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元阪神・藤井宏政コーチも手応え、全員野球でカナフレックス旋風を!《都市対抗近畿2次予選》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
カナフレックスの新宅外野手(右)と澤田外野手(左)。ともに22歳のルーキーです。

 社会人野球は今、11月の都市対抗野球大会に向けた予選が行われています。8月まで各府県などの1次予選を終えた近畿では、9月1日から『近畿地区第2次予選』(わかさスタジアム京都)が始まりました。その初日に飛び込んできた、元阪神タイガースの藤井宏政さん(30)がコーチを務めるカナフレックスのニュース!あの日本生命から23安打も放ったうえ延長戦で競り勝ったというものです。いや~驚かれた方も多いでしょう。

 滋賀県東近江市にあるカナフレックス硬式野球部は、2014年から本格的な活動を開始しました。2013年に阪神タイガースを退団した藤井さんは創設時からの初期メンバーです。2017年途中から兼任コーチとなり、翌2018年からコーチに専念しているので、三塁で腕を回す背番号77の姿もすっかり板についたように見えます。

 そんな若いカナフレックスの初戦相手が、都市対抗の本大会出場は全国最多の60回で優勝も4回という日本生命だとわかった時、私はすぐ敗者復活戦に回った場合の試合を数えたくらいで…すみません。そこに打ち勝ったのですから金星と言っても失礼ではないですよね。二ュース記事にも「優勝したかのように喜ぶカナフレックス」の文字と、ベンチを飛び出して万歳する選手たちの写真がありました。

 でも、それだけでは終わりません。8日に行われた2回戦で、やはり本大会出場31回と優勝2回の経歴を持つ日本製鉄広畑にサヨナラ勝ち!いい粘りでした。勝利への執念が上回った、というべきでしょうか。しかし残念ながら大阪ガスと当たった10日の第1代表決定トーナメント準決勝は、最終回に反撃したものの5対2で敗戦。次は第2代表をかけたトーナメントに臨みます。

都市対抗以外がすべて中止になった社会人

 社会人野球はことし、東京五輪開催予定だったため公式大会日程が大幅に変更されていました。通常は7月に行われる都市対抗野球大会が11月(東京ドーム)に、8~9月の全日本クラブ野球選手権大会が5月(メットライフドーム)に、10月~11月の社会人野球日本選手権大会は7月(ほっともっとフィールド神戸、京セラドーム大阪)に、という具合です。

 しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、4月2日に全日本クラブ野球選手権の予選と本大会、社会人野球日本選手権の予選と本大会の中止が決まりました。また社会人野球日本選手権対象であるJABA大会も、すべて中止となっています。

 オープン戦の自粛要請の期間も途中で延長されたりしましたが、ようやく6月6日に解除。公式戦も7月1日から再開となり、7月4日には滋賀県などで都市対抗の1次予選がスタートしています。とはいえ予定していた出場を辞退するチームや、さらに今季限りでの休部を決めたチームもあるとか…。やはり新型コロナが与えた影響は計り知れないですね。

 そんな状況ゆえ、ことしの社会人野球においては11月の都市対抗野球大会が唯一の公式大会で、その予選が今季初の公式戦というチームがほとんどです。ましてや2次予選から出場する企業チームは9月になって初めて公式戦を迎えるわけで、これもまた今までにない経験でしょう。

 オープン戦ができないだけでなく、密を避けるために全員での練習もままならず、カナフレックスの藤井コーチは「3月末に全体練習をやったあと、4月からずっと分離練習だった」と振り返ります。6月にチームの全体練習を再開し、6月末からは対外試合も解禁されました。それでも昨年まで練習せずに仕事オンリーの期間があったカナフレックスですが、今年は常に仕事と練習を両立してやっているとか。オープン戦の数も増加し、練習場所に新しくバッティングケージも設置されたみたいですよ。

