【東京都中央区】漁師町の風情、皇族ゆかりの文化財、江戸グルメなど、旅好きなら訪れたい「佃島」の歩き方
銀座から約2キロという都心にありながら、
●風情ある街並み
●歴史的文化財
●江戸グルメ
●癒しスポット
が満喫できる場所、「佃島」。区内をくまなく散策した筆者が、「ここはもっと有名になるべき」と思った場所です。
1964年に佃大橋が完成するまでは、船でしか渡れなかった佃島。有楽町から地下鉄でたったの3駅なのに、銀座や日本橋とは異なる、昭和の香りが漂う佃島。アラフィフの筆者は、ここに来るとまるで子供時代にタイムスリップしたかのように感じます。そんな佃島は、区内でフラッと旅行気分を味わうのにピッタリ。旅好きなら、ぜひ訪れて欲しい場所です。
佃島の魅力を気軽に楽しむために、サクっと1時間で佃島の歴史地区を堪能できる「大人の散歩コース」をご紹介します!
≪佃島の歴史≫
佃島は、江戸時代初期の正保元年(1644年)に漁師たちが隅田川河口を埋め立てて住み着いたのが始まりです。漁師たちの出身が、摂津国(せっつのくに)の佃村(現在の大阪市西淀川区)だったため、「佃島」と名付けられました。中央区内では珍しく、震災や戦災を免れた地域のため、現在でも昔の面影が残っています。
≪月島駅からスタート≫
最寄り駅の有楽町線・大江戸線「月島駅」からスタートしましょう。佃島にアクセスしやすいのは、6番出口です。
≪中央区の小京都・佃堀≫
月島駅から徒歩3分。佃堀広場に行きましょう。
ここは、筆者が「中央区の小京都」と名付けている場所。古い住宅、桜の木、水面に映える赤い橋と、中央区随一の風情ある景色が見られます。奥にそびえる高層建築とのコントラストが、東京の過去と未来を象徴していて印象的。「中央区にこんな場所があったのか」と驚きますよ!
【佃堀広場】東京都中央区佃1-8-9
≪佃小橋を渡る≫
正面に見える、赤い「佃小橋」まで移動します。
橋までは、堀の右手の道を歩いてください。途中、「佃波除稲荷神社」の前を通ります。鳥居近くに置かれている「力石」は、昔この地区の漁師たちが石を持ち上げて「力比べ」に使っていたもの。力石は、区民有形民俗文化財に指定されています。
佃小橋は、1644年の佃島埋め立て当時に架けられたといわれている、歴史ある橋です。現在の橋は、昭和59年(1984年)に架け替えたものですが、朱色の欄干と擬宝珠が江戸の雰囲気を今に伝えてくれています。
橋の上から右手を眺めてみましょう。江戸時代は「漁師の村」だったという風情を感じませんか?この辺りは、今でも魚を取ることができます。特に「はぜ釣り」が有名で、週末には多くの釣り人の姿を見かけます。白い看板は、橋の下に後述の住吉神社の本祭りで使われる高さ約20メートルの柱が埋められていることを説明しています。川底に埋めるのは、空気に触れさせないことで、木の腐食を防ぐためです。なんとこの柱は1798年から200年以上もの間、3年に1度の本祭りのたびに掘り起こし、今日まで使い続けられています。
橋を渡った右手にある「日の出湯」は、区内に8軒しか残っていない、現役の銭湯。佃小橋周辺には、佃の歴史がギュっと詰まっています。
【佃小橋】東京都中央区佃1-8-1
≪千貫神輿と獅子頭に出会う≫
佃小橋を渡って直進、突き当りには「佃まちかど展示館」があります。「まちかど展示館」とは、中央区の歴史や伝統を知ってもらうために、文化資材を展示しているショーケースのことで、2024年4月現在、区内に29か所あります。
「佃まちかど展示館」でぜひ見て欲しいものは、大きな百貫神輿と二対の獅子頭。どちらも住吉神社の祭りで担がれるものです。「龍虎」と「黒駒」の名が付いている獅子頭は江戸時代の作品で、「中央区有形民俗文化財」に指定されています。昔、蔵に火が付いた時に、龍虎口から水が出たという言い伝えがあり、佃島が震災や戦災を逃れたのは龍虎のお陰と言われています。
次回の住吉神社の本祭りは2026年。堀から出された柱と、町内を練り歩く獅子頭を見てみたいですね。
