「自己肯定感」と「自己有用感」の違い、それぞれの高め方
「自己肯定感」とは何か?
「自己肯定感」とは読んで字のごとく、自分を肯定する感情。「自尊感情」とも呼びます。反意語は「自己否定感」。いろいろな自分を認め、ポジティブに捉えられる人を「自己肯定感が高い」と表現します。
いっぽうで、自分のすべてが嫌いで、常にネガティブな感情に支配されている人を「自己否定感が高い」「自己否定ばかりしている」と言います。
「自己肯定感」は「自信」とよく似ている言葉ですが、「自信」は局所的に使用する言葉であると私は捉えています。
「私は自信があります」
と、自分そのもの、自分全体にも使えますが、テニスをしたこともないのに、
「私はテニスに自信があります」
とは言えません。野球に詳しくないのに、
「今回の日本シリーズ、ソフトバンクとDeNAどっちが勝つか当てる自信があります」
とも言えません。
つまり「自己肯定感」というのは、自分そのものに対する感情ですが、「自信」という言葉は部分的に使える感情として区別できます。
「自己有用感」とは何か?
「自己有用感」も読んで字のごとく、自分が有用だと思える感情です。自分の存在が周りの人に役立っている、貢献していると認識できているときに、この感覚を覚えます。
「自己有用感」が高ければ、周囲への貢献意欲も高まります。感謝の気持ちも芽生えます。
「自己肯定感」と「自己有用感」の組合せ4パターン
わかりやすくするため、「自己肯定感」と「自己有用感」を4つのパターンで考えてみます。
私は企業の営業現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。営業パーソンの特性を良く知っているので、この2つの表現を使いながら4パターンを記してみます。
1)自己肯定感【×】& 自己有用感【×】
「自分は営業のセンスがなく目標達成率も低い。上司や同僚から役立たずと思われていることだろう。この会社に居続けたら迷惑をかけるだけだ」
「自己肯定感」が低ければ、営業成績が上がるはずありません。周囲に目を向ける余裕がないためか「自己有用感」も低い状態。
2)自己肯定感【×】& 自己有用感【○】
「自分は営業のセンスがないのに、それなりに目標が達成している。理由は上司や同僚、そしてお客様に恵まれているからだ。本当に感謝している」
「自己肯定感」は低いのですが、「自己有用感」が高いため自然と感謝の気持ちが芽生えます。実は力があるのに自分に対して肯定する感情がなく、単に恵まれているだけと認識しています。したがって、なぜ結果が出ているのかをうまく説明することができません。
3)自己肯定感【○】& 自己有用感【×】
「自分は営業のセンスはあるのに目標が達成できない。理由は会社が設定した目標が高すぎるからだ。そもそも売れない商品を作る会社が悪いし、お客様にも恵まれていない」
「できない営業」の典型例です。いわゆる「他責」にするクセがある人がこの部類に入ります。
4)自己肯定感【○】& 自己有用感【○】
「上司や先輩のおかげで自分は結果を出せたし、営業のセンスを磨くことができた。だから同僚や後輩の力になれると思う。もっと会社のために頑張りたい」
自分の力を肯定しているからこそ、周囲にも役立てられると信じられます。理想的な営業パーソンと言えるでしょう。
「自己肯定感」と「自己有用感」それぞれの高め方
私自身、「自己肯定感」「自己有用感」どちらも低かった時代がありました。自分の存在意義を感じられず、その時期は大変苦しかった思い出しかありません。
私が変わることができたのは、「自己有用感」を覚えられる環境を手にしてからです。
「自己肯定感」を高めてから「自己有用感」を高めるのは、非常に難しいと言えます。自分自身をまず認めてくれる場所、環境を手に入れることで、自分の思考パターンを変えていく。その手順が最も再現性が高いと言えます。
何かの目標を持ち、その目標を達成させると「達成感」を覚えます。「自己肯定感」は達成感を覚えることで、高まっていくことでしょう。
しかし「結果」は簡単に出ません。ですが結果を出そうと努力することは誰でもできます。だからその努力の過程に着目し、認めてくれる環境を見つけることです。そんな環境に身を置くことで、少しずつ「自己有用感」は高まり、「自己肯定感」を覚えられるようになっていきます。
学生と異なり社会人は、「社会」に身を置いています。そのため周囲からの視線が非常に大きなインパクトとなることを覚えておいたほうがいいでしょう。