ド近眼の人の眼鏡フレーム選択を容易にしてくれる特許について
「"視力が悪くてよく見えない"を解消! メガネしたままメガネを試着できる装置はコロナ禍の需要もありそう」という記事を読みました。
とのことです。
自分もかなりの近眼なのでこの悩みはありました。大技として試着した顔をスマホで自撮りして、自分の眼鏡をかけてから確認するという方法もありますが、面倒ですし、記事中でも触れられているように、度が強いと度付きレンズと素通しフレームでは目の大きさが大部変わるので、度付き状態での似合い具合がよくわからないという問題もありました。まさに「必要は発明の母」を表していると言えるでしょう。
「特許も1月に取得した」ということなので、調べてみました。
特許番号は6813839号、発明の名称は、「眼鏡試着支援装置およびプログラム」、出願日は2019年9月9日、登録日は2020年12月22日、出願人は株式会社カザックと株式会社ネフロックの共同出願です。
クレーム1の内容は以下のとおりです。
眼鏡をかけたユーザーの顔画像から眼鏡を消し、試着対象の眼鏡フレームに付された無線タグ等に基づいて画像を取得し、眼鏡を消した顔画像に重ね合わせて表示するという機能だけの特許であり、かなり広範囲で権利化できています。具体的な眼鏡画像消去方法によっては限定されていませんし、明細書に開示もされていません(上記記事を読むとかなり開発に苦労された部分のようですが、そこはノウハウとして秘匿化すべき部分であって明細書でわざわざ開示する必要はありません)。
とは言え、「バーチャル試着」のようなアイデアはかなり前からありましたので、新規性・進歩性が気になるところです。審査経過を調べると、やはり米国特許公報が引用され一度進歩性を否定されていました。これに対しては、試着対象の眼鏡の情報を(無線タグ等から)読み取るという引用文献にない要素を追加することで進歩性の主張に成功しています。タイトル画像で言うとスキャナを内蔵したテーブル(15)に試着フレーム(G3)を置くだけで自動的に試着フレームの画像が読み込まれるという機能です。
実際のシステムを特許で保護できています。また、他者がこのアイデアを摸倣しようとすると、機械学習のアルゴリズム等明細書に記載されていない部分は独自にやらざるを得ませんし、仮にそれに成功してもこの特許の回避には試着フレームの品番を手入力させる等UXを犠牲にせざるを得ない可能性が高くなります。特許の権利化としては非常に上手くやっていると思いました。