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新生エディー・ジャパン始動!ラグビー日本代表37名(FW23名、BK14名)を考察する【BK編】

斉藤健仁スポーツライター
オールブラックス戦でトライを挙げる山沢。FBでの選出となった(撮影:斉藤健仁)

5月30日、1月にラグビー日本代表の指揮官に再任した世界的名将エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が6月6日から宮崎で始まっている、イングランド代表戦(6月22日、国立競技場)に向けた合宿に参加する日本代表37名(FW23名、BK14名)を発表した(※追記 6月15日現在、体調不良などで3人が離脱、BKが3名追加された)。FW、BKそれぞれについて考察する。まずはBKから見ていきたい。 

★FW編はこちら→【FW編】

◇「ハングリー精神を持った選手を選んだ」

まず5月30日の発表からLOの小瀧尚弘(神戸スティーラーズ)と桑野詠真(静岡ブルーレヴズ)のFW2人が追加されて、現在37名となった。それでも2023年ワールドカップ(W杯)スコッドの平均年齢は29歳だったが、25.6歳に若返った。

まず1月に就任してからリーグワンだけでなく、高校、大学、U20日本代表の試合を視察したジョーンズHCは「2027年W杯でトップ4入りするためにもチームを再構築していかないといけない。私が望んでいる選手はハングリー精神を持ち、向上したいと思っている選手たちです。W杯でトップ4入りするためには、本当にハングリー精神を持って毎日1分でも無駄にしたくない、改善したいと思っている選手が必要になってきます。そういう選手を選ぶことができれば夢が叶うチャンスが生まれるのかなと思います

また2023年W杯の日本代表は参加しているチームの中でも年齢が上だったので、若い選手をワールドカップに向けて自信を持って育てていきたい」と語気を強めた。

記者会見で指揮官が明かしたように2023年W杯に出場した埼玉ワイルドナイツのPRクレイグ・ミラー、PRヴァルアサエリ愛、LO/NO8ジャック・コーネルセンの3人は休養のため、さらにW杯3大会連続出場したFB松島幸太朗(東京サンゴリアス)、2023年W杯組の前キャプテンNO8姫野和樹、SH福田健太(ともにトヨタヴェルブリッツ)の3人はケガのため選出されなかったという。

◇注目されたハーフ団の人選は?

まずBKのメンバー14人から見ていきたい。現在のところバックアップメンバーから追加招集はされていない。大学生こそ選出されなかったが、14人中7人が2023年W杯スコッドというバランスが取れたメンバーとなった。

個人的に最も注目したのはジョーンズHCが信条とするアタッキングラグビーである「超速ラグビー」をリードするSH、SOのハーフ団だった。なおジョーンズHCは2012年から4年間指揮したときは、ハーフ団を最初から最後までほぼ固定して起用していた。

SHは納得の人選だった。2023年W杯を経験して成長の跡を見せたSH齋藤直人(26歳、元・東京サンゴリアス)、そして今季のリーグワンで出色の出来だったSH小山大輝(29歳、埼玉ワイルドナイツ)&SH藤原忍(25歳、スピアーズ船橋・東京ベイ)の3人だった。

過去2年のリーグワンの試合を見て、小山は一貫性を持ってプレーしていた。パスの正確性も高いし、キックもでき、ディフェンスもアグレッシブだ。藤原は若くて、まだまだ学んでいるところですが、スピードがあり、パスの一貫性がないところは改善してもらいたいが、私が求めているスパークするような(ひらめきのある)アタックに適している」(ジョーンズHC)

司令塔のSOはW杯を2大会経験したSO松田力也(30歳、元・埼玉ワイルドナイツ)と、2023年W杯に出場したSO李承信(23歳、神戸スティーラーズ)と経験ある選手、そして若手の有望株と2人を選出した。ともにパス、キック、そしてランナーとしても長けている。ゲームコントロールでは経験のある松田に軍配が上がるだろう。

アタックセンスを評価された藤原。SHの中では最年少の25歳だ(撮影:斉藤健仁)
アタックセンスを評価された藤原。SHの中では最年少の25歳だ(撮影:斉藤健仁)

◇CTBには13番タイプが揃ったが……

続いてCTBを見てみるとCTBディラン・ライリー(埼玉ワイルドナイツ)、WTBでもプレー可能な長田智希(埼玉ワイルドナイツ)、ジェイミー・ジャパンではWTB起用だったシオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ)と2023年W杯組が3人、そしてWTBでもプレーできるノンキャップの尾崎泰雅(東京サンゴリアス)も入った。

ボールキャリーが得意なアウトサイドCTBタイプが4人並び、12番(=インサイドCTB)は誰がやるのか?という疑問が少々残る。ライリーや長田がカバーするのか、はたまた10番の2人のいずれかがポジションを下げるという選択肢もあるかもしれない。練習や試合でのジョーンズHCの起用を楽しみにしたい。

