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ラグビー日本代表WTB藤田(早大4年)、エネルギッシュなプレーで「W杯行き」をアピール!

斉藤健仁スポーツライター
後半から出場もエネルギッシュなプレーを見せた藤田(撮影 斉藤健仁)

5月2日、ラグビー日本代表が香港代表に41-0で快勝し、今シーズンのホーム初戦を白星で飾った。

◇「W杯に出たい」という気概

試合内容も良かった(7トライで香港を41-0で撃破!「W杯仕様」の「スマートなラグビー」とは?)が、初戦の韓国代表戦ではほとんど皆無だった、選手たちから「ワールドカップ(W杯)に出たい!」という気概が感じられた。

FWでは初の先発出場となったFL村田毅(NEC)が接点で激しいプレーを繰り返し、2012年6月以来のキャップ獲得となったHO有田隆平(コカ・コーラ)、昨年5月以来の代表戦となったPR長江有祐(豊田自動織機)の2人も途中出場ながら存在感を示した。またBKではスーパーラグビーのウェスタン・フォース(オーストラリア)挑戦中から一時帰国し先発したWTB山田章仁(パナソニック)は2トライを挙げて「今日は良いアピールができた」。

そんな中で、前半39分に途中出場し、一番、エネルギッシュにプレーしてチームに勢いをもたらしたのはWTB藤田慶和(早稲田大4年)だった。

◇44名からW杯に行けるのは31名!

現在、日本代表スコッドは44名。そのうち、W杯に行けるのは31名(8月末に発表予定)。日本代表を率いて4年目となるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)の構想ではFWが19人だとすると第一列は8~9人、LOが4人、バックローが6~7人だ。BKは12人だとすると「WTBは現在6人いるが3枠」とジョーンズHCは公言し、残りのBKはSH3人、SO2人、CTB3人、FB1人くらいになると予想する。

スーパーラグビーのワラタス(オーストラリア)挑戦中の松島幸太朗(サントリー)は、バックスであればSH以外はすべてこなすことができるユーティリティーな選手であり、本来WTBのカーン・ヘスケス(宗像サニックス)はCTBに挑戦中で、実際に良い動きを見せている。

他にも香港戦で2トライを挙げた山田は、近年のプレーぶりを鑑みれば、ケガさえなければ、ほぼ当確と言っていいだろう。現在、ウェールズ代表も指導するスポーツサイエンスコンサルタントのフラン・ボッシュ氏の下、ランニングフォーム改造中のWTB福岡堅樹(筑波大4年)は、2013年秋のスコットランド戦で2トライを挙げているように、絶対的なスピードを誇るエースランナーである。

そして藤田は、昨年6月に日本代表戦で右肩を負傷し、4月18日の韓国戦では10ヶ月ぶりに桜のジャージーに袖を通した。だが、決して満足できるような内容ではなかった。それは本人も十分承知だった。「韓国戦はボールを持っていないときの動きは悪くなかったんですが、持っている時の動きが良くなかった」(藤田)

4月の宮崎合宿でジョーンズHCとの1対1のミーティングでも「スピードとタックルを伸ばしてほしい」(藤田)と言われたという。1対1のタックルはコーチらと改善を図り、韓国戦ではしっかりと守っていた。ただ、韓国戦ではボールを持って走ったときは、相手ディフェンスを抜き去ることもできず、タックルを食らってすぐに倒れてしまった。

◇藤田は途中出場ながら積極的なプレーを見せた!

迎えた5月2日の香港戦。藤田は「14」番を、韓国戦で初キャップ&初トライを獲得した1つ年下のWTB松井千士(同志社大3年)に譲った。「しょうがないですけど、少し悔しかった。プレーでアピールできればと思っていました」。藤田は、「23」番でも決して腐らず、戦況を見据えつつもしっかりウォームアップして試合に備えていた。

「良い入りができました」という後半は、藤田は韓国戦とは見違えるようなプレーで観客を沸かせた。「エディー(ジョーンズHC)さんにはチームにエナジーを与えてくれと言われていたので、少しはできたかなと思います」と言うように、ボールキャリアだったり、しっかりキックをチェイスしたりとグラウンドを駆け回り、後半32分にはトライも挙げて、しっかり結果を残した。

試合後、藤田は「前の試合は、悔しかったので、少しそれが晴らせたのでよかったです。今日の試合はボールを持ったときの動きも少し良かったと思います。トップスピードはまだまだですが、GPSでは加速は数字が出てきました。ボッシュさんのトレーニングをしていて、成長しているという感覚があります」と笑顔で振り返った。

また、大外でボールを持ったとき相手を抜こうとせず、まっすぐ裏に蹴ってチェイスしたシーンに関しては、W杯の初戦となる南アフリカ戦を「想定」してのプレー選択だった。「南アフリカ戦は外で回してトライが難しいので、キックで裏を狙いました。タッチに出させないで仕留めることが一番ですが、相手にタッチを蹴ってラインアウトからジャパンの攻めができて良かった」と冷静に分析していた。

そんな藤田をジョーンズHCはWTB山田とともに、手放しで褒め称えた。「藤田は非常に良いプレーをしました。毎回リザーブからのスタートの方がいいのかな? 本当に良くて、エネルギッシュでした。山田も自分からボールをもらいに行って、強く、スペースを見極めていた。2人はポジティブなプレーをしました」

◇代表デビューを果たした福岡で再び先発を狙う!

ラグビー日本代表は5月9日、福岡・レベルファイブスタジアムに韓国代表を迎え撃つ。藤田にとって福岡は高校時代(東福岡)を過ごした場所だけでなく、2012年4月に代表初キャップ&6トライを獲得し衝撃的なデビューを果たした地でもある。

時折、ホッとした表情も見せていた藤田は「レギュラー争いも激しいですが、またメンバーに入れるように成長したい。福岡は代表デビュー戦の試合をした会場だけでなく、高校時代を過ごしたので良い思い出もありますし、いろんな人が見に来てくれると言っているので、良い準備をしてしっかり試合をしたい。すごく楽しみです!」と前を向いた。

31名のW杯スコッドに選ばれるだけでなく、世界のラグビーファンが注目するW杯で躍動し、目標とするスーパーラグビーで活躍するために――藤田の挑戦は続いていく。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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