新型コロナ後遺症 脱毛の頻度とその経過について
新型コロナに感染し回復した後も後遺症に悩まされている方がいらっしゃいます。後遺症として脱毛の症状がみられることがありますが、その頻度や回復する経過についてご紹介します。
新型コロナの後遺症とは?
新型コロナに感染した人のうちほとんどの人は回復後、通常の健康状態に戻る一方で、回復した後も数週〜数ヶ月間様々な症状が続く方がいます。
これらは海外では「LONG COVID/Ongoing COVID」「Post COVID」など様々な呼称がありますが、日本国内では「後遺症」と呼ばれることが多いため、ここでも新型コロナ後遺症という表現を使います。
この新型コロナ後遺症は、単一の病態ではなく、実際には4つの病態が複合的に絡み合った病態ではないか、ということが分かってきました。
4つの病態とは、
(1) 肺、心臓への恒久的障害
(2) 集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)
(3) ウイルス後疲労症候群(post-viral fatigue syndrome)
(4) 持続する新型コロナの症状
を指し、これらがオーバーラップしていると考えられています。
新型コロナ後遺症でみられる症状は?
新型コロナ後遺症として頻度が高い症状には、
- 倦怠感:15~87%
- 息苦しさ:10~71%
- 胸の痛みや違和感:12~44%
- 咳:17~26%
などがあります。
これ以外にも、嗅覚障害、関節痛、頭痛、目や口の乾燥、鼻炎、味覚障害、食欲低下、めまい、筋肉痛、不眠症、脱毛、発汗、下痢、精神機能障害・認知機能障害などの症状が後遺症として報告されてます。
これまでの国内外の報告では、新型コロナに感染した人の3人に1人が少なくとも1つ以上の症状を後遺症として経験しています。
世界中で1億5千万人、日本国内で50万人が感染しており、そのうち一定の割合で後遺症がみられることを考えると社会的なインパクトは非常に大きいと言えます。
なお、これらの報告は入院例、重症例を対象にしたものが多く、軽症だった方を含めた後遺症の頻度はもっと低いものと思われます。
しかし、
・新型コロナから回復した(大部分が軽症だった)患者2113人を対象にしたオンライン調査では、79日経過時点で症状が1つもないと回答したのは1%未満であった。
という研究も報告されており、無症状または軽症であっても後遺症が問題になることがあります。
後遺症としてみられる脱毛の頻度と経過
脱毛は特定の感染症に罹患した後にみられることがあります。
例えば、
などでも回復期に脱毛がみられることが報告されています。
脱毛が起こる原因ははっきりとは分かっていませんが、感染症に罹ったときの精神的・肉体的なストレスによるものと考えられています。
新型コロナでも脱毛がみられることがあり、国立国際医療研究センターからの報告では新型コロナ患者の24%が回復期に脱毛を訴え、新型コロナ発症2ヶ月後くらいから始まり、およそ100日後くらいまで続くことが多いとされています。
海外の報告でも、重症度に関係なく、新型コロナ発症から3〜7ヶ月後くらいに脱毛が現れることが多いようです。
新型コロナ回復期の脱毛がどのように回復していくのか、国立国際医療研究センターからInternational Journal of Infectious Diseases(IJID)誌に報告された事例をご紹介します。
40代の男性で、2020年3月に新型コロナと診断され入院しました。入院時は酸素投与も必要としない軽症に分類される方でした。
4月に退院し、5月に脱毛の症状に気づきました。
6月に外来を再診した際の写真が左側になります。
8月頃から抜け毛が少なくなりはじめ、2021年3月には元通りフサフサになっています。
一般的に感染症による脱毛症は自然に改善すると言われていますが、コロナ後遺症としての脱毛については、どのような経過で回復していくのか情報が少ないため、重要な事例といえます(自画自賛)。
コロナ後遺症で脱毛に悩まされている方にとっても、安心材料となるのではないでしょうか。
新型コロナ後遺症を予防するためには?
新型コロナ後遺症を確実に回避するには、新型コロナに感染しないようにするしかありません。
特に緊急事態宣言中である現在は、
・できる限り外出を控える
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策をより一層遵守するようにしましょう。
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