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なでしこリーグ最終節。上位の座を勝ち獲るのは、パルセイロ・レディースか、ベガルタレディースか。

松原渓スポーツジャーナリスト
長野Lは今季、平均3647人を動員した(C)松原渓

なでしこリーグは最終節を迎えた。

すでに日テレ・ベレーザが優勝を決めているが、5試合が同時開催されるこの最終節では、2位から4位の上位対決に注目が集まった。

順位決定の鍵となるのが、3位のAC長野パルセイロ・レディース(以下:長野L)と4位のベガルタ仙台レディース(以下:仙台L)の上位対決。

長野Lは引き分け以上で3位以上をキープできるが、仙台Lに敗れた場合は4位まで下がる。仙台Lは長野Lに勝てば、3位まで順位を上げることができる。

3位までは賞金が授与される(優勝賞金が1000万円。2位が500万円。3位が300万円)ため、その点も各チームにとってのモチベーションとなっている。

【両チームのここまで】

長野Lは前節、優勝を決めた首位の日テレ・ベレーザ(以下:ベレーザ)のホーム最終戦に乗り込んだ。攻め込まれる時間帯こそ長かったが、なでしこジャパンでも活躍する横山久美がハーフウェーライン前から3人を抜いてスーパーゴールを決め、ベレーザの11試合無失点記録を破った。後半には泊志穂の追加点で2−0と勝利。勢いを持って最終節に臨む。

女王・ベレーザ相手に完勝。大敗から修正したパルセイロ・レディースが見せた底力

出典:http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/20161017-00063329/

長野Lは今季、ホームの南長野運動公園総合球技場では1試合平均3500人を超すリーグ最多の平均観客数を動員し、スタンドをオレンジ色に染めた「長野劇場」で勝利を重ねてきた。その強さは数字にも表れており、ホームでの8試合は6勝2敗(アウェイは4勝4敗1分)と勝ち越している。

また、ドラマチックな展開が多く、勝つ時も派手だが、負ける時も派手。ここまでの17試合中、1試合で(対戦相手のゴールも含めて)5ゴール以上の打ち合いになった試合が9試合もある。

対する仙台Lは、前節、コノミヤ・スペランツァ大阪高槻に5−0と快勝。

リーグ戦は17試合を終えて10勝1分6敗だが、開幕から連敗が一度もなく、堅実に勝ち点を積み重ねてきた。一方、2連勝以上したことがなく、波に乗り切れないのは課題か。ホームに強いのは長野Lと同じで、今季はホームで7勝1分1敗、アウェイでは3勝5敗と負け越している。

サッカーの内容では、なでしこリーグ随一の高さとスピードとパワーを誇り、カウンターやセットプレーはすべてのチームにとって脅威となる。攻守を牽引するのは、なでしこジャパンでも活躍する、ボランチの川村優理。また、アメリカ代表選出経験もあるGKブリトニー・キャメロンが今季は完全移籍加入を果たしており、ハーフウェーラインを優に越える超ロングキックや、ダイナミックなセービングも見どころだ。

また、仙台Lは来季からは就職情報会社「マイナビ」との大型スポンサー契約締結が発表されており、その額は命名権料を含め、最大で年間約1億円。チーム強化への準備は整っており、そのためにも上位で終えて土台を固めておきたいところである。

両者の対決は、今季リーグ戦1回とカップ戦2回の計3回行われており、仙台Lが2勝1敗と勝ち越している。

両チームのスタメンは以下のようになった。

【長野L】11勝1分5敗(3位)

FW  10横山久美   14泊志穂 

MF 8大宮玲央奈     11齋藤あかね    

MF   6國澤志乃 28山崎円美

DF 18五嶋京香 15鈴木里奈 7坂本理保 3矢島由希

GK   21林崎(※)萌維

※崎の右側は「大」ではなく「立」

【仙台L】10勝1分6敗(4位)

