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暖湿気流入で局地的に激しい雨 夜は昼間より「記録的短時間大雨情報」が発表される

饒村曜気象予報士
北日本から関東にのびる停滞前線(8月27日9時の予想天気図)

停滞前線

 東北から関東に前線が停滞しています。

 この前線に向かって南から暖かくて湿った空気が流入し、東日本や北日本を中心に大気の状態が不安定になっています(タイトル画像参照)。

 この状況はしばらく続く見込みですが、特に関東甲信地方は、8月27日(土)夕方から28日(日)の午前中にかけて雷を伴った激しい雨が降り、大雨となる所がある見込みです(図1)。

図1 発雷確率(8月27日夕方)
図1 発雷確率(8月27日夕方)

 気象庁では、1時間に50mm以上、80mm未満の雨を「非常に激しい雨」として、「滝のように降る」という「人の受けるイメージ」を例示しています。

 個人的には、気象庁が「屋外の様子」で例示している「水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる」というほうがわかりやすいと思います。昔から伝わっている記録的な豪雨時の話には、「白い雨が降ると山が抜ける」「洪水の川に白髪の老人が現れる」など、「白」の話があります。

 1時間に80mm以上の雨を「猛烈な雨」といい、数年に一度の記録的な雨が降ると、「記録的短時間大雨情報」が発表となります。

記録的短時間大雨情報

 気象庁では、大雨警報発表中に、数年に一度程度しか発生しないような激しい短時間の大雨をアメダス等の雨量計で観測した場合や、気象レーダーと地上の雨量計を組み合わせた分析(解析雨量)した結果によって記録的短時間大雨情報を発表します。

 記録的短時間大雨情報の発表基準は、地域によって異なりますが、現在の降雨がその地域にとって土砂災害や浸水害、中小河川の洪水災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることを知らせ、より一層の警戒を呼びかけるために発表するものです。

 平成25年(2013年)から令和3年(2021年)までの9年間の記録的短時間大雨情報の平均発表回数は80.1回で、月別には7月~9月が多くなっています(図2)。

図2 記録的短時間大雨情報の月別発表回数(令和4年(2022年)8月は26日までの回数)
図2 記録的短時間大雨情報の月別発表回数(令和4年(2022年)8月は26日までの回数)

 今年、令和4年(2022年)の記録的短時間大雨情報の発表回数は、7月が56回、8月が26日までで70回と、例年の2~3倍となっています。

 つまり、これまで経験したことがない雨が降りやすい年といえるでしょう。

夜は昼より強い雨が降る?

 集中豪雨は夜間に多いとよく言われ、実際のそのような統計が多数あります。

 防災上重要な点を含んでいますが、その理由はというと、学問的には解明すべき点を多く残しているとも言われ、難しい問題です。

 降水一般の日変化については世界各地でおびただしい報告が出ています。日本の暖候期の降水については、(a)局地的あるいは短時間の降水は内陸部では午後、沿岸部では夜半~朝に極大をもち、(b)広域的あるいは持続的な降水は朝に極大を持つことが示されています。

引用:藤部文昭(平成13年(2001年))、天気、日本気象学会。

 令和4年(2022年)の7月と8月(26日まで)に発表された126回の記録的短時間大雨情報の発表時間帯の分布を見たのが図3です。

図3 時間帯別の記録的短時間大雨情報の発表回数(令和4年(2022年)7月と8月(26日まで)の126回)
図3 時間帯別の記録的短時間大雨情報の発表回数(令和4年(2022年)7月と8月(26日まで)の126回)

 昼(6~18時)と夜(18~翌3時)を比べると、夜の方が多くなっています。

 そして、同じ夜でも、夜のはじめ頃(18~21時)と未明(0~3時)が特に多いのですが、これは、7月は夜のはじめ頃(18~21時)が多く、8月は未明(0~3時)が多かったことによります。

 7月の記録的な雨と、8月の記録的な雨では、雨の降り方が違っているのかもしれません。

タイトル画像の出典:気象庁ホームページ。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁資料とウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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