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新生エディー・ジャパン始動!ラグビー日本代表37名(FW23名、BK14名)を考察する【FW編】

斉藤健仁スポーツライター
FWは大学生が2人選出された。写真は早大主将のHO佐藤(撮影:斉藤健仁)

5月30日、1月にラグビー日本代表の指揮官に再任した世界的名将エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が6月6日から宮崎で始まった、イングランド代表戦(6月22日、国立競技場)に向けた合宿に参加する日本代表37名(FW23名、BK14名)を発表。FW、BKそれぞれについて考察する。BKに続いてFWのメンバーを見ていきたい。

★BK編はこちら→【BK編】

◇PRは6人全員がW杯未経験者となった

BK14人に対して、追加招集された選手も含めてFWは23名となった。23人中、8人しか2023年ワールドカップ(W杯)組がおらず、8人が菅平のトレーニングキャンプに参加していた選手で、大学生2人を含む9人がノンキャップとなった。

まずはスクラムを最前列で支えるPRから見ていきたい。PRは6人のうちW杯経験者が0人、ノンキャップが4人というフレッシュなメンバーとなった。もしかしたら、エディーカラーが一番出たポジションかもしれない。

左PR(1番)は大学生時代から日本代表を経験しているPR三浦昌悟(トヨタヴェルブリッツ)、今季3番から転向したPR茂原隆由(静岡ブルーレヴズ)、そして2シーズン連続トップ4の横浜キヤノンイーグルスを支えてきたPR岡部崇人が選ばれた。

右PR(3番)は3キャップのPR竹内柊平(浦安D-Rocks)、明治大学を卒業したばかりのPR為房慶次朗(スピアーズ船橋・東京ベイ)、そして帝京大2年生のPR森山飛翔と若いメンバーとなった。この6人に共通しているのはボールキャリーに長けているということだ。

PR為房は今季、アーリーエントリーで5試合に出場し3トライを挙げた。PR森山は京都成章時代、高校1年から決勝進出に貢献し優秀選手賞に選ばれた逸材で、菅平合宿の紅白戦でもボールキャリーでトライをアシストした。

ジョーンズHCも「現代のラグビーでは、(プロップは)スクラム、タックル、そしてボールキャリーもできないといけないというところでスピアーズの1年目の為房、帝京大2年の森山を選んだ。森山は本当に素晴らしいボールキャリーで才能があります。タイトヘッドとしてはしっかりとスクラムを組めないといけない」と説明した。

◇「佐藤はHO堀江が若かった頃を思い出す」

続いてはセットプレーをリードするHOだ。W杯に2大会連続出場し、日本代表でキャプテン経験のあるHO坂手淳史(30歳、埼玉ワイルドナイツ)、そしてブレイブルーパス東京の副キャプテンとして優勝に大きく貢献したHO原田衛(25歳)、そして大学2年時に将来を見据えてNO8から転向し、早稲田大学のキャプテンを務めるHO佐藤健次(4年、21歳)の3人だ。

HOは経験値、リーダーシップのある坂手、リーグワンで「ベスト15」に選ばれた勢いのある原田、そして若手の有望株である佐藤とバランスのいい3人となった。

春からジュニア・ジャパンなど積極的に代表活動に参加してきた佐藤は「イングランド代表戦に出たい!」と公言している。

ジョーンズHCは「佐藤は本当に、HO堀江(翔太)が若かった頃を思い出します。8番もやっていたということもあってフットワークもいいですし、ゲームがしっかりと見えて理解もできています。テストマッチのHOとしてやはりスクラムをしっかり組めるようになること、スローイングをしっかりできるようになること(が必要です)。

いろいろとまだ不足している部分はありますけども、(PR森山も含めて大学生の)彼らを呼ぶことによって、ファーストトラックする、つまり、加速して育てるように促していくということをやっていきたい。なぜかというと4年はあっという間に過ぎてしまうからです」と大いに期待を寄せた。

◇5大会目のW杯を目指すリーチはLOでの起用を示唆

続いてLOだ。21歳でW杯に出場し、ブレイブルーパス東京の優勝に寄与したLOワーナー・ディアンズ、さらに今季、リーグワンで活躍したLOサナイラ・ワクァ(花園ライナーズ)の2人は、2mを超える身長もあり、ラインアウトでの活躍はもちろん、ボールキャリーでも大いに存在感を示すはずだ。

LO桑野詠真(静岡ブルーレヴズ)はセットプレーの強い静岡で、この2年間、一貫性のあるプレーを続けていた。LO小瀧尚弘(神戸スティーラーズ)は、今季、リーグワンでは思ったようなプレーができなかったものの、10年前にエディー・ジャパンに招集された経験を持つ。2人とも菅平合宿を経ての追加招集となった。

W杯に出場した若手のバックファイブである下川甲嗣(東京サンゴリアス)は、チームではFLで出場を続けており、W杯を経て、リーグワンではよりフィジカルなプレーを見せていた。早稲田大時代はLOでプレーしていたこともあり、2023年W杯ではFLだけでなく、LOのカバーとしても重用された。もしかしたらエディー・ジャパンでも同様のことがあるかもしれない。

