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「新型ウイルス肺炎」への日韓両国の対応を比較(第2弾)

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
新型ウイルス肺炎が世界で拡大「震源地」の中国(写真:ロイター/アフロ)

 中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(新型肺炎)を予防し、拡大を防ぐためにも同じような被害を被っている、中国の隣国である日韓両国が情報を密に交換し、協力することが大事だ。韓国の12人目の感染者が日本で感染者と接触した後、韓国に入国していたことはその逆も考えられるだけに情報交換は何よりも望まれる。そこで前回(30日)に続いて日韓の現状を比較してみた。

 ▲感染者の数

 中国の武漢から発症した新型コロナウイルスによる感染者は2月3日午前10時現在、日本人20人、韓国人15人。前回(1月30日)の時点よりも日本人は12人、韓国人は11人増えた。

 ※アジア諸国の発生状況

 中国17,205人(死者361人)、タイ19人、シンガポール16人、香港13人、豪州12人、台湾10人、マレーシア8人、マカオ7人、ベトナム6人、カンボジア1人、フィリピン1人、スリランカ1人、インド1人

 ▲最初の感染者

 日本で最初の感染者が確認されたのが1月16日。30代の男性で、6日に武漢から帰国し、9日に39度の高熱が出たため10日から入院していた。

 韓国は4日後の1月20日。40代の中国人女性で、19日に武漢から帰国した際に仁川空港の入国エリアで高熱などの症状を訴えたことで確認が早かった。

 ※韓国のケース

 1月24日 武漢から22日に帰国した50代の韓国人男性(2人目)

 1月26日 武漢から20日に帰国した50代の韓国人男性(3人目)

 1月27日 武漢から20日に帰国した50代の韓国人男性(4人目)

 1月30日 武漢から24日に帰国した30代の韓国人男性(5人目)

       ※3人目と国内で会食した50代の韓国人男性(6人目)

 1月31日 武漢から青島を経由し、23日に入国した20代の韓国人男性(7人目)

       武漢から23日に帰国した60代の韓国人女性(8人目)

       ※5人目の感染者の知人(9人目)

       ※6人目と22日に会食した妻と息子(10人目と11人目)

 2月1日  日本から19日に入国した40代の中国人男性(12人目)

 2月2日  第一便(30日)で武漢から帰国した20代の韓国人男性(13人目)

       ※12人目の感染者の家族である40代の中国人女性(14人目)

       武漢から20日に帰国した40代の韓国人男性(15人目)

 ▲二次感染者

 日本では武漢からのツアー客を載せた奈良のバス運転手が1月28日に、大阪のバスガイドが1月29日に二次感染していることが確認された。

 韓国は3人で、最初の二次感染者は1月30日に確認。武漢を訪れていた一次感染者とレストランで接触したことで感染。

 

 ▲三次感染者

 日本は千葉県の20代の女性バスガイドが1月31日に三次感染の疑いが取り沙汰されている。1月28日に二次感染が確認された奈良県の60代の男性バス運転手からの感染とみられている。

 韓国はすでに2人。二次感染者が22日夕、妻と息子と一緒に夕食をして感染させていたことで30日に確定例と判定された。この家族には中国渡航歴はなかった。

 ▲武漢からの帰国者

 日本は12月29日に第一便の206人、翌30日に第二便の210人、31日に第3便の149人。総勢565人をチャーター便で無事帰国させている。

 韓国は日本よりも129人多い694人(31日に368人、2月1日に326人)。

 搭乗希望者は722人だったが、中国国籍者や中国の出国検疫チェックや交通規制によって出発時間までに空港に現れず、搭乗できなかった人が20数人いた。

 ▲帰国できず、武漢や湖北省に滞在している人数

 日本は約140人、韓国は125人(武漢滞在者は85人)

 ▲チャーター機の費用負担

 日本は当初よりチャーター便の搭乗費用として一人8万円を徴収することにしていたが、方針を転換し、国の負担となった。

 韓国は在外国民保護に向けたチャーター機派遣予算(10億ウォン)を拠出。その後、搭乗者から1人当たり成人30万ウォン(約2万8000円)、満2~11歳の子供は22万5000ウォン(約2万1000円)、満2歳未満の乳児は3万ウォン(約2800円)を2月28日までに支払わせ、費用の一部に充てる予定。

 ▲武漢からの帰国者の宿泊施設

 日韓共に2週間程度隔離される。

 日本は第一便が千葉県勝浦市のホテルへ。一部は東京・府中市の警察大学校の宿舎。第二便と第三便が埼玉県和光市にある国税庁の税務大学校和光校舎。第4便については第防衛庁が契約している民間フェリー「はくおう」(94部屋)を検討。宿泊費はすべて国が負担する。

 韓国の施設は2か所。1か所は忠清北道鎮川郡にある国家公務員人材開発院、もう1か所も忠清南道牙山にある公務員の研究施設。12歳未満は保護者と同室だが、12歳以上は一人一部屋。

 部屋からは許可なく、一歩も出られない。外部との面会や帰国者間の接触も制限される。食事は弁当で部屋の入口に置かれている。体操は部屋内で、洗濯は浴室で。部屋にはWiFi,新聞、テレビ、本などが備えてある。1日に2回発熱検査を実施。

 ▲施設のある地域住民の反応

 日本では帰国者を受け入れた千葉のホテルによる地元住民への受け入れ説明がなかったことから一部市民から批判が寄せられたが、総じてホテル側の英断を称賛している。

 韓国では鎮川郡の国家公務員人材開発院にて一部近隣住民による反対デモが起きたが、その後は「家族と国民、国家のため自ら進んで離隔を望んだ」として歓迎に転じ、反対デモは起きていない。

 ▲隔離拒否者に対する罰則

 日本は人権問題もあって本人の同意なくして強制的には隔離できないが、韓国は強制できる。隔離を拒否した場合は、逮捕も可能。対象者が隔離に応じない場合は「感染病予防及び管理に関する法」に従い、300万ウォン以下の罰金が科せられる。

 ▲中国への対応

 日本は2月2日、入国申請日前の14日間以内に中国湖北省を訪問、滞在歴のある全ての外国人と湖北省で発行した中国パスポートを所持する者の入国を拒否する措置を取ったほか、武漢への直行便も停止する。

 韓国も2月4日から湖北省を14日以内に訪問した外国人の入国を全面的に禁止する。韓国人の入国は許可されるが、2週間隔離される。また、中国での韓国入国ビザ発給を制限し、観光目的の短期ビザ発給も中断を検討。

 韓国人の観光目的の訪中禁止も検討。中国向けの航空機と船舶も縮小。済州島へのノービザ入国(30日間滞在)制度を一時中断。ちなみに昨年、査証免除制度で済州島を訪れた外国人のうち98%が中国人だった。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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