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結婚相談所にいる男性は会話が下手で受け身な人が多いって本当ですか?~結婚相談所の本音(8)~

大宮冬洋フリーライター
世間の基準ではなく、自分の基準で選び選ばれることが大切。イラスト:つぼいひろき

 マッチングアプリが全盛の時代だ。一方で、昔ながらの「お見合いおばさん(おじさん)」が経営する結婚相談所もしぶとく生き残っている。会員一人ひとりの性格や事情を把握して、お見合いを組み、相談に乗り、結婚というゴールを一緒に目指していく。地道な仕事だ。彼らは具体的に何をしてくれるのか。料金は妥当なのか。そのやり方で本当に結婚できるのか。いろんな疑問がわいてくる。

 筆者は全国の結婚相談所を訪ね歩く連載を続けている。顔を合わせて話してみると、意外な現実を知ることが多い。こちらが率直な質問をすると、期待以上に赤裸々な回答が返ってきたりする。本連載ではその一部を読者と共有したいと思う。

 第8回は、婚活中の30代40代女性からよく聞く話を取り上げたいと思う。「結婚相談所に登録している男性は、結婚への真剣度は高いかもしれないけれど会話が下手。はっきり言って面白くない人が多く、長く一緒にいたいとは思えない」という愚痴だ。それが原因で婚活自体をやめてしまう女性も少なくない。だからと言って、日常生活で結婚相手を見つけられるわけでもないのだが……。

 答えてくれるのは、東京・表参道を拠点に女性2人で結婚相談所「ハチドリ」を運営している岡本裕子さんと田中真菜美さん。それぞれ15年以上の会社勤めをして一緒に起業した経歴を持つ。結婚相談所に登録していない「その他大勢」の男性もよく知っている2人の見解を聞いてみたい。

エスコート上手な男性よりも、自分を変える気持ちがある男性のほうが結婚に向いている

――結婚相談所にいる男性はコミュニケーションが下手で魅力的じゃない、という声を婚活中の女性から聞くことが多いです。実際、どうですか?

 確かに、比率で言えばいわゆる草食男子が多いとは思います。自分からは女性に声をかけられなかったり、男性が圧倒的に多い職業なので女性との会話に不慣れだったり。

 ただし、この比率は一般社会とあまり変わりません。積極的な男性は自力で相手を見つけていますから。実際、自分の周りにいる独身男性はどうでしょうか。もしコミュニケーション能力が高くて魅力的な独身男性が多いのならば、なぜ自分は彼らから選ばれていないのか。そこから考えたほうがいいと思います。

――気軽に始められるアプリのほうが素敵な男性がたくさんいる、という声も聞きます。

 その女性が何を目的として活動しているのかによります。単に恋人がほしいだけならばアプリで十分でしょう。本当に結婚したいのであれば、無駄や危険がない結婚相談所のほうがいいと思います。

――そこで話が戻るのですが、結婚に真剣な男性がそうでない男性より「真面目で会話が続かない」「受け身で女性慣れしていない」ことが多いのは仕方ないことなのでしょうか。

 そもそもコミュニケーション能力が低いことの何がいけないのですか? 能力が高い人は友だちが多いし、当然ながら女性の友だちも多いですよ。友だちが少ない男性のほうが結婚相手には適していると私たちは思います。交際費がかからないし、土日は子どもの面倒をみてくれるし。

 受け身な男性はハンドリングがしやすいという面もあります。結婚相談所の場合は、男女双方にカウンセラーがつくので、交際中に何か不満があればどんどん相談すればいいのです。「食べ方が汚い」「デート中にずっとスマホを見ている」「デートプランを考えてくれない」「プロポーズしてくれない」などなど。男性側のカウンセラーに伝えると、上手に指導してくれます。

 特に理系男子は素直な人が多いので、カウンセラーの指導に従って行動や習慣を変えてくれる人が少なくありません。エスコートがもともと上手な人よりも、自分を変える気持ちがある人のほうが結婚生活には向いています。

文句を言う前に、男性から「この人を楽しませたい」と思ってもらえる女性になろう

――でも、お見合いやデートで「楽しい」と思えないことが続くと婚活自体に疲れてしまう気持ちもわかります。

 楽しめないのは相手のせいだけなのでしょうか? 魅力的な女性が目の前にいたら、多くの男性はいろいろサービスしようとしますよね。文句を言う前に、男性から楽しませたいと思ってもらえる女性になろうよ、とアドバイスしたいです。

 選んでもらう前に文句だけ言って行動しない人は少なくありません。傷つかずに済むからでしょう。でも、それでは婚活のスタートラインにすら立っていないのです。

――失敗経験も含めて、場数を踏むことは大切だったりしますよね。

 その通りです。前向きに働いていて、清潔感があって、コミュニケーション能力が高い男性は確かに人気があります。でも、そういう人から今まで選ばれて来なかった自分の現状からスタートしなければなりません。

 過去の恋愛経験を振り返っても、相手のコミュニケーション能力がそれほど必要だったでしょうか。口下手だけど優しいところがある同級生を好きになったこともあるはずです。これから結婚相手を見つけるのであれば、たくさんの人に会って自分なりの価値基準を見つめ直す作業が欠かせません。基準がないと、実は自分に合った人に当たったときに「この人だ」とわからないままに逃してしまうからです。

 世間の基準ではなく、自分の基準で相手を選び、自分も選んでもらうこと。誰かに幸せにしてもらうのではなく、自分で幸せになること。婚活を成功させて、良き結婚生活を送るためには主体性が何より大事だと思います。

 以上がハチドリへのインタビュー内容だ。「会話が楽しめないのは相手のせいだけなのでしょうか?」という反問には共感を覚えた。素敵だなと感じる人の前ではいろいろ話したくなるし、話すことが思いつかなくても一緒にいて嬉しい気持ちが表情に出るものだ。逆に、こちらを意地悪に評価したがる人の前では委縮して、普段以上に口下手になり表情も硬くなってしまう。

 男女ともに言えることだが、「選ぶ」のではなく「選んでもらう」ことが大事で、そのためには「相手を楽しませる」姿勢と行動が不可欠なのだ。結婚相談所に入っている場合は、各局面でカウンセラーから具体的かつ親身なアドバイスをもらえて、自分を良い方向に変えていくことができる。それを実行してくれない結婚相談所にこそ文句を言うべきだと筆者は思う。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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