カナフレックスと都市対抗予選

昨年9月の日本選手権予選でのカナフレックス・藤井コーチ。ことしはこのユニホームが少し変わったそうです。
昨年9月の日本選手権予選でのカナフレックス・藤井コーチ。ことしはこのユニホームが少し変わったそうです。

 さて、都市対抗野球の本大会出場がまだないカナフレックス。ただし2016年に、当時現役だった藤井宏政選手が三菱重工神戸・高砂、また入部2年目の大西健太投手がNTT西日本の補強選手として東京ドームのグラウンドに立ちました。その時の記事はこちらからご覧ください。→<元阪神・藤井宏政内野手が補強選手で都市対抗に―「いいところで打ちたい!」>

 これまでの予選戦績を振り返る前に、ちょっと説明を。滋賀、奈良、京都の3つはそれぞれの府県の1次予選で勝っても、すぐ近畿2次予選へ進めるわけじゃないのです。その間に『京滋奈1次予選』というものがあり、言ってみれば1次→1.5次→2次と3段階の予選を通過しないと本大会には行けません。創部してまだ実績がなかったカナフレックスは最初、この“1.5次”にも苦戦してきました。

 2014年から、滋賀1次での敗退が3度。京滋奈1次に進んだ2015年と2016年も、2次への出場権は獲得ならず。しかも2015年は3チーム中2チームが進出できたのに、です。2019年は滋賀1次が免除で、京滋奈1次に連勝して、ついに近畿2次へ出場しました。しかし2次予選1回戦でミキハウスに敗れ、敗者復活の第4代表決定トーナメント1回戦で大和高田クラブに負けて涙を飲んでいます。

 そして今季は滋賀1次と京滋奈1次とも予選免除!他の企業チーム同様、近畿2次からの登場でした。よって1日の日本生命戦は、カナフレックスにとって2次予選初勝利だったんですよね。チームには8人の新人選手がいて、今季初の公式戦、おまけに相手は日本生命。本来ならガチガチに緊張してしまいそうな状況でしょう。でも実にのびのびと本領を発揮!藤井コーチはさらっと言います。「オープン戦で手応えがあったので」。口数が少ない藤井コーチだけに、ものすごく値打ちのある言葉でした。

【1回戦】4時間半の死闘を打で制す!

9月になってもまだまだ暑い、わかさスタジアム京都。
9月になってもまだまだ暑い、わかさスタジアム京都。

 わかさスタジアム京都で1日に開幕した第91回都市対抗野球近畿地区第2次予選は、まず第1代表決定トーナメントの1回戦からスタートです。では、旋風を巻き起こした日本生命との4時間34分に及ぶ戦いを振り返りましょう。なお成績、数字などは公式記録ではありませんので、あらかじめご了承ください。

 9月1日 1回戦

日本生命(大阪市)-カナフレックス(東近江市)

 カナ 004 102 002 002 = 11

 日生 400 000 104 001 = 10

   ※延長12回タイブレーク

◆バッテリー

 【カナ】大西(6回0/3)-上村(1回2/3回)-黒岩(2/3回)-森岡(2/3回)-青山-(1回)-宮城(2回) / 福田

 【日生】阿部(4回)-山本(1回)-清水(1/3回)-藤井(6回2/3) / 古川

◆本塁打 日生:上西ソロ

◆三塁打 カナ:澤田 日生:原田

◆二塁打 日生:上西、越智、原田

《試合経過》※敬称略

 カナフレックスの先発・大西は1回に1死満塁としてタイムリー、さらに犠飛と二塁打で計4点を失います。しかし3回、連打と四球などで2死満塁とした打線は、7番・澤田が走者一掃のタイムリー三塁打と続く福田のタイムリーで追いつきました!4回には2死一、二塁で5番の江頭が勝ち越しタイムリーを放ち、この回で日本生命の先発・阿部が交代。6回は3連打で1死満塁として、代わった4人目の藤井から6番・吉田がタイムリー!澤田の二ゴロでもう1点追加です。

