セティエンの就任でバルサに訪れる変化。メッシを生かすための解決策とは。
バルセロナが、揺れている。およそ17年ぶりに、シーズン途中の指揮官解任を決断。エルネスト・バルベルデ前監督に代わり、キケ・セティエン新監督が就任した。
ジョゼップ・マリア・バルトメウ会長からすれば、セティエン監督はファーストオプションではなかっただろう。アル・サッドのシャビ・エルナンデス監督、オランダ代表のロナルド・クーマン監督から良い返事をもらえず、フリーの身であったセティエン監督の招聘を決めた格好だ。
■セティエンのスタイル
セティエン監督は、どういうスタイルで戦うのか。かつて、「クライフのバルサでプレーするためだったら、小指を差し出していた」と語っていたセティエン監督は、自他ともに認めるヨハン・クライフの信奉者だ。
セティエン監督が率いるチームで特徴的なのが、ディフェンスラインからのビルドアップである。彼が好むのは、アンカーの選手を最終ラインに下げ、センターバックの2選手と一緒にボールを前進させる3枚ビルドアップだ。
加えて、インサイドハーフの一人が最終ラインに下がるパターンを備えている。インサイドハーフがサイドバックとセンターバックの間に入り、球出しを助ける。ベティスにおいては、ファビアン・ルイス(現ナポリ)がそのタスクを担っていた。
またベティスでは、2018年1月の移籍市場におけるマルク・バルトラの加入で、3バックへと舵を切った。
2018-19シーズンのリーガエスパニョーラのパス本数ランキングを見ると、1位アイッサ・マンディ(35試合出場/パス本数2577本)、2位イバン・ラキティッチ(34試合/2535本)、3位セルヒオ・ブスケッツ(35試合/2393本)、4位ジェラール・ピケ(35試合/2390本)、5位ジョルディ・アルバ(36試合/2360本)、6位マルク・バルトラ(33試合/2266本)とバルセロナとベティスの選手が上位を独占した。
■システムチェンジの可能性
バルベルデ前監督就任一年目の2017-18 シーズン、バルセロナはリーガエスパニョーラで優勝した。最終節レバンテ戦で敗れるまで、無敗だった。そのシーズン、38試合29失点を記録。堅固な守備が、タイトル獲得につながった。
ただ、リオネル・メッシとルイス・スアレスの守備の負担を軽減するあまり、彼らが「守備をしない」というのが徐々に常態化した。やむを得ず、バルベルデ前監督は「4-4」のブロックを組んだ。DFライン4枚とMFライン4枚でディフェンスをする手法だ。だが守備は改善されなかった。2018-19シーズン、リーガ38試合で36失点を記録。連覇を果たしたが、守備への不安が残った。
守備を向上するために、システムチェンジが解決策になるかもしれない。
それはボールを保持して相手に攻撃の機会を与えないという戦い方である。そして、3バックはバルセロニスタのノスタルジーを誘う。クライフが指揮した「ドリームチーム」は、3-4-3でスペインと欧州を席巻したのだ。
■解任劇
バルセロナの最後のシーズン途中の監督解任は、2003年1月まで遡る。ジョアン・ガスパール当時会長がルイ・ファン・ハールを解任。ラドミル・アンティッチが後任に就いた。
当時のバルセロナが必要としていたのは、ヌニェスモ(ヌニェス主義)からの脱却だった。1978年から2000年まで会長を務めたホセ・ルイス・ヌニェスという絶対的なリーダーを欠き、迷走していた。そこから3年間、無冠が続いた。
2003年6月に、ジョアン・ラポルタが会長選で勝利した。それが変化のきっかけだった。バルセロナはロナウジーニョを獲得して、フランク・ライカールト監督の下、再出発する。2004-05シーズンからリーガを連覇し、2005-06シーズンにはチャンピオンズリーグ制覇を達成した。
ただ、ファン・ハールとバルベルデでは、まったく状況が異なる。2017-18シーズン、2018-19シーズン、バルベルデはバルセロナをリーガ優勝に導いている。そして今季はリーガで首位に立ち、「死の組」と称されたグループFに振り分けられたチャンピオンズリーグでベスト16に進出して、コパ・デル・レイを含め3冠の可能性を残している。
長く無冠が続いた時期と現在を比較することはできない。バルベルデに対する扱いは、明らかに不当だった。一方、セティエンとしては、アンティッチより状況は良い。「クラブ以上の存在」を謳うバルセロナで、新たな章が始まる。