北朝鮮の「不吉な」ミサイル発射 「重大事」の予兆か
防衛省の発表によると、北朝鮮は4月2日午前6時55分頃、日本海に向け弾道ミサイルを発射したようだ。ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したが、北朝鮮のミサイル発射は先月18日に超大型放射砲(多連装ロケット)を発射して以来、約2週間ぶりである。
ミサイルの機種については韓国合同参謀本部では「中距離級」と分析しているが、飛行距離については約600kmと推定したものの高度はまだ明らかにされていない。この時期、タイミングでの発射は想定外だった。
韓国が先月25~27日の間、日本海で駆逐艦「広開土大王」、護衛艦「浦項」など海軍の艦艇約10隻と潜水艦、航空機を投入して実射撃訓練を行ったことへの反発との見方もあるが、反発ならば数発発射されていたであろう。むしろ、また新たな実験を試みたのか、これから何かをやる前触れではないだろうか。
直近の3年間を調べてみると、2021年は4月の発射は1度もなかった。また、2022年は金日成(キム・イルソン)主席生誕日(4月15日)翌日に金正恩(キム・ジョンウン)総書記の立ち会いの下、「新型戦術誘導兵器」(CRBM)の初の試験発射(2発)を実施していた。
昨年は国防科学院が3月から始まっていた核無人機水中攻撃艇「ヘイル2」の試験発射(1発)を4月4日から7日にかけて行い、また13日には金正恩(キム・ジョンウン)総書記の立ち会いの下、平壌近郊から初の固体燃料を使ったICBM「火星18」を1発発射していた。
「北海道周辺に落下する恐れがある。避難してください」とJアラートが鳴った「火星18」は北海道を飛び越さず、左(北)へ方向を変えながら約1000km飛翔し、日本のEEZ外に落下した。
北朝鮮は「1段目は咸鏡南道金野郡ホド半島10km海上に、2段目は咸鏡北道魚欄郡北方335km海上に落下した」として、固体燃料多段エンジンの性能の検証と切り離しの実験を実施したことを明らかにした。そして、翌5月31日に北朝鮮は初の軍事偵察衛星の発射を試みた。
韓国の分析通り、中距離弾道ミサイルならば、極超音速弾頭を搭載した多段式の固体燃料エンジンによる「新型中距離弾道ミサイル」の発射の可能性が考えられる。
北朝鮮は1月14日にもこのミサイルを発射していたが、北朝鮮内陸部からロフテッド(高角度)方式で発射され、最高高度は約50kmで、少なくとも約1000km飛翔し、日本のEEZ外に落下していた。この時は、金総書記は立ち会っていなかった。
昨年11月11日と14日と2度、新型中距離ミサイル固体燃料エンジン実験を行っていた北朝鮮は先月19日には西海衛星発射場で新型の中長距離極超音速ミサイルに搭載する多段式の固体燃料エンジンの地上燃焼実験を午前と午後2度、実施していた。
エンジン燃焼実験に立ち会った金総書記は「この兵器システムの軍事戦略的価値は我が国家の安全環境と人民軍の作戦上の要求から出発して大陸間弾道ミサイル(ICBM)に劣らず重要に評価される、それについては敵がよりよく知っている」と述べた上で「我が党の第8回大会が示した5カ年計画期間の戦略兵器部門の開発課題が立派に完結した」と、ご満悦だった。
現在、北朝鮮が保有している中距離弾道ミサイルは米国領、グアムや沖縄の嘉手納に向けられた「火星12号」(全長約17m、直径約1.7m)のみだが、液体燃料が使用される「火星12号」は1段式ミサイルである。
「火星12号」は2017年5月14日に初めて北西部の平安北道・亀城からロフテッド軌道で発射された際に最大高度2111km、飛翔距離787km、30分飛行し、日本海に着弾していた。正常角度ならば飛行距離は4500~5000kmと推定され、グアム(平壌から3500km距離)を完全に射程圏内に収めていた。
従って、それが2段式となると、さらに飛距離が伸び、平壌から約6000kmの距離にあるアラスカに届くことになる。