 2回以降は1安打のみで6回まで無失点だった大西。しかし7回の先頭・上西にソロホームランを浴びたところで降板しました。代わった上村は死球を与えるも併殺などで後続を断ち、8回は2死から黒岩の救援を仰いで0点に抑えています。すると9回、2安打と四球などで1死満塁としたカナフレックスは、ここまで既に4安打の3番・新宅がタイムリー!2人を還して9対5と差を広げました。

大西投手(左)と福田捕手(右)。「点を取られたので…」と固辞されたのですが、チーム自慢の同級生バッテリーなので載せました!
大西投手(左)と福田捕手(右)。「点を取られたので…」と固辞されたのですが、チーム自慢の同級生バッテリーなので載せました!

 もう大丈夫と思ったのも束の間、その裏に黒岩がヒットと四死球で1死満塁とされ、代わった森岡が連続タイムリー(単打と二塁打)を許して3点、次の二ゴロでもう1点…。なんとまあ土壇場で追いつかれてしまいました。でもサヨナラのピンチはしのいだ森岡。9対9で延長戦に突入。ちなみに9回終了時点でカナフレックスは先発全員の20安打です。

 10回、11回と追加点なく、タイブレークの12回へ。無死一、二塁で前イニングの打順を引き継いで行われます。日本生命は藤井が続投、先攻のカナフレックスは二塁に武田、一塁に新宅を置いてスタート。4番・北川のヒットで無死満塁となり、続く江頭の一ゴロで武田はホームアウト。1死満塁に変わって、代打・植松の死球で押し出し。2死後に福田のタイムリー!2点勝ち越しました。

 その裏、カナフレックスは11回から登板の宮城が投げ、日本生命は5番・廣本からの攻撃です。犠打で1死二、三塁として福富がタイムリー。1点差とされ、なおも1死一、三塁でしたが、ここまで2点二塁打とソロホームランを放っている7番・上西を遊直に打ち取った宮城。一塁走者は戻れず、併殺で試合終了です。

野手がよく打ってくれた、と藤井コーチ

 日本生命戦が終わった日の夜、電話で話を伺った藤井コーチの第一声は「疲れましたねえ!」です。そりゃそうでしょう。まず、1回にいきなり4点取られたことは「回が浅かったから、こっちも点を取って返していこうと思った。オープン戦がそうだったので。大西も立ち直ってくれたし、向こうのいい当たりが野手の正面に飛んだりして、よかったです」と振り返ります。

 そして3回にきっちり追いついたわけですね。「満塁で新人の澤田が三塁打。一番打点を稼いでいますよ。でもこれで終わっていたらどうなったかわからないけど、そのあと福田の同点タイムリーがあったからよかった!」

 9回裏にまた追いつかれ、2死三塁とサヨナラのピンチで「最後はいい当たりのセンターフライでしたねぇ」と少し苦笑いしつつ「森岡がよく耐えてくれました。また10回は青山が三塁までランナーを進めながら最後は空振り三振をよく取ってくれたし、11回の宮城も2死から三塁打を打たれたけど、しっかり抑えて」と投手陣の粘りにも感謝。そして「ピッチャーも大変やったと思うけど、それ以上に野手が打ちましたね、きょうは」と藤井コーチは言います。

少し懐かしい写真。2016年の9月、背番号10で現役だった藤井選手です。
少し懐かしい写真。2016年の9月、背番号10で現役だった藤井選手です。

 先発全員の23安打で、ヒットがなかったのは7回と11回の2イニングのみでした。ちなみに長打は3回、澤田選手が放った三塁打1本。他はすべて単打で、藤井コーチは「僕、セカンドまで(打者の)レガースとか受け取りに一度も行ってない」と笑っていました。なるほど。なお4番を打つ北川倫太郎内野手(27)は6打数4安打!元楽天で2017年からカナフレックスでプレーしています。

