クリントン元大統領、「トランプ氏は『独裁者クラブ』のメンバー」と示唆?
「独裁者クラブ」というのをご存知だろうか? 命名したのはビル・クリントン元大統領だ。11月8日、“コナン”というアメリカで人気のトークショーに主演したクリントン元大統領がこんな発言をして、ちょっとした話題を呼んだ。
「世界の“独裁者クラブ”にはたくさんの独裁者がいるんだよ。独裁者たちは二つのことを欲しているんだ。彼らは核兵器を欲している。核があれば、どんなに人々に憎まれようが、絶対に撃退されないと思っているからね。また、独裁者たちは、事実と作り話、本当と嘘の間にある線も消し去りたいんだよ。彼らはわかっているからね。人々は本当のことがわからなければ、本当のことを知ることができないと思ったら、民主主義の不在を受け入れるということを」
ショーのホストであるコナン氏はそんな発言に、「外国のこと、それとも、ここ(アメリカ)のことを言っているの?」と突っ込みを入れたが、クリントン元大統領は間を置いてしまった。コナン氏は笑いながら「沈黙が多くを物語りましたね」と上手くフォローし、会場からは拍手が沸き起こった。彼の脳裏には、フェイクニュースを流されて大統領になれなかった妻の顔が浮かんでいたのかもしれない。
“アメリカ”よりプーチン大統領を信じるトランプ氏?
実際、クリントン元大統領が指摘したように、事実と作り話、そして、本当と嘘の間にある線は消滅しつつある。それは、アジア歴訪中、エアフォースワンの中でトランプ氏が記者たちに放った発言を見ても明らかだ。
「プーチン大統領は(アメリカの大統領選に)介入しなかったと言ったよ。彼がそう言うのなら、本当なのだと信じるよ。ブレナン(前CIA長官)やクラッパー(前国家情報長官)、コーミー(前FBI長官)を見てよ。コーミーは嘘つきだと証明されているし、リークしたことも証明されている。みんな民主党のでっち上げだ。プーチン大統領はとても強く、激しく、関係ないと言っているんだ」
トランプ氏は、CIAなどアメリカの情報機関が、ロシアが介入したと結論づけていたにも関わらず、“嘘だ”と言ってのけたのだ。現CIA長官マイク・ポンペオ氏はこれを受けて「介入したという判断を支持する」とあらためて主張。上院議員のジョン・マケイン氏も「アメリカの情報機関より、元KGB大佐のプーチン大統領の言葉を信じるとは、全然“アメリカ第一”ではない」とツイッターでトランプ氏を非難した。
数々の批判の矢を浴びたトランプ氏、翌日には、「アメリカの情報機関を信頼している」と前日の発言をいともたやすく翻してしまった。人々はすでに慣れっこになってはいるだろうが、何が本当で、何が嘘なのか、煙に巻かれてしまった気分だろう。
ブッシュ元大統領が最後の共和党の大統領か
元大統領たちは、こんなトランプ氏の大統領としての資質にはとっくに疑問を抱いている。名指しはしなかったものの、10月には、ジョージ・W・ブッシュ元大統領が講演の際、「政治は陰謀論と全くの作り話に弱くなっている」と指摘した。ブッシュ元大統領父子にインタビューして書かれた著書『ザ・ラスト・リパブリカンズ』がまもなくアメリカで発売されるが、そのタイトルからもわかるように、彼は自分が「最後の共和党の大統領」になるのではないかと危惧したという。従来の共和党の価値観や考え方を持っていないトランプ氏は、共和党の大統領とは言えないと感じたからだ。
オバマ元大統領も知事選応援演説の際、「今の政治を見ると、50年前に遡っている人がいる。今は20世紀だ。19世紀じゃない」と言って、暗に、社会に分裂を生み出しているトランプ氏の政策を批判した。
アメリカの元大統領たちは、今、民主主義が危機に直面していることを痛感している。クリントン元大統領流に言うなら、「独裁者クラブ」のメンバーをこれ以上増やしてはならないと感じているに違いない。