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日本代表、ワールドカップ翌年の予算は? 代表戦は中止にならない?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨年の大会後にあったパレードには、約5万人のファンが集まった(写真:つのだよしお/アフロ)

 昨秋のワールドカップ日本大会で8強入りした男子15人制ラグビー日本代表の2020年度強化予算の見通しが、3月18日、発表された。日本ラグビー協会の定例理事会後、岩渕健輔専務理事が記者団に説明した。

 岩渕専務理事は過去に同代表のゼネラルマネージャーを務めた国際派。強豪国とのマッチメークに尽力し、2015年にはエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチを支えてワールドカップイングランド大会で歴史的3勝を挙げている。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――この日の理事会で話し合われた、2020年度予算の概要について。

「再度、評議委員会(3月末実施予定)で審議されなければいけないので、あくまでもラグビー協会の理事会でいま通ったというだけの話でありますが、総額規模で言えば、2020年度は2019年度よりも約10億円大きい支出予算となっています。あくまで理事会で出した金額で言えば、約71億5000万円が2020年度の支出予算です。(同年度の)収入は71億9000万。(収入見込みは前年度より)20億、増やしている。(根拠は)いまは色んな状況があるので不透明なところはありますけど、トップリーグを含めた国内での試合、それ以外のスポンサーシップなどによる収入です」

――日本代表の強化予算について。

「2019年度の(前カテゴリーの)代表強化での支出予算は約27億。男子15人制の話をすれば、通常、ワールドカップ年度が大きくなりますが、2020年はワールドカップ前年の2018年よりも1億円以上多い金額で予算をつけております」

ここではあえて、2018年と2020年を比較する形で規模を説明している。ただし2019年に比べたら、「約2億円減」とのことである。

 現在、日本代表の強化責任者は藤井雄一郎強化委員長だ。2016年就任のジェイミー・ジョセフヘッドコーチと親交が深いことで知られる。藤井強化委員長はかねて、代表強化とラグビー人気との関連性を鑑み潤沢な予算を求めてきた。

 改めて、岩渕専務理事との問答を振り返る。

――男子15人制日本代表の強化予算を決める過程では、藤井強化委員長との折衝もあったかと思われます。決定までのプロセスは。

「ワールドカップイヤーは通常、前年よりも大きな金額になります。当然、ワールドカップの成果を持続させるには代表強化は重要。ワールドカップ年度よりは多少(金額は)減っていますが、活動の日数等々を鑑みて、2018年度のベースと比べると約1億円増で決めました。ラグビー協会としても、代表の強化がとにかく優先というスタンスで予算配分を決めました。(2020年度は)10億5千万円。18年度は9億3千万円でした」

――冒頭の収入見込みに影響するのは、国内代表戦の収入。6月以降のウェールズ代表戦、イングランド代表戦の開催可否については。新型コロナウイルス感染拡大を起因に、先方の慎重論も報じられているが。

「とてもたくさん話しております。特に我々今回はウェールズ、イングランドを迎える立場です。ワールドカップでジャージィを着て応援していただいた皆さんの前で日本代表が戦える久々の機会ですし、我々の財政的にも大きなものになります。両国とは何とかやる方向で話はしています。一方で世界中が大変な状況。1日、1日状況は変わっています。大前提としては選手、スタッフ、関係者の皆様、応援いただける皆様の健康を第一に考えて判断をする。頻繁にコンタクトを取りながら状況を確認しているところです。色んな状況を判断しながら…としか言えないですが、健康を第一に考えながら、できる方向があるのならしていきたいと、お互いに話をしています」

 強化予算決定のプロセスにおいても、6月以降の代表戦開催への議論においても、是々非々の議論があるとうかがえる。

 理事会では、現在「コンプライアンス教育」の徹底のため中断されているトップリーグにも話題が及んだ。別途、詳報するが、同リーグの太田治チェアマンは「(中断の背景には)コロナの問題も否定できない」と、当初の「コロナとは切り離して決めた」という発言を修正。再開のめどについて聞かれれば協会側は「政府の方針」を根拠にするとした。

 これらの事象を踏まえて考えさせられるのは、「スポーツの開催是非の背景に、その競技団体の主体性がどこまで関係しているか」という点である。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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