市販されている抗原検査キットは、オミクロン株の診断にも使えるのか?
オミクロン株に対する抗原検査キット
「変異株対応」「オミクロン株に対応」のような抗原検査キットのネット販売広告を目にするようになりました。オミクロン株は過去類を見ない変異ウイルスであることから、ちゃんと診断できるのか不安に思う人も多いでしょう。
果たして、現在市販されている抗原検査キットはオミクロン株にも対応できるのでしょうか?あるいは、オミクロン株に特化した抗原検査キットが必要なのでしょうか?
結論から書くと、厚労省の承認している「体外診断用医薬品」の抗原検査キットであれば、おそらく問題ないとのことです。
オミクロン株は、皆さんご存知のようにウイルスの「スパイクタンパク」というトゲの部分にたくさん変異があります。市販されている抗原検査キットは、スパイクタンパクではなく、ウイルス粒中に含まれる分子数が多い「ヌクレオカプシドタンパク」を検出するものが多いです(図1)。
オミクロン株では、このヌクレオカプシドタンパクにもいくつか変異があるのですが、検査に影響を与える可能性が低い非免疫原性部位などの変異であり、検査結果に与える可能性は低いとされています(1)。国立感染症研究所も「抗原定性検査キットの診断精度については、オミクロン株による影響を受けない可能性が示唆されている」と報告しています(2)。
ただ、一部の海外の研究では感度がやや落ちるのではという報告もあり、今後の動向に注視が必要です(3)。
そのため、「変異株対応」「オミクロン株対応」のようないかにもスゴそうな宣伝文句を大きく盛り込んだパッケージの抗原キット製品は、消費者の購買欲を誘っている可能性が高いと思われます。
なお、新型コロナ抗原検査キットが陽性になっても、どの変異株による感染かを特定することはできないので注意してください。
また、新型コロナの診断に際して精度が高いPCR検査に関しても、検出感度の低下はないと考えられています。国内で現在使用されているPCR診断キットでもオミクロン株は検出可能であり、診断をすり抜けやすいというわけではなさそうです。
必ず「体外診断用医薬品」を選ぶ
現在、薬局で販売が可能な医療用抗原定性検査キットは表の通りです。たくさんありますが、厚労省に薬事承認を受けた製品には必ずパッケージに「体外診断用医薬品」と書いています。これらは薬局での対面販売が条件になっていますので、インターネットでは買えません。
この理由は上述したように、粗悪品や未承認の検査キットが横行するリスクがあるためです。インターネットで販売されている「研究用」とパッケージに表示されている抗原定性検査キットは、厚労省が承認したものではなく、検査精度は担保されていません。現在薬局で売られているものは「体外診断用医薬品」と明記されているため、念のためパッケージに「研究用」と書かれていないことを確認してから購入するようにしてください(図2)。
まとめ
新型コロナの抗原検査キットはPCR検査ほど優れたものではありませんが、ワクチン・検査パッケージの実証実験結果によっては、今後さらに普及する可能性があります。オミクロン株だからといって性能が極端に落ちることはなさそうです。
ただ、抗原検査キットが陰性でも、感染している可能性を否定されたわけではありません。3密回避、マスク着用、手指消毒、換気といった基本的な感染予防策を継続する必要があります。
今回紹介した以外の、抗原検査キットの使用上の注意点については、以下の記事もぜひ参考にしてください。
■薬局で販売が始まった新型コロナの抗原検査キット 使用上の注意点は(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20211014-00262927)
(参考)
(1) 新型コロナウイルス感染症医療抗原定性検査キットにおける オミクロン株の検出等に関する情報について(URL:https://www.kyotofuyaku.or.jp/wp-content/uploads/2021/12/1216nichiyaku.pdf)
(2) SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)について(第4報)(URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10833-cepr-b11529-4.html)
(3) Bekliz, et al. medRxiv preprint doi: 10.1101/2021.12.18.21268018(査読前論文)
(4) 新型コロナウイルスの抗原検査キットは「体外診断用医薬品」を選んでください! (消費者庁)(URL:https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms209_211013_01.pdf)
※2021年12月25日9時 オミクロン株においてやや感度が落ちるかもしれないという海外の査読前論文(3)について追記。