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北極の寒気南下は3ヶ所(アメリカ東部とヨーロッパと極東)

饒村曜気象予報士
地球儀(写真:アフロ)

ラニーニャ現象

 今年はラニーニャ現象で、太平洋西部の赤道域で海面水温が高くなり、対流活動が活発になり、その北側で高気圧が発達し、上空の偏西風が蛇行して日本付近は寒気が南下しやすくなっています。

 北日本や北陸の上空約5000メートルには、氷点下36度以下の非常に強い寒気が流れ込んでおり、さらに、氷点下42度という、今冬一番というより、近年まれな強い寒気が南下する予想です(図1)。

図1 上空約5000メートルの寒気の予想(1月24日21時の予想)
図1 上空約5000メートルの寒気の予想(1月24日21時の予想)

 このため、北日本から西日本の日本海側を中心に、27日頃にかけて大雪となる可能性があり、十分な警戒が必要です。

 気象庁が23日夕方に発表した情報では、24日18時までの24時間に予想される降雪量は、北陸地方で100センチ、東北地方、東海地方で80センチなどと予想しています。つまり、1日で1メートルも積雪が増える場所があるという、とんでもない量の雪予想です。

3ヶ所で南下する蛇行

 蛇行により、高緯度の寒気が中緯度に、中緯度の暖気が高緯度にはこばれます。蛇行の場所が移動していると、高緯度の寒気が中緯度にまんべんなく南下し、中緯度の暖気がまんべんなく高緯度にはこばれます。

 しかし、蛇行の場所がほぼ同じであると、蛇行が中緯度にきているところでは、北から寒気の流入が続いて寒くなり、蛇行が高緯度にきているところでは、南から暖気の流入が続いて温かくなります。

 蛇行が長続きするときは、寒気は入り続けて非常に寒くなる地域と、暖気が入り続けて非常に暖かくなる地域が存在します。

 北半球で偏西風が蛇行するときは、アメリカ東部とヨーロッパ、そして極東の3ヶ所で波をうつ蛇行であると長続きします。これは、ヒマラヤ山脈とロッキー山脈という大規模な山脈の影響です。

 大規模な山脈の西側では偏西風が北上し、東側では偏西風が南下しやすい性質があるのです。加えて、ヒマラヤ山脈とロッキー山脈は、経度にして約120度(地球一周の3分の1)離れています。

 年末年始は、アメリカ東部で非常に強い寒気が南下し、カナダとアメリカの国境にあるナイアガラの滝が完全に凍結するなどのニュースがながれました。

 年が明けてから、スイス・アルプスで大雪などヨーロッパでも、強い寒気が南下して被害が発生したニュースがながれています。そして、日本付近にも強い寒気が南下しています。つまり、北半球の3ヶ所で寒気が大きく南下しています。

三八豪雪

 日本付近に記録的な寒気が南下した昭和38年(1963年)1月は、北陸地方を中心に大雪となり、気象庁は「昭和38年1月豪雪」と命名しています。一般的には「三八豪雪」と呼ばれる豪雪です。

 このときの、北半球の上空約5000メートルの偏西風は、アメリカ東部、ヨーロッパ東部および日本付近(極東)の3ヶ所で大きく南下するという蛇行をしています(図2)。

図2 昭和38年(1963年)1月の北半球の上空約5000メートルの偏西風
図2 昭和38年(1963年)1月の北半球の上空約5000メートルの偏西風

 日本付近に記録的な寒気が南下しただけではなく、アメリカ東部やヨーロッパ東部でも記録的な寒気が南下していたのです。

 

 日本付近の寒気の南下は、しばらく続き、今週は日本中が凍える一週間になりそうです。気象情報の入手に努めてください。

図1の出典:気象庁ホームページ

図2の出典:「気象庁(1968)、北陸豪雪調査報告、気象庁技術報告」をもとに著者作成 

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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