元気はつらつ!ルーキーズ

 それから、7打数5安打2打点と大当りの3番センター・新宅優悟外野手(22)はルーキー。前に名前が出た澤田裕基外野手(22)もルーキーで、7番ライトで先発出場して7打数3安打4打点の大活躍でした。他にも9番サードの田中慧樹内野手(23)、10回に代走で二盗、三盗を決めた藤田雄也外野手(22)、延長12回にセカンドを守った廣塚涼太郎内野手(22)、7回途中でリリーフ登板した最年少の上村剛輝投手(21)、この日は出場していない秋川優史投手(22)、李福健内野手(26)の8選手が新入団です。

 藤井コーチは「新人なので怖さを知らないところもあるけど、みんな準備ができていると思います」と評価しました。もちろん新人選手だけに限らず「全員出る、というのがモットーです。きょうもそういう話をして、常に誰でも行けるようにしていた」とのこと。

 昨年まで監督を務めた河埜敬幸GM(65)の、南海ホークス時代の後輩である山田勉監督(61)が就任したカナフレックス。山田新監督について「どんどん行け行け!と言ってくれます。とことんプラスに考えていくという方針ですね」と話す藤井コーチ。「だから選手もそうやって戦っています。ずっと笑ってる!明るいですねえ。それに監督は『絶対行ける!』と冬からずっと言っていたんですよ。だから選手も第1代表で本戦に行こうと。ここに(日本生命)勝ったら行ける。全力でやろうと誓ってきました」

【2回戦】粘って粘ってサヨナラ勝ち!

 次の試合は8日、相手は日本製鉄広畑です。1回戦のあと藤井コーチは「行け行け!のチームカラーですが、それ以上に謙虚にいかないとダメですね。きょうはたまたま打ったけど、そう簡単には勝たせてもらえないので」と気を引き締めていた2回戦。今度もまた粘って粘って、最後にもらったチャンスを逃さずサヨナラ勝ちしています。

 9月8日 2回戦

カナフレックス(東近江市)-日本製鉄広畑(姫路市)

 広畑 010 002 001 = 4

 カナ 010 100 021x = 5

◆バッテリー

 【広畑】尾嶋(3回)-宮田(4回0/3)-島袋(1/3回)-川瀬(1回) / 福井

 【カナ】宮城(5回2/3)-黒岩(3回1/3) / 福田

◆三塁打 広畑:横尾

◆二塁打 カナ:江頭、田中 広畑:佐々木

《試合経過》※敬称略

 1回戦で最後の2イニングを投げた宮城が先発、2回に二塁打と犠打で1死三塁として先制されますが、その裏にカナフレックスも江頭の二塁打と犠打で1死三塁として7番・澤田が同点タイムリー!4回には2死二塁から9番・田中のタイムリー二塁打で勝ち越しました。ところが6回、2死を取ったあと内野安打や四死球などで満塁とし、2点タイムリーを浴びて逆転を許した宮城。ここでリリーフした黒岩がピンチを切り抜け、7回8回も無失点で味方の反撃を待ちます。

先発した宮城投手。なお写真は昨年9月8日、日本選手権近畿最終予選のものです。
先発した宮城投手。なお写真は昨年9月8日、日本選手権近畿最終予選のものです。

 3対2と日本製鉄広畑が1点リードして迎えた8回裏、カナフレックスは先頭の新宅が中前打を放ち、北川は死球。江頭はきっちり送って1死二、三塁となって6番・吉田が同点のタイムリー!続く澤田のタイムリーで再び勝ち越しました。しかし9回、黒岩はヒットと犠打で1死二塁として、代打・横尾に三塁打…。土壇場で追いつかれてしまったものの、後続を断った黒岩の力投に打線が応えました。

 9回裏1死から山崎が中前打、続く武田の犠打を処理したキャッチャーの送球が乱れ1死一、三塁とチャンスを広げたカナフレックス。武田が盗塁を決め、新宅のセカンドヘの打球で三塁から山崎が還ってサヨナラ勝ち!(公式記録は内野安打)。これまた優勝したかのように盛り上がった試合終了の瞬間です。

