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明日ゴング! 増量した28戦全勝24KOのWBC暫定スーパーミドル級チャンプ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 28戦全勝24KOでWBCスーパーミドル級暫定王座に就く、デビッド・ベナビデス。WBA/WBC/IBF/WBO統一同級チャンピオンであるサウル・"カネロ"・アルバレスとの頂上決戦実現に向けて、両陣営が動き出すように思われた。

 だが、ベナビデスはライトヘビー級に上げ、明日、元WBCチャンプのオレクサンドル・グウォジクと拳を交える。同ファイトに関して、正式な契約を待たずにアナウンスしたのはWBCだった。

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 御存知のようにメキシコに本部を置くWBCは、同国籍の人気選手、カネロが王座から転落するリスクを避けたい。とはいえ、アリゾナ州フィニックス生まれのアメリカン、ベナビデスも、ルーツはメキシコだ。この実力者にはどこかで“暫定”の文字を取り除いてやる必要がある。両者をぶつけるのであれば、これ以上ない規模のメガ・ファイトこそ相応しい。他団体ではなく、WBCが主導権を握りたい------。

Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions

 ベナビデスvs. グウォジク戦が3月にWBCから発表された折、そんな思惑が読めた。ベナビデスは過去に禁止薬物の使用や、体重オーバーという失態を重ねているが、その度にWBCは寛大なる処置で彼を庇護している。あるいは、現WBCライトヘビー級王者、アルツール・ベテルビエフにベナビデスをぶつけることを前提に、グウォジクとの試合を認めたのか。グウォジクには、ベテルビエフとの統一戦で対峙した過去がある。

Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions

 最終記者会見でベナビデスは言った。

 「この試合は私にとって”世界”を意味します。3歳の頃からの夢でした。私はファンの前で、自分の才能を披露することを楽しむつもりです。この階級で、より自分が強く、そしてスピーディーになったと感じます。自分のパフォーマンスを見せられることがとても楽しみです。私は確実に、レベルアップしました。

 自分には、まだ何年も現役生活が残っているので、若きベテランのようなものです。これから円熟期に入るでしょう」

Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey & Esther Lin/Premier Boxing Champions

 WBCのマウリシオ・スライマン会長は「ベナビデスには、まだ168パウンドに戻してカネロに挑戦する可能性も残っている」と発言しているが、一体どんな流れとなるのだろうか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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