また5大会目のW杯出場を目指すリーチ マイケル(ブレイブルーパス東京)に関して、指揮官は「(リーチは)リーグワンの決勝では最高な選手で、影響力がある選手だなと思って見ていました。ボールキャリーもタックルも素晴らしかった。リーダーシップもファーストクラスです。日本代表において彼の役割は、彼がベスト選手になることと、おそらく背番号は(NO8)半分の背番号(=4番)になるかなと思います。

シニアの選手として私は彼(リーチ)に頼りたいと思います。いろいろと彼からもアドバイスをいただきたいです。彼は日本代表がどうやって勝っていくかっていうことをわかっている選手なので、本当に重要な選手です」と、LOでの起用を示唆しつつ、新生エディー・ジャパンにおいても大事な選手であることを強調した。

指揮官にLOとしての起用を示唆された、5大会連続W杯出場を狙うリーチ(撮影:斉藤健仁)
指揮官にLOとしての起用を示唆された、5大会連続W杯出場を狙うリーチ(撮影:斉藤健仁)

◇FLは2023年W杯組を4人招集

バックローは、今季のリーグワンを見ていても活躍が著しく、2023年W杯組でもあるFLベン・ガンター(埼玉ワイルドナイツ)、FL福井翔大(埼玉ワイルドナイツ)、FLサウマキ アマナキ(神戸スティーラーズ)、FLファカタヴァ アマト(ブラックラムズ東京)の4人が選出された。NO8も含めて、どういった組み合わせで起用するのか楽しみにしたい。

さらにノンキャップで唯一名を連ねたのが若手のFL山本凱(東京サンゴリアス)だった。慶應義塾高校、大学時代から強烈なタックルで名を馳せており、ジャッカルも上手い。タックル、ジャッカルの専門職として、1人招集されたと言えよう。LOに2人、身長2mを超える選手を揃えることができれば、オープンサイドFLにジャッカル専門の選手を起用する可能性も出てくるかもしれない。

最後はNO8だ。現在、唯一の海外組であるテビタ・タタフ(ボルドー)、そして ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、新人賞次点だった若手のティエナン・コストリー(神戸スティーラーズ)の3人が選ばれた。強烈なボールキャリーが武器のNO8タタフはやはり、インパクトを残したい場面での起用となるか。マキシとコストリーの2人は機動力、ボールキャリーもタックルも強い、万能タイプの選手だ。

いずれにせよ6月22日のイングランド代表戦に向けて、短期間で、スクラム、ラインアウトといったセットプレーの強化は欠かせない。イングランド、オーストラリアでジョーンズHCとともに指導してきたニール・ハットリーコーチをはじめ、世界的な選手だった元ニュージーランド代表PRのオーウェン・フランクス、元南アフリカ代表LOだったヴィクター・マットフィールドの2人の手腕に期待したい。

◆日本代表FW:23名 (ポジション/名前/キャップ数)

☆2023年W杯スコッド ※菅平合宿参加メンバー

PR三浦昌悟(トヨタヴェルブリッツ/9)※

PR茂原隆由(静岡ブルーレヴズ/0)※

PR岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス/0)

PR竹内柊平(浦安D-Rocks/3)

PR為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/0)※

PR森山飛翔(帝京大学2年/0)※

HO坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ/41)☆

HO原田衛(東芝ブレイブルーパス東京/0)

HO佐藤健次(早稲田大学4年/0)※

LO小瀧尚弘(神戸スティーラーズ/11キャップ)※

LO桑野詠真(静岡ブルーレヴズ/0キャップ)※

LOワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京/11)☆

LOサナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ/2)

FL/LO リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京/84)☆

FL/LO 下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス/5)☆

FLベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ/8)☆ ※※6/10 コンディション不良のため合宿離脱

FLサウマキ アマナキ(コベルコ神戸スティーラーズ/3)☆

FLファカタヴァ アマト(リコーブラックラムズ東京/7)☆

FL福井翔大(埼玉パナソニックワイルドナイツ/3)☆

FL山本凱(東京サントリーサンゴリアス/0)

NO8 テビタ・タタフ(ボルドー/16)

NO8 ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/5)※

NO8 ティエナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ/0)※

◆トレーニングメンバー

LO本橋拓馬(帝京大学4年)※

◆バックアップメンバー

(※ケガなどがあったらバックアップメンバーから招集される)

PR淺岡俊亮(トヨタヴェルブリッツ)※

PR眞壁照男(東芝ブレイブルーパス東京)

PR小鍛治悠太(東芝ブレイブルーパス東京)

PR小林賢太(東京サントリーサンゴリアス)

PR森川由起乙(東京サントリーサンゴリアス)

HO堀越康介(東京サントリーサンゴリアス)☆

HO松岡賢太(コベルコ神戸スティーラーズ)※

LO秋山大地(トヨタヴェルブリッツ)※

LO田島貫太郎(明治大学4年)※

FL青木恵斗(帝京大学4年)※

FL福田大和(帝京大学1年)※

NO8 シオネ・ブナ(静岡ブルーレヴズ)※

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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