山田監督「自信を持って送り出しています」

 藤井コーチのコメントをご紹介しましょう。6回に逆転されても動じなかったかと聞いたら「あー逆転されたー…となりましたよ。そりゃなりますよね。でも、あと4イニングあると思って。ここんとこ後半に粘りが出てきているので」と振り返ります。そして「きょうは粘り勝ち、ですかね。9回1アウト三塁から、よく抑えてくれた。あそこを最少失点でいけたのが大きかったですね」と。

 追いつかれてなお1死三塁という場面を、黒岩投手や野手がしっかり守り切ったからこそサヨナラへつながったということ。その裏、一死一塁で武田選手の犠打が相手エラーを誘いました。あれで流れが来たと言えます。「カウント1-2ですか?よくバントしましたねえ」と藤井コーチ。次は大阪ガスですよ。また手強いでしょうね。「相手はもう。自分らは向かっていくしかないんで」

 この日は山田監督にもお話を伺うことができました。全員がしっかり準備して、いつでも行ける状況で試合に臨んでいるそうですね。「はい。本当によく練習しているんですよ。どこよりも。だから自信を持って送り出しています!」。劣勢になっても声を出し、ベンチが非常に明るいと聞きました。「そうです!ベンチの25人が一緒に戦っている。それだけで圧倒することもできるんです。とにかく楽しく!と。楽しくやりなさいと言ってありますから」

 このあと強豪との対戦がまだ続きますが、山田監督は「勝つつもりでいますよ。勝つつもりでいかないと。相手も必死になってきますからね。どんな相手でも、私たちがやることは同じ」とキッパリ。監督もコーチも選手も、みんな同じ気持ちで同じ方向を見ているカナフレックスです。この先も、近畿2次予選をかき回してくれるに違いありません。

初々しくて頼もしいルーキーたち

 ルーキー8人のうち、3選手がコメントをしてくれています。新宅選手は7打数5安打2打点だった1回戦のあと「きょう勝ててよかったですが、ここからが勝負なので全試合集中して代表権を取れるように、次も一戦一戦頑張ります!」と話していて、決勝のタイムリー内野安打など2安打を放った8日の2回戦では「今回はみんなに助けられました。みんなが打ってつないでくれたから。前のバッターが出てくれたおかげですね」という言葉。なお写真がいつも真顔なので、なぜかと尋ねたら「僕、笑顔ができないんですよ~」とのこと。本当に笑っていませんね。

 

左から澤田選手、新宅選手、藤田選手のルーキートリオ。9月8日の試合後です。
左から澤田選手、新宅選手、藤田選手のルーキートリオ。9月8日の試合後です。

澤田選手は1回戦が7打数3安打4打点、2回戦は2打数2安打2打点。初の公式戦にも「初めてなので逆に失うものはないくらいの気持ちでいっています!先輩方から"僕らは挑戦者"と言われているので、存分に暴れてやろうと思って。悔いは残したくないんです。負けるとしても、やることをやって負けてやるって気持ち。不甲斐ない負け方はいやです」と強い気持ちで臨んでいます。

 同い年で同期の2人、どんな存在?「いい戦友ですね」と新宅選手。新宅選手がヒットを量産して、澤田選手は打点を稼いでという?「ヒットの数はいつも負けてるんですよ~」と悔しそうに、でも笑顔の澤田選手でした。

 藤田選手は2試合とも代走での出場(10日の大阪ガス戦ではスタメン)。1回戦では二盗、三盗と立て続けに走り、8日も1盗塁です。初の公式戦で緊張は?「全然。緊張しなかったです。きょう(8日の2回戦)の方が緊張しました。負けていたし、走りにくい状況だったので」。まだまだ、これからも期待していますよ!また次回、他の新人さんたちに話を聞けたらご紹介します。

