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新入社員は要注意! ダメ上司の「とりあえず依頼」

横山信弘経営コラムニスト
とりあえず、これやっといてくれないかな……?

場当たり的な「とりあえず依頼」とは?

もうすぐ3月が終わり、新年度がスタートします。高校や大学等を卒業した人の多くが、4月になると社会人となり、新入社員として働き始めることでしょう。新入社員の皆さんは期待や不安を胸に抱いているでしょうが、あまり心配しすぎず、いろいろなことにチャレンジしていただきたいと思います。ところで、経営コンサルタントとして現場に入り込み、目標の「絶対達成」を掲げてご支援させていただいている経験から、企業には本当に無駄なことが多いなということを日々思い知らされています。問題のほとんどは中間管理職です。上司が無駄な仕事を生成しているです。新入社員の皆さんは、ダメな上司からの無駄な仕事の依頼にできる限り気を付けていただきたいと思います。とりわけ「とりあえず」という言葉で始まる「とりあえず依頼」には要注意です。

居酒屋へ行くと、多くの人が、

「とりあえずビール」

と言います。これと同じ感覚で仕事の依頼をする上司がいるのです。

「とりあえず、ここの倉庫を整理してくれないか」

「とりあえず、一緒にお客様をまわろうか」

「とりあえず、この資料を作ってもらおうか」

このような依頼です。依頼された作業が終わり、報告すると上司は困惑顔になります。

「え? もう終わったの? じゃあ、どうしようか……。じゃあ、とりあえず、この資料を整理して」

それも終わると、上司は面倒くさそうに、「じゃあ、とりあえず休憩しておいて」と言ったりします。しかし「休憩しろ」と言われても、いつまで休憩したらいいかわかりません。「どうしたらいいんですか?」と言うと、

「そうだなァ、とりあえず、係長に話を聞いてくれないかな」

などと言ってきたりします。新入社員は元気よく「わかりました」と言うでしょう。しかし係長のところへ行っても、

「え? 俺が? 課長が俺に聞けって? ……うーん、じゃあ、とりあえずこの資料、作ってくれるかな」

などと、係長も困惑気味に言います。しかし「資料を作れ」と言われてもよくわかりません。「どうすればいいですか?」などと質問すると、

「もういいよ。俺がやるから。……とりあえず、そこに座ってて」

などと、明らかに迷惑そうな表情で言ってきたりするのです。

毎日会社に行っても、「とりあえず会議に出てくれない?」「とりあえず議事録とってくれる?」「とりあえず部長にメールしておいて」と言われ、何となく1日が終わっていきます。「とりあえず残業してくれるかな」「とりあえず今度の休日出てくれる?」「とりあえずこのデータ分析しておいて」……。このような「とりあえず依頼」ばかりされると、だんだん嫌になってくることでしょう。しかし新入社員ですから抵抗できません。次第に「とりあえず依頼」に慣れていきます。そして仕事とはそういうものだ、と学習するのです。

「とりあえず依頼」の問題点

「とりあえず依頼」の特徴は、とにかく「場当たり的」だということ。「無計画」であり、「行き当たりばったり」なのです。新入社員が入ってきても、すぐに任せられる仕事はありません。ですから最初のうち「とりあえず依頼」が多くなってしまうのは仕方がないことです。ただ、会社に入り、部署に配属されたのなら、早期に新入社員のキャリアパスを伝えてあげることが上司の仕事です。

5年後にこのような社員になってもらいたい。その基準としては、このような知識があること。このような技能を有していること。このような提案をお客様にできるようになっていること……など、「求められる仕事レベル」を明確にすることが大切です。そこから逆算して、3年後の姿、1年後の姿を伝えます。新入社員は、なるほど、5年後にそうなっていないといけないから、こういう勉強をしよう、こういう経験をしたほうがいいのだなと受け止めるはずです。

ところがそういった計画も何もなく、毎日毎日「とりあえず依頼」を上司からされ続けたら、「計画性」が身に付きません。目標も期限も曖昧のまま、行き当たりばったりで仕事をしていると、そのやり方が普通になっていきます。

さらに、そのまま2年、3年が経つと、思考パターンが硬直していきます。目標から逆算して考えることができない思考プログラムが定着し、上司が変わってキツイことを言われると「できない理由」を連発しはじめることになります。そうして「最近の若い奴は全然ダメだな、使えない」などとレッテルを張られるようになるのです。

「最近の若い奴はダメ」などと言う人がいますが、若い人たちの問題でしょうか。少なからず、この場合、決して新入社員が悪いわけではありません。上司の問題です。ただでさえ日ごろから仕事が忙しいのに、新入社員が自分の部署に配属されると困惑する、という上司もいることでしょう。しかし、部下育成は上司の仕事。上司が上司たるゆえんです。新人のキャリアパスをしっかりと考え、計画的に指導してもらいたいですね。

(※参考コラム :会社をダメにする上司 「MKノー」の口癖とは?

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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