ノート(80) 厚労省事件でもあった取調べに対する苦情の申入れと対応の実態
~回顧編(5)
勾留27日目(続)
氾濫するコピペ
取調べに対する苦情申入書をコピペで作るのは問題だ。ある弁護人も、事件、被疑者、担当検事や取調べ状況などが全く違うにもかかわらず、内容や文言はいつも同じだった。誤って検事名まで同じということまであった。過去の文書データをコピペしていることが明らかだった。
別の事件でも、共犯者のAにはX弁護人、BにはY弁護人が選任されていたが、XとYの苦情申入書を見比べると、フォントや行数、余白といった書式のみならず、主要な文言までもが同じだった。YはXの紹介で形だけ受任し、Xからメールなどで苦情申入書のデータを受け取り、これをプリントアウトし、署名・押印の上で提出したものと思われた。
手抜きが分かると、苦情申入書に記載されているようなやり取りが取調べの中で本当にあったのか疑わしくなるし、その弁護人の弁護活動全般に対する信頼度も落ちる。
ただ、法曹界におけるコピペ問題は、弁護人にとどまるものではない。検察官の中にも、事実関係に争いがないからということで、被疑者らの供述調書を作成する際、警察における供述調書の骨子部分を安易にコピペするような者が現にいた。
既に別の検察官が作成している共犯者の供述調書を参考にし、共謀場面におけるやり取りなどをコピペするような者もいた。それぞれの供述調書を並べて見ると、手抜きが一目瞭然だった。
裁判官の場合も、新たに判決書を作成する際、過去の同種事案に関する判決書を調べ、その内容をコピペしている、という点が問題視されている。
苦情申入れの意義
もっとも、接見や「被疑者ノート」の宅下げで被疑者から取調べ状況などをきちんと把握し、ゼロから正確かつ詳細に記載して作成した苦情申入書は価値が高い。
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