【佃まちかど展示館】東京都中央区佃1-2
≪江戸時代から続く店で、江戸の味を知る≫
佃島発祥の「佃煮」は、東京の郷土料理として農林水産省のホームページに載っているほど有名な食べ物。佃煮は、江戸時代に漁師たちが、余った小魚を塩水で煮て保存食にしたことが始まりです。後に野田(千葉)から江戸に醤油が入ってくると、塩の代わりに醤油で煮るようになりました。「佃まちかど展示館」周辺には、佃煮の店が3軒あります。その中の1つ、「天安」は、江戸時代から187年続く老舗。創業当時から受け継がれている煮汁を使って、今もこの地で佃煮を作り続けています。大きなのれんと木製看板、朱塗りの佃煮入れ、昔ながらの座売りスタイルなど、内側も外側も古風な雰囲気に溢れています。
旨味が濃くて、素材の味が生きている天安佃煮は、筆者も大好物。何度もリピート購入しています。価格は100g400円前後からとお手頃。「うなぎの佃煮」は中央区観光協会の推奨土産品になっています。デパートなどに出店していないので、天安の佃煮が買えるのは佃島の店舗のみ(取り寄せは可能)。江戸の味覚をぜひご自宅で味わってみてくだい。
【天安本店】
住所:東京都中央区佃1-3-14
電話:03-3531-3457
営業時間:9:00~18:00
定休日:正月休み
≪住吉神社で皇族が関連する文化財を鑑賞≫
「佃まちかど展示館」の右手に見える赤い鳥居を右折すると「住吉神社」の参道です。
住吉神社は、佃島を埋め立てた江戸時代の漁師たちの出身地である大阪の住吉神社の分社です。漁村だった佃島らしく、海上安全、渡航安全の守護神として、今も熱く信仰されています。境内には、複数の文化財がありますが、注目して欲しいのは、石造りの鳥居に付いている扁額(へんがく:寺社名を記した看板のこと)です。木造の扁額が多い中、住吉神社のものは珍しい陶器製で、工芸品として高い価値があります。文字を書いたのは、明治時代の皇族、有栖川宮幟仁親王(ありすがわのみや たかひとしんのう)。ブルーの美しい陶扁額は、ぜひご自身の目で見た印象を味わって欲しいので、あえて裏から写した写真を載せますね。
【住吉神社】東京都中央区佃1-1-14
≪灯台元で一息≫
赤い鳥居まで戻ると、高台に灯台が見えます。この灯台は、かつて隅田川を行き来する船の安全航行のために築かれていた石川島灯台を復元したものです。
灯台に向かう前に、赤い鳥居前にある和モダンカフェ「ブリオン」でおやつをテイクアウト購入しましょう!ブリオンでは、砂糖の代わりにサトウキビのシロップを使った、体に優しいドリンクやスイーツを販売しています。
筆者のお気に入りは、緑茶にフレッシュレモンやシロップを加えた、オリジナル商品の「グリーンティレモネード」(700円)。
緑茶の風味、レモンの酸味、スッキリとしたサトウキビシロップの甘みのバランスが良く、これからの暑い季節にピッタリのさわやかなドリンクです。人気のソフトクリームも、ミルク感が濃くて美味しいですよ。
【美食腸食 ブリオン】
住所:東京都中央区佃1-2-1
電話:03-6204-9449
営業時間:水・木・金曜11:00~18:00/土・日、祝日10:00~18:00
定休日:月・火曜
【石川島灯台】東京都中央区佃1-11-4
灯台の下には、ベンチが並んでいます。隅田川を眺められるベンチに座って、休憩しましょう。ほんのりと潮の香りが含まれる風が、疲れを吹き飛ばしてくれます。水のある風景は、どこか人を癒してくれるものがあり、筆者はよく隅田川沿いを散歩しています。一休みしたら、月島駅に戻るもよし、隅田川に架かる橋を歩いて渡るもよし。元気だったら川沿いの遊歩道「隅田川テラス」を歩いてみるのもいいでしょう。全長約32キロメートルもあり、スカイツリーまでは約6.5キロ、90分ほどです。
佃島散策は、再開発の波がやってくる前の今が行き時です。佃島に行ってみたいと思った貴方!行くなら「今」ですよ!