【準決勝】4番・北川の2ランも反撃及ばず…

 10日の第1代表決定トーナメント・準決勝は、2018年に都市対抗初優勝を飾った大阪ガス(出場24回)が相手で、大西健太投手が先発しました。大西投手と宮城慎之介投手は同じ学年で、27歳ながら投手陣の最年長です。

 9月10日 第1代表決定トーナメント準決勝

大阪ガス(大阪市)-カナフレックス(東近江市)

 カナ 000 000 002 = 2

 ガス 101 001 11X = 5

◆バッテリー

 【カナ】大西(6回)-上村(2回) / 福田-植松(8回裏)

 【ガス】温水(5回)-田中(3回)-飯塚(2/3回)-緒方(0/3回)-阪本(1/3回) / 高橋

◆本塁打 ガス:青柳ソロ カナ:北川2ラン

◆二塁打 ガス:古川、峰下、花本、野口

《試合経過》※敬称略

 1回に2死からヒットと盗塁、それに絡むエラーで三塁まで進め、4番・末包にタイムリーを許しました。3回には先頭の1番・青柳のソロホームランで2点目が入ったものの、4回と5回は三者凡退に。ところが6回、ヒットと盗塁、暴投、四球などで2死一、三塁となり6番・花本のタイムリー内野安打。1点ずつながら3対0とリードを広げられます。

 7回からは上村が登板。先頭にヒットを打たれ盗塁もあって2死二塁となり、2番・峰下にタイムリー二塁打。8回は2死を取りながら連続二塁打でもう1点追加されました。

 一方、2試合続けて2ケタ安打を放っていたカナフレックス打線ですが、この日は1回と2回に単打が1本ずつあっただけ(2回は四死球とヒットで1死満塁と攻めるも連続三振で得点なし)。3回から8回までは四球での走者を出すのみでした。しかも2イニング続けて三振&盗塁失敗という併殺を喫するなど、なかなかチャンスを広げられません。

 5対0とリードされて迎えた9回、大阪ガス3人目の飯塚から先頭の江頭が中前打(ようやくチーム3安打目)を放ち、1死後に4番・北川がライトへホームラン!2点を返します。2死後に6番・吉田が内野安打、投手交代で田中は死球、途中からマスクをかぶる植松の左前打で満塁として、代打は山崎。1発出れば逆転という場面で、エースの阪本を投入した大阪ガスに対し、山崎は初球を打って右飛。3者残塁で試合終了です。

次は13日に元虎コーチ対決です

これは昨年9月、日本選手権近畿最終予選で第1代表をかけて戦った藤井コーチ(左)と阪口コーチ(右)。結果はパナソニックの勝ちでした。
これは昨年9月、日本選手権近畿最終予選で第1代表をかけて戦った藤井コーチ(左)と阪口コーチ(右)。結果はパナソニックの勝ちでした。

 カナフレックスは北川選手の2ランがあったものの、連打なしの6安打。3併殺などで勢いをつけられなかったですね。藤井コーチは試合後、「切り替えて、次頑張ります!」と言っていました。新生カナフレックスの全員野球は、このあとも近畿2次予選をかき回してくれるでしょう!

 「ちなみに次の試合、パナソニックと当たったりして」と私が言うと「可能性ありますね」と笑っていた藤井コーチですが、その通りになっちゃいました。阪神タイガース時代に、一緒にプレーしていた阪口哲也コーチ(28)がいるパナソニックも、同じ10日の試合でNTT西日本に負けてしまったのです。ともに勝って第1代表決定戦で直接対決!と願っていたのに仲よく…。この2チームは13日、第2代表決定トーナメントの1回戦(勝てば決勝)で顔を合わせることになりました。それは次回、ご紹介します。

 ※この度はカナフレックスの山田監督、藤井コーチ、またカナフレックスの大塩浩史マネージャーにも大変お世話になりました。感謝申し上げます。

 《掲載写真はチーム提供》

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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