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子どもが小学校で初の夏休みを迎え、「年代別ワークショップ」が盛り上がっている理由を改めて知る

五十嵐悠紀お茶の水女子大学 理学部 准教授

梅雨も明けて世間は夏真っ盛り。我が家の子供たちも夏休みに入りました。私にとっては、「小学生の子どもを持つ親」としての初めての夏休み。いつの時代も恒例のあさがおの鉢や宿題を持ち帰ってきました。

そんな中、びっくりしたことの一つに、小学校から配布されたお便りの中にたくさんのワークショップのチラシがあったこと。電子工作体験、プログラミング体験、ボランティア体験、アート体験、和太鼓などの日本文化体験などなど。

夏休み中にこんなにたくさんの小学生向けイベントが行われているといったことを改めて知りました。そして、ママ友たちは、どのイベントに子どもを参加させるかで盛り上がっています。

持ち帰ったチラシの中には、私の仕事仲間が行うワークショップもいくつかありました。別ルートから聞いた話では、20人程度の募集枠に、締切まではまだ時間があるのにも関わらず、すでに「200人超の応募が来ていて抽選だ」という話もありました。

私たちが子どもだった時はどうでしょうか。図書館での本の読み聞かせなどはあったかもしれませんが、このような低年齢児向けのワークショップはなかったのではないでしょうか。

どのように企画されるのか

ワークショップを企画する時には、場所、規模、対象年齢、一度に参加できる人数、参加者負担のコスト、企画する側のコスト、開催時間などを一つ一つ明確にしながら、企画・検討していきます。

こういったことはノウハウがかなり重要なので、初めて行う時にはすでに行ったことのある人からの助言が必須です。

例えば、私が企画したぬいぐるみをデザインするワークショップでは、「自分でデザインしてもらいたい。そして自分で縫ってもらいたい」というコンセプトから、家庭科で裁縫を習って自分の裁縫道具を持っているのが小学校4年生ごろということから、小学校5年生~中学生を対象と設定しました。

私が企画したワークショップの模様
私が企画したワークショップの模様

一方、ステンシルをデザインするワークショップでは、小学校1年生から参加できるワークショップにしました。なぜなら、デザインする過程として、ぬいぐるみは立体形状である一方で、ステンシルデザインは平面のペイントツールであること、製作物もハンコをぽんぽん押して作っていくだけだからです。

このように、使うシステムやツールによって対象年齢を設定している場合がありますし、同じツールを使うものでも対象年齢を制限することでワークショップそのものの設計を変えることができます。

先日、友人である『ピッケのつくるえほん』の朝倉民枝さんのワークショップに、うちの子どもたちを連れて行きました。この時には、同じ『ピッケのつくるえほん』のソフトを使って、幼稚園児対象と小学生対象とに各回を分けて募集されていました。

幼稚園児の回は、親子で同じ机に向かって一緒に製作をしていきます。一方で小学生の回では親は後ろの席で見守り、子どもが1人で製作していき、最後に全員の前で発表会を行います。

どうしても親子で並ぶと、少なからず親が口出しをしてしまうので、後ろに親だけがまとまって座るという、口出しできない状況を無理やり作っていました。そうすることで、子どもは自分の世界観を存分に活かした絵本づくりをするようになります。このワークショップに限らず、子どもの対象年齢が狭く設定されたイベントでは、子どもたちは「おともだち」を意識した作品づくりにもなるように感じます。

参加する年代に応じて、ワークショップの企画を練ることが大切です (c) Tamie Asakura
参加する年代に応じて、ワークショップの企画を練ることが大切です (c) Tamie Asakura

ワークショップというのは、それぞれ開催する人たちが何らかの目的を持って開催しています。企業を知ってもらう、ソフトウエアを知ってもらう、違うイベントのための呼び込み、子どもたちの成長のため……などですね。

私が自分で開催したワークショップを通じて感じたことは、論文を書く上で 自分のシステムを使って感想を知ることができただけでなく、違った側面からも貢献できるということです。

例えば、企業ではワークショップを行うことで宣伝につながります。特に小学生は1人では参加できないので親子で参加する、もしくは親が連れて行きそこで待っていることになります。

親子で参加するワークショップ自体も面白いものが多いのですが、子どもが楽しくワークショップに参加している傍ら、併設されている企業展示などがあって、そこを見ながら親が待っている、といったケースもあり、そこまで含めてよく考えられているなぁと思ったこともあります。

親御さん目線ではどのように見えているのか

ワークショップを企画する側である時もあれば、幼稚園児・小学生を持つ親として参加する立場になることもある私。ママ友とは、このような参加型体験イベントの話になることも多いです。

