逆足ウィンガーの跋扈。「ロベリー」のコンビと戦術的多様性のバランス。
2007年、フランク・リベリーがバイエルン・ミュンヘンに移籍した。すると、その2年後、アリエン・ロッベンがバイエルンに加入する。それはひとつの時代の始まりだった。
そして、「ロベリー」の時代は、およそ10年、続くことになる。
作家のキャサリン・マンスフィールドはかつて述べた。「読書の喜びは、他者との共有を経て、2倍になる」その言葉をなぞれば、ロッベンとリベリーは、まさに2倍の喜びを享受していた。
■バイエルンと「ロベリー」の時代
異なる性格を持つ2選手だった。2歳の頃、交通事故で顔に大きな傷を負った過去があるリベリーは、幼少期にいじめを受けていた。プロ入り前には父親の仕事を手伝っていた経験もある。エリート・クラスの選手になってからは陽気な性格で知られるが、どこか昏い陰が差し込む表情が印象的な選手だった。
一方のロッベンは、フットボールを、ドリブルを楽しんでいた。ピッチ上で、時に笑顔を交えて、敵味方とコミュニケーションを行なっていた。「ボールと戯れる」という表現がぴったりな、それでいて誰よりも速い、そんな選手だった。
ロッベンとリベリーは、バイエルン在籍時代、10シーズンで264得点284アシストをマークした。そして、2019年夏、まるで示し合わせたかのように、2人は同時にバイエルンを去っている。
彼らは喜びの「倍返し」を行なっていた。だが無論それだけではない。
戦術的な意味合いにおいても彼らの出現は大きかった。
基本に立ち戻るが、ウィングは、3トップシステムで重要な役割を担う。ただ、前時代においては、ウィングは「縦突破」と「クロス」をメインタスクとしていた。そこで重宝されるのは、端的に足の速い順足アタッカーだ。スタンリー・マシューズ(イングランド代表)、ガリンシャ(ブラジル代表)、彼らは持ち前のスピードで縦に出て、中央にセンタリングを入れてゴールを演出していた。
■ロッベンと逆足ウィンガー
そんななか、ロッベンは、グローニンゲン時代から、左利きの右ウィングとして名を馳せていた。
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