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薬局で販売が始まった新型コロナの抗原検査キット 使用上の注意点は

倉原優呼吸器内科医
photoACより使用

★2022年7月27日に記事を新しく更新しています(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220727-00307425

15製品の抗原検査キットが販売

9月27日に、ドラッグストアなどで新型コロナの抗原検査キットの販売が認められました。これにより、自宅で新型コロナの検査が可能になりました。これまで市販されていた「研究用」は未承認の製品であり、検査精度も不確かなものであることから、厚労省は使用について注意喚起を促しています。医薬品医療機器法違反容疑で逮捕される業者も出てきています。

現在も、未承認の「研究用」抗原検査キットと、承認の「体外診断用」抗原検査キットの両方が混在して販売されている薬局も多いため、購入する場合はパッケージに「研究用」と書かれていないかどうか、必ず確認するようにしてください(1)。分からなければ、ドラッグストアの店員や薬剤師に尋ねましょう。

現時点で厚労省が販売を承認している新型コロナの抗原検査キットは、表1の15製品です。

表1. 現在薬局で市販が承認されている新型コロナ抗原検査キット(筆者作成)
表1. 現在薬局で市販が承認されている新型コロナ抗原検査キット(筆者作成)

承認された抗原検査キットを購入する場合、薬剤師から検体の採取方法などの説明を受け、最後に内容を理解したかどうか確認する書類に署名が必要です(図1)。ドラッグストアで、シャンプーやお菓子と一緒にカゴに入れてレジに持っていく、というほど簡単に買えるわけではありません。購入者が医療機関などでない限り、承認キットをインターネットで入手することはできません。

図1. 同意書(参考資料2より引用)
図1. 同意書(参考資料2より引用)

体調不良時に買いに行くものではない

厚労省の承認を受けた新型コロナの抗原検査キットは、現時点では「健康なときに薬局であらかじめ購入しておき、症状が出た場合に自宅で検査をおこなう」という使い方を想定しています。体調不良時に近所の薬局へ抗原検査キットを買いに行くのは望ましくありません。このような場合、薬局ではなく医療機関の受診が推奨されます。

しかし、11月から本格的に始動する見込みの「ワクチン・検査パッケージ」では無症状の人に抗原検査キットを用いる可能性があります。広くワクチン接種がすすんだ前提での適用であって、現時点で無症状の人が抗原検査キットを利用する意義はまだ十分に議論されていません。現在、観光分野の実証実験がすすめられています。

抗原検査キットが陰性であるため行動制限が緩和されるというのは、集団ベースの戦略論としては正しいかもしれませんが、無症状の人にスクリーニング的に抗原検査をおこなって、「陰性だからあなたは大丈夫」という解釈を広めるのに慎重な意見も聞かれます。他方、国民のほとんどがワクチン接種を済ませた状況では、偽陰性のデメリットよりも陽性者を見つけるメリットのほうが大きいという見解もあります。

抗原検査キットの一般的使用法

鼻の奥、鼻咽頭というところまで綿棒を入れる「鼻咽頭ぬぐい液」の採取がもっとも感度がよい方法ですが、一般の人にはなかなか難しい手技であるため、「鼻腔ぬぐい液」を採取するのが一般的です。

鼻の穴から綿棒を2cmほど入れて、鼻の内側に沿わせて5回ほど回転させます(竹とんぼのようにクルクルするのではなく、鼻の中全体を綿棒でかき回す感じ)。綿球が湿るくらい、しばらく鼻腔に静置します。その後、搾り取るようにぬぐい液のついた綿棒を検体抽出液へ調整して、液体をキットに滴下すれば検査結果が表示されます(図2)。検査が終われば、一式をごみ袋に入れてしばり封をして廃棄してください。

図2. 一般的な抗原検査キット使用法(参考資料2を元に筆者作成)
図2. 一般的な抗原検査キット使用法(参考資料2を元に筆者作成)

検査結果が陰性であっても、新型コロナを疑う症状がある場合は、医療機関を受診することが望ましいです。また、陽性ラインが薄いなどの判定困難な場合は、陽性と同じように対応してください(表2)。

表2. 抗原検査キットの判定(参考資料2を元に筆者作成)
表2. 抗原検査キットの判定(参考資料2を元に筆者作成)

抗原検査キットはわずか15~30分で結果が判明するため簡便ですが、医療機関で患者さんに実施しているPCR検査などよりも感度が劣るというデメリットがあります。有症状の場合、抗原検査キットを使った場合、「抗原検査陰性=感染していない」を正しく判定できる感度は約40~90%と製品ごとにばらつきがありますが、「抗原検査陽性=感染している」を正しく判定できる特異度は100%に近いです。

しかし、無症状の場合、ウイルス量がとても少ない可能性があるので、感染していても陽性とならない「偽陰性」が起こりえます。

判定に迷う場合、症状があってもかかりつけ医がおらず相談先に迷った場合は、「受診・相談センター」(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html)に相談してください。

(参考)

(1) 新型コロナの抗原検査キットが正式に市販へ 現在市販されている検査キットは未承認(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210914-00257983

(2) 新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原検査キットの取扱いについて(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000836277.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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