周りに専業主婦の方が多いということもあるのかもしれませんが、基本的に「子どもと一緒に遊びながら何かを学べる場所」を親御さんは求めているように感じます。

普段は下校後の公園遊びやおうち遊び、児童館で遊ばせたり、習い事をさせたり。そんな毎日とは違った夏休みでは、普段なかなかできない少し変わった体験をさせてあげたい。なおかつ、それが学びや教育につながればうれしい。

そんな気持ちが、どの親御さんにもあるように思います。

一昔前は、「普段できない経験をする場所」というのが遊園地や動物園、水族館、博物館などだったように思います。しかし最近では、『チームラボによるインタラクティブアートが施された新江ノ島水族館』や、インタラクティブな光の展覧会『魔法の美術館』(今夏は新潟市新津美術館秋田県立近代美術館さいたまスーパーアリーナなど各地で開催)などに代表されるような、一工夫のある場所が子連れにも人気になってきています。

将来なりたい職業の人に直接会える場でもある

とはいえ、ワークショップは単に「いつもできないことを体験する場」だけではありません。

私は以下のようなご家庭の方々に、ぜひその方面のワークショップやイベントに親子で足を運んでみることをお勧めしたいと思います。

例えば、芸術系に進みたいという子どもを持つご家庭。「芸術系は将来が不安」という気持ちを持つ親御さんは意外と多いものです。

また、理系に進みたいという女の子を持っているけれど、理系女子に不安を抱くお母さん方などもそう。

私自身、これまで自分のワークショップでは、親子参加型ならではの企画として「なぜこのワークショップを行ったのか」、「大学の研究はどんなことをしているのか」、「ワークライフバランス」の話など、小学生にも親御さんにも伝わるようなトークを織り交ぜてきました。

「女性研究者」という職業や、「プログラムを書く人」、「ワークショップをする人」というのを身近に感じてもらうため、そういったトークを入れる方が良い、というアドバイスをいただいたことがきっかけだったのですが、実際に「理系に進んでよかったですか?」、「仕事と育児との両立は大変ですか?」、「女子大はどうでしたか?」など親御さん(特にお母さま方)から聞かれることが多いのが印象的でした。

将来なりたい職業がお子さんにすでにあるのであれば、その分野のワークショップに行ってみることで、本人がワークショップを体験するだけでなく、その職業に就いた人から直接生の声を聞くことのできる良い機会にもなるのです。

今夏に行われる、具体的な子供向けワークショップまとめ

最後に、夏休みに具体的に行われるワークショップを挙げてみます。

大きなところでは、『ワークショップコレクション』 が8月29日(土)、30日(日)の2日間に渋谷で行われます。11回目となる今回、これまでと違う点として「取り壊しの決まったビル」が舞台になっています。会場内の壁・窓・床・天井など空間全体を子どもたちがどう「楽しむ」のか。期待が高まります。

凸版印刷では、夏休み体験教室として、製本体験や活版印刷体験などができます。大きな紙を用いて実際に自分だけのノートを製作するという、毎年大人気の体験教室です。

こうしたワークショップが開催されているのは、都心部だけではありません。最近は市町村など自治体が主催・共催しているワークショップも増えてきているので、まずは在住・在学・在勤の自治体のホームページをチェックしてみるのもいかがでしょうか。

職業の体験だけでなく、さまざまな習い事の体験ができるイベントも増えてきています。例えば、近畿地方中心に活動されている『子どもの習い事体験フェスタ』。その地域で活躍する講師の方々から、さまざまな習い事をその場で無料体験できるイベントです。

他にも、演劇を台本から作り上げる『演劇ワークショップ』や、オペラ公演を作り上げる『オペラワークショップ』といった募集があり、びっくりしました。歌・合奏・演技などのワークショップや、舞台道具のためのモノづくりワークショップなどもあり、小学生~高校生までが数日間掛けて作品を作り上げていくようです。

最近の夏休みの過ごし方の定番は、小学生には参加型ワークショップ、中学生には職場体験、高校生には大学オープンキャンパス、大学生・大学院生は企業インターンや海外留学……といったところでしょうか。

さまざまなことを体験した上で将来の進路を考えたり、大人になっていける、そんな現代の子どもたちが少しうらやましいですね。

(この記事はエンジニアtype 『五十嵐悠紀のほのぼの研究生活』からの転載です。)

お茶の水女子大学 理学部 准教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了.博士(工学).日本学術振興会特別研究員PD, RPD(筑波大学), 明治大学総合数理学部 専任講師,専任准教授を経て,現職.未踏ITのPM兼任.専門はヒューマンコンピュータインタラクションおよびコンピュータグラフィックス.子ども向けにITを使ったワークショップを行うなどアウトリーチ活動も行う.著書に「AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55」(河出書房新書),「スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子 (ネット社会の子育て)」(ジアース教育新社),「縫うコンピュータグラフィックス」(オーム社)ほか.

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