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なぜレアルはリーガで優勝できたのか?ベリンガム・システムの構築と強者が示した「抵抗力」

森田泰史スポーツライター
勝利を喜ぶモドリッチとベリンガム(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

新たなチャンピオンが、誕生した。

リーガエスパニョーラ第34節、レアル・マドリーはカディスに勝利した。なお、同節の試合でバルセロナがジローナに敗戦。マドリーのリーガ優勝が決まっている。

マドリーにとって、クラブ史上36度目のリーガ制覇になった。

■ベリンガム・システムの構築

マドリーは今夏、カリム・ベンゼマが退団。エースが抜け、どのように攻撃を構築するか。それがカルロ・アンチェロッティ監督の課題の一つだった。

ボルシア・ドルトムントから移籍金1億500万ユーロ(約170億円)で獲得したジュード・ベリンガムを、中心に据えるとアンチェロッティ監督は決断した。【4−3−3】から【4−4−2】に布陣を変更して、トップ下にベリンガムを配置。「ベリンガム・システム」を作り上げた。

ベリンガムは今季、公式戦38試合で22得点10アシストをマークしている。これはドルトムント時代(14得点/22−23シーズン)の記録を塗り替え、キャリアハイの数字となっている。

長期離脱を強いられたアラバ
長期離脱を強いられたアラバ写真:ロイター/アフロ

新たな戦術とシステムを構築したアンチェロッティ監督だが、トラブルが重なる。守備陣に負傷者が続出したのだ。

シーズン序盤、GKティボ・クルトワ、エデル・ミリトンがひざを負傷して長期離脱。昨年12月には、ダビド・アラバが同様に膝を負傷し、チームから離れることになった。

■負傷者続出とダブルボランチ採用

マドリーは苦境に立たされた。アンチェロッティ監督は再びチームに手を加える。トニ・クロースを重宝するようになり、オウレリアン・チュアメニあるいはエドゥアルド・カマヴィンガと組ませてダブルボランチを形成した。

開幕当初、マドリーは若い選手を積極的に起用していた。チュアメニ、カマヴィンガ、フェデリコ・バルベルデ、ベリンガムが中盤のレギュラーだった。その理由のひとつは「ベリンガム・システム」でベリンガムに自由を与えるため。もうひとつはクラブが推進する世代交代を進めるためだった。

だが状況が変わった。クロースをスタメンに組み込んだダブルボランチシステムはチームに安定感をもたらした。クルトワの代役に選ばれたGKアンドリュー・ルニンの成長もあり、マドリーは勝ち点を取りこぼさないチームになった。

シュートをブロックするカルバハル
シュートをブロックするカルバハル写真:ロイター/アフロ

また、現在のマドリーは、「抵抗力」のあるチームだ。

今季のチャンピオンズリーグのデータに目を向ける。決勝トーナメント進出以降、マドリーが勝利したのはラウンド1のセカンドレグのライプツィヒ戦(1−0)のみだ。

ライプツィヒとのファーストレグ(1−1)、シティ戦(3−3/1−1 ※PK戦で勝利)、バイエルン・ミュンヘンとのファーストレグ(2−2)とマドリーは4試合において90分で勝利を収めてはいない。

一方、マドリーが480分間(5試合+延長分)で、リードを奪われた時間は44分だ。全体の9%である。

“激戦”になったシティとのファーストレグ、マドリーはベルナルド・シウバに先制点を許したが、その10分後にカマヴィンガのミドルシュートで相手のOGを誘発して同点に追い付いている。後半、ジョシュコ・グヴァルディオルにゴラッソを沈められたものの、その8分後にバルベルデのボレーシュートでスコアをタイにした。

バイエルンとのファーストレグでは、ハリー・ケインのPKで後半にバイエルンが勝ち越したが、その26分後にヴィニシウス・ジュニオールがPKで同点弾を挙げている。

■抵抗力と強者のロジック

対して、マドリーは480分のうち、190分間、リードを奪った状態でプレーしている。これは全体の40%だ。

リードしていれば、守りを固める。ビハインドを負えば、点を取りに行く。当たり前のことを当たり前にやるチームは、強い。そこが、今季のアンチェロッティ・マドリーのストロングポイントだ。

貴重な場面でゴールを決めるロドリゴ
貴重な場面でゴールを決めるロドリゴ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「勝てなければ、負けないようにする。僕たちは常に、そんな風に考えている」

「チャンピオンズリーグの試合では、なおさらだけどね。いつもそうで、僕たちは慣れている。死んだも同然だと周りが思っている時こそ、チャンスが生まれる。うまく行っていないような時間帯に、引き分けにできる。いつも同じようなことが起きている」

これはロドリゴ・ゴエスの言葉だ。

ボールを追うバルベルデとベリンガム
ボールを追うバルベルデとベリンガム写真:ロイター/アフロ

ベリンガム・システム、負傷者続出トラブルの克服、抵抗力。今季のマドリーを紐解く鍵は、いくつかある。

だが本質は別にある。決して死に体にならないーー、それがマドリーをマドリーたらしめているのかも知れない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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