※追記 6月9日に12番を主戦場としてきたCTBニコラス・マクカラン(元・ブレイブルーパス東京)が追加招集された。

続いてWTB、FBのバックスリーだ。ジョーンズHCの中で左WTB(11番)はパワー系、右WTB(14番)はスピード系と分けての選出となった。パワー系が2023年W杯でも躍動したWTBジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス東京)とWTBヴィリアメ・ツイドラキ(トヨタヴェルブリッツ)、スピード系はWTB 髙橋汰地(トヨタヴェルブリッツ)、WTB根塚洸雅(スピアーズ船橋・東京ベイ)ということになりそうだ。

菅平合宿の紅白戦でWTBツイドラキはハットトリック、途中合流で参加したWTB根塚もランで魅せていたこともあり、合宿での練習、そして実践でアピールしての選出となった。なお髙橋はFBもカバーする可能性があるといい、CTBフィフィタがもしかしたらジェイミー・ジャパン同様に11番で起用することもあるかもしれない。

◇注目の山沢はSOではなくFBでの選出

最後にFBだ。12年ほど前、高校生ながら合宿に10番として招集した山沢拓也(埼玉ワイルドナイツ)をジョーンズHCはワイルドナイツでの起用同様にFBとして選出した。

指揮官は「山沢は17~19歳くらいの頃、10番をしていて、ワールドクラスになれるようなポテンシャルがあったと思う。ただ、ケガをしたり、自分にかけられた期待に苦しんだ部分もあったりしたと思うが、復帰して15番として飛躍をするようになり、彼がファーストレシーバーもできることは、アタックのオプションを新たに設けることができる。今でもスキルは素晴らしい選手です」と、カウンターやターンオーバーからのラン、キックでチャンスを演出することに期待を寄せた。

また「(成長を)加速させたい。最初のテストマッチに出るかもしれない」と(ジョーンズHC)という、トレーニングスコッドで参加となった若手の有望株のFB矢崎由高(早稲田大学2年)にも指揮官は言及した。

矢崎はFBのスペシャリストだと思っていて、センスも素晴らしいですし、ピッチ上のコミュニケーションもものすごく素晴らしい。スピードもあって勇気もあります。高校時代に10番もやっていたということなので、もしかしたら10番になれるような可能性もあるかもしれない」と高く評価した。

いずれにせよBKにはスキル、スピードがあり、「超速ラグビー」を体現しつつトライを取り切ることができる、ランの得意な選手が揃ったと言えよう。

◆日本代表:BK15名 (ポジション/名前/キャップ数)

☆2023年W杯スコッド ※菅平合宿参加メンバー

SH小山大輝(埼玉パナソニックワイルドナイツ/0)

SH齋藤直人(元・東京サントリーサンゴリアス/19)☆

SH藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/0)※

SO松田力也(元・埼玉パナソニックワイルドナイツ/37)☆

SO李承信(コベルコ神戸スティーラーズ/11)☆※

CTB尾崎泰雅(東京サントリーサンゴリアス/0)※※※ 6月10日、ケガのため合宿離脱

CTBシオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ/13)☆※※※※※ 6月14日、ケガのため合宿離脱

CTBディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ/18)☆

CTB/WTB長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ/7)☆

WTB/FB 髙橋汰地(トヨタヴェルブリッツ/1)※

WTB ヴィリアメ・ツイドラキ(トヨタヴェルブリッツ/0)※

WTB ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京/8)☆

WTB 根塚洸雅(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/1)※

FB山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ/6)

※※6月9日 追加招集

CTBニコラス・マクカラン(元・ブレイブルーパス東京)

※※※※6月13日 追加招集

SO/FB石田一貴(三菱重工相模原ダイナボアーズ)※

※※※※※※ 6月15日追加招集

CTBサミソニ・トゥア (浦安D-Rocks)

◆トレーニングメンバー2人

SO本橋尭也(帝京大学2年)

FB矢崎由高(早稲田大学2年)

◆バックアップメンバー

(※ケガなどがあったらバックアップメンバーから招集される)

SH飯沼蓮(浦安D-Rocks)

SH土永旭(京都産業大学4年)※

SO伊藤耕太郎(リコーブラックラムズ東京)

SO奥村翔(静岡ブルーレヴズ)※

SO高本幹也(東京サントリーサンゴリアス)

CTB 池田悠希(リコーブラックラムズ東京)

CTBジョニー・ファアウリ (元・静岡ブルーレヴズ) ※

CTBチャーリー・ローレンス (元・トヨタヴェルブリッツ)※

WTB ネタ二・ヴァカヤリア(リコーブラックラムズ東京)

WTB 高本とむ(リコーブラックラムズ東京)

WTB マロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ)※

WTB 濱野隼大(コベルコ神戸スティーラーズ)※

WTB 松永貫汰(コベルコ神戸スティーラーズ)※

WTB 山下楽平(コベルコ神戸スティーラーズ)※

FB野口竜司 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)

FB小野澤謙真 (慶應義塾大学1年)※

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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