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アルゼンチン人コーチが語る「橋本拳人の大きな成長」

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、チェンマイ・ユナイテッド所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 一昨年の末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を振るう彼が、6月7日に日本代表が4-1でタジキスタンを下したワールドカップアジア2次予選について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 タジキスタンと日本はレベルがまったく違いました。4-1は当然ですね。新しいメンバーを試せたし、古橋亨梧、橋本拳人、川辺駿がゴールを重ねたところが良かった。もちろん、南野拓実の7試合連続ゴールは立派な結果です。でも、他の顔ぶれが得点することイコール、攻撃にバリエーションがあるってことですよ。

写真:森田直樹/アフロスポーツ

 このところ、サムライブルーは圧勝を続けていますが、韓国フル代表やオーストラリアを相手にした場合、こんな簡単にゴールは決められません。

 強敵と戦えば、どうしても押し込まれる展開になります。鍵を握るのは、激しいプレーで相手の攻撃を摘み取る選手なんです。タジキスタン戦での橋本拳人はまさにうってつけだと感じました。

写真:森田直樹/アフロスポーツ

 僕は橋本選手がFC東京に在籍していた頃から、舵取り役の彼に注目していました。現代サッカーにおいては、ボランチの働きが試合を決めると言っても過言ではありません。ボランチがあまりボールを触らずに繋げないチームは、構成力、展開力が激減します。昨シーズン前半のFC東京が強かったのは、橋本拳人の働きぶりが大きかったからですよ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200720-00188922/

 彼は2020年7月18日の浦和レッズ戦を最後にロストフに移籍しましたが、ロシアでの1年で大きく成長しましたね。激しいプレーが出来る。中盤で相手選手にボールが渡った際、ガッツりとボールを奪いに行き、振り向かせない。ヘディングも強く、右足でも左足でも正確に蹴れる。さらにハートが強く、<闘う>ことの意味を知っている。

 そのうえ、27歳という年齢で代表チームを引っ張るリーダーシップも見せている。本当に可能性を感じます。183センチという恵まれた体躯も魅力ですね。フィジカルの強さも日本人離れしています。

写真:森田直樹/アフロスポーツ

 橋本拳人なら、アルゼンチンやブラジルの名門チームでも十分レギュラーでやっていけるでしょう。ロシアの次はヨーロッパの4大リーグから声が掛かるんじゃないかな。セリエAの強固な守備のなかでも、リーガのテクニシャンを相手にしても、活躍できるように思います。

 タイプとしては、アルゼンチン代表でパリ・サンジェルマンのボランチのレアンドロ・パレデスと似ているかな。今後、日本代表の中心選手となるでしょうし、まずはワールドカップアジア最終予選での活躍に期待します。

 橋本選手がどこまで上っていくか、日本全体で、楽しみに見守りましょう。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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