨中の5回が終わりました。
6回は田面が2死後に連打を許しながら抑え、7回の二神は内野ゴロ3つで打ち取って、8回はドリスがクリーンアップ相手に三者凡退でした。つながらずじまいだった打線は6回に俊介が四球を選びますが盗塁を刺され、陽川が右前打するも無得点。7回は原口が四球、犠打で1死二塁となっただけ。9回に新井が右前打したものの他は三振3つと、反撃の糸口さえないまま試合終了です。
青柳の試練、この雨を経験に…
青柳投手に関して、まず久保投手コーチの談話からご紹介しましょう。「マウンドが悪すぎるのを、自分でアピールしなきゃというか。投げられない状態で投げていたんですよ。ケガしてもしょうがないような。プロだから、自分で自分を守っていかないと。自分で主張してね。自分の生活を守るために遠慮はいらないから。1軍でも起こりうることなので、こういうのを経験としてね」
あのままだとケガにつながる可能性もあったという久保コーチ。最後は「いや~故障しなくてよかった」と、本当にホッとした様子でした。
ただし、青柳投手は何度かお願いをしたそうですよ。「土を入れてください」と。でも5回裏2死ランナーなしで、すぐにグラウンド整備があるから「もうちょっと頑張ろう」と言われたとか。手間がかかるというよりは、間を空けず投げ切った方がいいんじゃないかってことでしょうね。二塁打を浴びたあとでまた要望したんですが「断られちゃいました」と苦笑い。そして四球を出したところで久保コーチが出向いたというわけです。
2死一、二塁となって、ようやく土が入り、でも許してしまった逆転3ラン。「ツーシームです。真ん中、高めでした。1球で逆転され、しかも負けにつながったんで…」。申し訳ない。悔しい。不甲斐ない。いろんな思いが見て取れる表情です。4回までも含めて「フォアボールと球数が多かったことがよくないですね。前回の反省点が改善されていなかった」と振り返り、雨もあってマウンドは「めっちゃ悪かった」という5回は「ストライクを入れるのが精一杯でした」と目を伏せる青柳投手。
掛布監督は「僕らが気づいてあげるべきだった。久保コーチが行った時はもうだいぶ悪かったみたいで。でもプロでやる以上、自分で言わないとケガにつながるから。それは勉強したんじゃないかな」と言います。おそらく、もっと強く主張していい、しなくちゃいけないという意味でしょう。
チームを引っ張る“新井アニキ”
次は新井良太選手。25日からの広島戦と29日からのソフトバンク戦で、5試合のうち3試合は初回にタイムリーを放っていて、30日は2回にタイムリーが出ています。調子がいいですねと言われて「普通だよ~、普通だよ~」と繰り返しました。掛布監督からアドバイスも?「教えていただいているので、しっかり自分の中で振り返って頑張っていきたいですよね」。打席で落ち着いているのでは?「そう見えているならいいんじゃないかな」
なお青柳投手が、4回1死からストレートの四球を与えた際にマウンドへ歩み寄り声をかけました。「独特なフォームなんだから、もっと腕を振って思いきりいけ!と言いました」。なるほど。5回には青柳投手が苦手な牽制を、しかも雨の中でやった時に、ワンバウンド送球をしっかりキャッチし、何度も大きな声をかけたりしていた新井選手。頼りになる“アニキ”ですけど、ずっとここにいるわけにはいきませんね。
掛布監督は新井選手のことをこんなふうに言っています。「いいよ。いい。こっちに来て取り組んで、いい状態で打ってる。きのう(29日)は振り過ぎの傾向があったけど、きょうはリラックスしてた。由宇からずっといい。本人も手応えを感じていると思う。左ひざを柔らかく使えるようになったし。今はうまく使えてるから、体がレベルに振れる。ティーバッティングなんかもね。野球は下半身が大事。意識しないで、それを1年間やれば、そんなに崩れることはない。いろいろ考えすぎてしまうところがあるからな、良太は」
現在、リーグ2冠の陽川
陽川選手は30日まで8試合連続安打(31日はノーヒットでストップ…残念)でした。3月15日に公式戦が始まって2試合連続ホームランがあり、18日から30日まで8試合連続安打。つまり、その間で打っていないのは17日のオリックス戦1試合だけだったってことですね。しかもホームラン4本を含んで。31日の時点で4本塁打、11打点、15安打(ペレス選手ら複数)ともリーグトップです。
8試合連続について陽川選手は「1打席、1打席、しっかり切り替えて入れていると思います」とのこと。30日は6回に右方向へいいヒットがあって、掛布監督も評価していたと聞き「追い込まれていつも通りだと、外の変化球が打てないので。そこは継続してやっていきたい」と話しました。継続は大きなテーマ?「結果がついてくると思うので、いいところは続けていきたいです」
三振が多くても、豪快なホームランが見たいというファンの方は多い選手。本人は確率も上げたいでしょうけど、その魅力は捨てがたいですよね。
最後に清水選手のコメントも書いておきます。19日のオリックス戦に続いて青柳投手をリードし、打つ方でも2回にタイムリーを放って、もちろん盗塁阻止でも助けましたね。1試合に3つ刺したのは経験あり?と聞いたら「わからない」という返事。そして「それも3ランで帳消しです…」と。逆転3ランを、打たれた青柳投手以上に悔やむ清水選手でした。
■31日■
3戦目はサヨナラで今季初の完封負け
31日は予報通り朝からポツポツと雨が降っていたようで、試合中に何度か激しくなったものの最後まで行われています。私はテレビ観戦でしたが、スコア通りの投手戦で、阪神の先発・守屋投手は6回を投げ、2安打6三振1死球で無失点と好投!そうそう、31日は3回裏が始まる前にもうマウンドに土が入れられていましたよ。
しかし打線がわずか3安打ですからねえ。3回1死から小宮山選手が中前打、中谷選手は相手エラー、2死後に坂選手の四球で満塁と攻めたましたが、ペレスが三振で3者残塁…。7回は小宮山選手の左前打と代打・板山選手の中前打で1死一、二塁とするも俊介選手が二ゴロ併殺打で無得点。他は四死球での出塁があっただけです。
