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緊急事態宣言下の新潟県直江津駅の現状

鳥塚亮大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長
直江津駅で身動きが取れなくなっているえちごトキめき鉄道の電車。

えちごトキめき鉄道が走る新潟県は新型コロナウイルス蔓延で国が発した緊急事態宣言の対象外の地域です。しかしながら、昨日から別の「緊急事態」に直面しておりますので、現状をレポートさせていただきます。

その緊急事態というのは日本海側を襲っている大雪です。

おととい(1月7日)の午後から降り始めた雪が2晩降り続き、3晩目になろうとする今も降り続いています。

新潟県内のJR各線は7日から運転を取りやめていて、北陸新幹線も今日9日の夕方から金沢―長野間で運休となります。

えちごトキめき鉄道でも、昨日の午前中まで何とか列車を走らせたものの、積雪量が増え続けたために昨日の午後から列車の運転ができなくなりました。

本日は始発から全列車運休、先ほど運輸会議で明日も全列車の運休が決定いたしました。

高速道路もマヒ状態ですから高速バスも運休。

JR各路線も明日の運休が決定していますので、県内は4日間ほぼ交通機関がマヒするという状況になってきていて、まさしく緊急事態なのでありますが、天気予報によればこの雪は明日の夕方まで降り続きそうですから、11日の運行にも支障が出る可能性が出てきています。(11日の運行に関しては明日の状況を見ての判断となります。)

YAHOO 天気予報 1月9日16時 新潟県上越地域
YAHOO 天気予報 1月9日16時 新潟県上越地域

鉄道会社はあまり画像を出さない傾向にありますし、列車が運休中ですからお客様のSNSへの投稿もほとんどありませんので、全国の皆様にこちらの状況がなかなか伝わりにくいと考えまして、オーサーである筆者として、本日の弊社の直江津駅構内の画像を投稿させていただこうと考えました。

本日1月9日の運転状況です。直江津駅を発着する列車は全列車始発から運休となっております。
本日1月9日の運転状況です。直江津駅を発着する列車は全列車始発から運休となっております。

昨日の夕方到着し、そのままホームに留置された列車です。一晩でこれだけ積もったことがわかります。
昨日の夕方到着し、そのままホームに留置された列車です。一晩でこれだけ積もったことがわかります。

同じ直江津駅ホームのおととい1月7日の状況です。
同じ直江津駅ホームのおととい1月7日の状況です。

昨日1月8日午後の直江津駅ホーム。この直後にポイント不転換が始まり、全区間で運休となりました。
昨日1月8日午後の直江津駅ホーム。この直後にポイント不転換が始まり、全区間で運休となりました。

そして本日15時の状況です。線路が完全に埋まりホームの高さ近くまで雪が積もりました。積雪量は1m近くあります。
そして本日15時の状況です。線路が完全に埋まりホームの高さ近くまで雪が積もりました。積雪量は1m近くあります。

車両基地もこの状態です。留置されている列車が埋まってきています。
車両基地もこの状態です。留置されている列車が埋まってきています。

雪がやんだ時間を見はからって職員が線路わきの職員専用通路の除雪をしています。
雪がやんだ時間を見はからって職員が線路わきの職員専用通路の除雪をしています。

14時ごろにわずかに晴れ間が見えましたが、またすぐに雪が降り始めました。
14時ごろにわずかに晴れ間が見えましたが、またすぐに雪が降り始めました。

今回の大雪の問題点は2つあります。

1つは、近年の温暖化でこのような大雪がめったに降らなくなってきていることです。

テレビのニュース等でも「観測史上初めて」とか「数十年ぶり」といった表現が見受けられますが、国鉄時代からの設備がすでに更新時期に来ている鉄道会社は、その更新時に重厚な除雪機械を廃止し、比較的軽量な除雪車両の導入を行っています。設備更新の投資ですから「数十年に一度」のために多額の費用をかけることはためらわれます。以前は強力な機関車のパワーで排雪するラッセル車でしたが、最近はモーターカーロータリーという軽量な除雪車量に置き換えが進んでいます。温暖化で雪が少ない年はそれでも良いのですが、めったにない今回のような大雪になると、なかなか機動力を発揮できないという状況になります。

もちろん、かつての国鉄時代のように人海戦術で雪かきをするなどということは不可能ですから、大雪そのものに対する備えが弱くなっているのです。

強力なディーゼル機関車を従えたラッセル車(あいの風とやま鉄道)
強力なディーゼル機関車を従えたラッセル車(あいの風とやま鉄道)

MR(モーターカーロータリー)と呼ばれる軽量な除雪車両。えちごトキめき鉄道
MR(モーターカーロータリー)と呼ばれる軽量な除雪車両。えちごトキめき鉄道

もう1つの問題点は、ふだん降雪量が少ない地域に突然ドカ雪が降るということです。

数年前に立ち往生した列車の中で乗客が一晩明かしたニュースがありましたが、あの路線は山間部ではなく新潟平野の大水田地帯でした。今回の大雪もふだん雪が多い山間部の妙高高原方面にはあまり降らず、平野を襲ったドカ雪です。

地元直江津の皆様方も、この雪を見て、「直江津にこれだけの雪が降るのは見たことがない。」と口を揃えておっしゃいます。

おそらく異常気象の一つの現象だと考えますが、ふだん雪が降らない地域に短時間に大雪が降ると、いくら雪国とは言え対応ができないというのが現実なのです。

17時現在の直江津駅前ロータリー。
17時現在の直江津駅前ロータリー。

現在もまだ雪が降り続いております。

止む気配はありません。

地元上越市では大雪災害対策本部を設置して対応に当たっています。

外出自粛も営業時間短縮も、個人の意思にかかわらずできない状況です。

つまり、ここ新潟県直江津では、この大雪がコロナ感染よりも切迫した緊急事態なのであります。

鉄道をご利用予定の皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、なにとぞご理解くださいますようお願い申しあげます。

運転状況の詳細につきましては、各社のホームページにてご確認ください。

※本文中に使用した写真はすべて筆者撮影です。

大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長、2024年6月、大井川鐵道社長。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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