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6月になぜ? 0度未満の冬日

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
晩春から初夏にかけての霜を晩霜(おそ霜)といい、農作物に深刻な被害がある(写真:アフロ)

6月なのに「冬日」

今朝(3日)は北海道、岩手県、長野県、岐阜県の観測地点14か所で、最低気温が0度未満の冬日となりました。

全国で最も冷え込んだのは長野の菅平(すがだいら)で、氷点下1.9度です。菅平(アメダス)は標高が1253メートルと高地にありますが、それでも6月の冬日は過去37年間でわずか2回(2000年、1995年)です。今朝の冷え込みが特別であったことがわかります。

余談ですが、沖縄県の波照間空港では最低気温が27.5度と熱帯夜でした。日本列島は南北に長いと分かってはいるけれど、冬日と熱帯夜が同時に現れるとは、天気は不思議です。

偏西風の蛇行が引き金に

上空約5千メートルの天気図(週間予報支援図,0212UTC JUN 2016)
上空約5千メートルの天気図(週間予報支援図,0212UTC JUN 2016)

季節外れの寒さや暑さはどの季節にもあるけれど、今朝の強い冷え込みは元をたどれば、偏西風の蛇行に行き当たります。

この図は北極から見た北半球天気図で、右下が日本、左上が欧州です。上空約5000メートルの大気の状態を示し、気温の低い所を青丸で、気温の高い所を赤丸で印を付けました。

すると、日本から欧州にかけて、青丸と赤丸が交互に並んでいることがわかります。このように寒気と暖気が交互に並んでいるとき、偏西風は南北に蛇行して流れています。

偏西風の蛇行がいつもよりも大きくなると、冷たい空気と暖かい空気の入れ替えが大規模に起こり、異常低温や異常高温と呼ばれる季節外れの現象が起こります。

始まりは欧州から

NHK国際放送局気象アンカーの森さやかさんが伝えるように、先週末(5月28日)はフランス、ドイツ、ポーランドで激しい雷雨がありました。欧州で天候が荒れたとのニュースを耳にすると、しばらくすると日本でも天気に変化が現れるのでは?と思うことがあります。

ちょっと専門的になりますが、地球が回転することで発生する波をロスビー波といい、エネルギーの伝播を通して遠く離れた場所まで影響を与えます。

欧州から日本へ、広大なユーラシア大陸を伝わるロスビー波は偏西風(アジアジェット)の蛇行を引き起こし、日本の天気を大きく揺さぶるのです。

【参考資料】

前田修平,佐藤均,2007:定常ロスビー波とその影響,平成19年度季節予報研修テキスト,61-71.

森さやか:ヨーロッパで落雷被害多発 雷から身を守るには(Yahoo!ニュース個人,2016年5月29日)

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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