ノート(79) 取調べに対する苦情の申入れとその対応に関する苦慮
~回顧編(4)
勾留27日目(続)
取調べに対する苦情
「検事は密室の取調べ室で机を叩きながら被疑者を怒鳴り、脅しつけ、人格を破壊する罵詈雑言を浴びせたばかりか、土下座まで強要し、実際に土下座をさせ、被疑者に人として耐え難い屈辱感を与えた」
音楽著作権をめぐる詐欺事件の捜査は、主犯の“完落ち”で比較的順調に推移していたものの、途中で共犯者の弁護人から苦情申入れがあり、思わぬ形で冷水を浴びせられたこともあった。
検察では、取調べに関して苦情があると、申入書を添付した調査書を作成し、副部長ら直属の決裁官に上げなければならない。彼らが真偽を調査し、措置を検討した上で、上位の決裁官の決裁を受ける決まりだからだ。苦情の申入れをした弁護人に対しても、電話や面談により、可能な範囲で幹部から調査結果や対応策などを伝える。
クレームの内容が真実であり、重大なものであれば、直ちに取調べ検事を交代させ、捜査から外すといった措置をとるし、軽微なものであっても、担当検事に口頭注意を行うというのが建前だ。
この詐欺事件の捜査班員は、大半が翌年に着手する郵便不正・厚労省虚偽証明書事件における捜査班の主要メンバーと重なっていた。例えば、総括的な立場で裏付け班をまとめていたのは遠藤君、共犯者である芸能事務所社長の取調べを担当していたのは林谷君だった。
この記事は有料です。
元特捜部主任検事の被疑者ノートのバックナンバーをお申し込みください。
元特捜部主任検事の被疑者ノートのバックナンバー 2018年2月
税込1,100円(記事3本)
2018年2月号の有料記事一覧
※すでに購入済みの方はログインしてください。