守屋投手のあとドリス投手が2イニングを0点に抑え、0対0のまま最終回に突入。3人目の石崎投手が牧原選手に左前打され、犠打で二塁へ。2死後に釜元選手のショート内野安打で一、三塁。ここで代打・真砂選手にフルカウントの末、146キロの真っすぐを左前打…。二神投手がホームランを浴びた27日の広島戦に続く、今季2度目のサヨナラ負けを喫しています。完封負けは今季公式戦初でした。
《ウエスタン公式戦》3月31日
ソフトバンク-阪神 3回戦 (タマスタ)
阪神 000 000 000 = 0
ソフ 000 000 001x = 1
◆バッテリー
【阪神】守屋-ドリス-●石崎(2敗1S) / 小宮山-鶴岡(7回~)
【ソフ】東浜(5回)-○中田(1勝)(4回) / 細川
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率
1]左右:俊介 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .304
2]遊二:坂 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .143
3]指:ペレス (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .326
4]三:陽川 (3-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .306
5]一:新井 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .364
6]中:柴田 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .237
7]二:西田 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .167
〃捕:鶴岡 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .750
8]捕:小宮山 (2-2-0 / 0-1 / 0 / 0) .444
〃走遊:森越 (1-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .212
9]右:中谷 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .267
〃打左:板山 (1-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .250
◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ
守屋 6回 89球 (2-6-1 / 0-0 / 0.64) 144
ドリ 2回 19球 (0-1-0 / 0-0 / 0.00) 153
石崎 0.2回 18球 (3-0-0 / 1-1 / 2.70) 151
頼りになる助っ人・ドリス
話を聞いたのは30日の試合後ですが、31日も連投したドリス投手に関するコメントをここでご紹介します。30日は8回1イニングで3番からをピシャリ。そして31日は0対0の7回に登板し、4番・江川選手、釜元選手、猪本選手をたった5球で三者凡退でした。
8回は先頭の李杜軒選手のピッチャー返しをグラブで叩き落とし、落ち着いて送球。細川選手は遊ゴロ。古澤選手は空振り三振ですが、これが暴投で三塁側へ転がり、鶴岡捕手を制して捕ったドリス選手が素早く一塁へ。惜しくもセーフで振り逃げとなったものの、最後は153キロの真っすぐで上林を二ゴロに。ここまでのドリス投手はウエスタン公式戦4試合(5イニング)に投げ、4安打2三振1四球で無失点です。
「ムーチョいいよ!」と久保投手コーチ(この言葉についてはのちほど)。「ムーチョいい、を継続してもらいたい。投げさせて投げさせて、ある程度連投して。1軍だったら勝ち試合のピッチャーは続けるからね。そこまでは厳しいかな、ファームでは」。この談話の翌31日もしっかり無安打無失点と結果を出しただけに、期待はますます膨らみます。
「あそこ、8回をキッチリ抑えてくれるのはありがたいですよ。7、8、9回でいい戦いができるから。彼は“投げたがり屋さん”だね」というのは掛布監督。なおドリス投手が2イニングを投げたのは、1軍のオープン戦(3月4日・ソフトバンク)と、ファームの交流試合(3月23日・香川)についで3度目。公式戦では初でした。
「ムーチョいいね!」はドリス発信
では本人のコメントです。手応えを感じているかとの問いに「ファームですけどバッターがいいなと思います。1軍でやっている人もいるから。その中で抑えられたのは収穫」と答えました。球種は真っすぐ、ツーシーム、スプリット、スライダーで、30日に上林選手から奪った空振り三振は138キロのスプリットだったそうです。
ところで、本人のみならず選手やコーチまでもが「ムーチョいいね!」「ムーチョいいよ!」と連発している点について。もちろん『ムーチョ』がスペイン語であることはすぐわかりました。歌のタイトルやお店の名前にもよく出てきますしね。英語の『much』と同じイメージで、“もっと”とか“とても”、“たくさんの”という意味で使われます。お菓子のカラムーチョも、そんな感じで命名されたと聞きました。
ドリス投手いわく「“いいね”という日本語を教えてもらって、そこにスペイン語をつければいいかなと。ドミニカと日本の言葉をくっつけてみた。みんなに親しんでもらえたらと思って」とのこと。同じ意味で、例えば挨拶する時に「コモ エスタ ウステ?(How are you)」と聞かれて「ムイ ビエン!(Very good)」と答える『ムイ』というスペイン語もありますが、日本語の「めっちゃ」とか「むちゃくちゃ」に近い『ムーチョ』にしたんでしょうかね。
これから観戦される皆さんも、ドリス投手が好投した際にはスタンドから「ムーチョいいね~」と、ぜひ声をかけてあげてください。写真にも笑顔で応じてくれて「ムーチャス グラシアス(Thank you very much)」でした!