FW  10浜田遥     17井上綾香

MF 23中野真奈美       8嘉数飛鳥

MF   4岸川奈津希 6川村優理

DF13佐々木繭 3市瀬菜々 26北原佳奈 5坂井優紀

GK   21ブリトニー・キャメロン

【試合レポート】

初冬の冷たい風がスタジアムを通り抜け、冷え込む中の試合となったが、会場となった南長野のスタジアムには4370人のサポーターが詰めかけ、試合を熱く盛り上げた。

前線からプレッシャーの掛け合いで主導権の奪い合いが続く中、先手を取ったのは長野L。

9分、横山のスルーパスに抜け出した泊がGKと1対1の決定機を迎えると、シュートは逆サイドのポストを叩いた。

長野Lの本田監督は、この試合で、FW山崎を國澤とのダブルボランチに抜擢。普段、1列目や2列目でプレーすることが多い山崎にとっては慣れないポジションでの起用となったが、危険な場面では最終ラインまで戻って献身的なスライディングを見せるなど、守備面でも輝きを見せた。仙台Lの攻守の起点となるボランチの川村と岸川が封じられた仙台Lは、少ない手数で縦に速い攻撃を狙うが、前線とのタイミングが合わない。

均衡が破れたのは、前半アディショナルタイム。相手陣内中央で得たFKを横山が蹴ると、ゴール前でCBの坂本がヘディングで後方にそらし、長野Lが先制に成功した。

このゴールには伏線があった。7月のカップ戦で対戦した際、長野Lは40m近くある超ロングFKを横山が決めて逆転勝ちをおさめている。そのため、この場面ではGKブリトニーが引いたポジションを取っていたのだ。(※詳細は試合後の本田監督のコメントを参照)

後半、仙台Lはサイド攻撃で押し込むと、52分には得点能力に優れたFW有町紗央里を投入し、流れを一気に引き寄せる。

すると57分、なでしこジャパンでも活躍するサイドバックの佐々木が魅せた。ハーフウェーラインからスピードに乗ったドリブルを開始。2人を交わしてペナルティエリアに侵入すると、鋭い切り返しから右足を振り抜き、シュートはニアサイドに決まった。 これで試合は振り出しになり、なおもペースをつかんだ仙台Lの時間帯が続く。

しかし、長野Lも体を張った守備で追加点を許さない。

終盤、長野Lはこの試合が100試合出場となるMF内山智代を投入。すると、81分、その内山が中央で相手の横パスをインターセプト。内山のパスを受けた泊がGKの股を抜く技ありのゴールを決め、再びリードを奪った。

このゴールで“長野劇場”の盛り上がりは最高潮に達した。ラスト10分間、仙台Lが猛攻を見せたが、最後までしのぎ切った長野Lが接戦をものにした。

今季、長野Lはホームゲーム9試合で32826名、平均して3647名の観客を動員。昇格1年目ながら、リスクを恐れず果敢に攻め込んでいくサッカーでなでしこリーグを盛り上げ、3位の成績でシーズンを終えた。

長野L 試合後コメント

仙台L 試合後コメント

試合の公式記録はこちら

日本女子サッカーリーグ公式サイトより)

他会場(1部)の結果は以下。

( )内は今季1部の最終順位。

・AC長野パルセイロ・レディース(3位)2−1ベガルタ仙台レディース(4位)

・浦和レッドダイヤモンズレディース(8位)0−2日テレ・ベレーザ(優勝)

・伊賀FCくノ一(6位)2−0 ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(7位)

・岡山湯郷Belle(10位)1−2 アルビレックス新潟レディース(5位) 

・コノミヤ・スペランツァ大阪高槻(9位) 0−4 INAC神戸レオネッサ(2位)

首位のベレーザはリーグ2連覇を達成。2位のINAC神戸レオネッサは6連勝で2位をキープし、シーズンを終えた。得点女王には、18試合で18ゴールを決めた日テレ・ベレーザの田中美南が自身初のタイトルを獲得した。

最下位となった湯郷は2部降格が決定。9位の高槻は、2部で9位となったちふれASエルフェン埼玉との入れ替え戦(※)に臨む。

(※)入れ替え戦はホーム&アウェイで行われ、高槻が勝った場合は残留。敗れた場合は2部に降格となる。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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