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【年度内五冠ロード】藤井聡太三冠(19)短手数67手で広瀬章人八段(34)を降し王将リーグ2連勝!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月4日。東京・将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲藤井聡太三冠(19)-△広瀬章人八段(34)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は17時42分に終局。結果は67手で藤井三冠の勝ちとなりました。

 リーグ成績は藤井2勝0敗、広瀬1勝1敗となりました。

藤井「いいスタートを切れたかと思うので、挑戦目指してがんばりたいと思います」

広瀬「始まったばかりですけど、離されないように喰らいついていきたいと思います」

 両者の通算戦成績はこれで藤井5勝1敗となりました。

 藤井三冠の今年度成績は31勝6敗(勝率0.838)となりました。

藤井三冠、先手相掛かりで快勝

 藤井三冠先手で、戦型は相掛かりに進みました。両者の対戦の直近2局、竜王ランキング戦2組、叡王戦八段戦の対局でも、藤井先手で相掛かりに進んでいます。

 角交換のあと、33手目、藤井三冠は相手の桂頭を攻めていきます。

広瀬「行きがかり上しょうがないかな、と思って進めてたんですけど、やっぱり▲7五歩突かれてみると、見た目以上に厳しかったので。すでに形勢がかんばしくない可能性もあるかなと。対応に苦慮していました。部分的には定跡だったのかもしれないですけど、自分はそういう認識がなかったです」

 広瀬八段は長考に沈み、そのまま昼食休憩に入りました。

 再開後の34手目。広瀬八段は1時間5分の消費時間で銀を上がって桂頭を守ります。藤井三冠はその手を読んでいたか、2分で筋違い角を打ち、攻めを続けていきました。

 44手目。藤井三冠は銀と刺し違えて角を切りました。

藤井「途中、角を切っていったんですけど、こちらの玉もけっこうキズの多い形なので、ちょっとどうなってるか、わからなかったです。本譜、△5四銀と受けられると(角を)引いてしまっては働きがわるくなるので、仕方がないかとは思ったんですけど」

 藤井三冠は手にしたばかりの銀を広瀬陣に打ち込みます。

藤井「▲7三銀のときに後手からの手段が多いので、ちょっとわかってなかったです」

広瀬「▲7三銀の瞬間にこちらがちゃんと対応しないと、一気に負け筋になるかなと思ったんですけど。ちょっとやっぱり、あまりいい対応が見当たらなくて。もうちょっとマシな順はあったと思いますけど、ただ指しにくい手順なんだろうなと思いながら指していました」

 藤井三冠はあまり自信がなかったようでしたが、広瀬八段の側も対応が難しい。広瀬八段は49分考えて金をかわしましたが、藤井三冠は16分で両金取りに桂を打ち、なおも攻め続けます。形勢は次第に藤井三冠よしがはっきりしてきました。

 52手目。広瀬八段は藤井陣に角を打ち込んで攻めます。

広瀬「ちょっとやっぱり陣形の差があるので、本当は大駒を手放しちゃいけないとは思ったんですけど。バランスを保つ順が浮かばなかったです」

 広瀬玉は中央5筋、二段目に構えた「中住居」(なかずまい)。藤井三冠はその広瀬玉を左右はさみうちで追い詰めていきます。59手目、2筋に飛車を成って強力な龍を作り、優勢を確立しました。

藤井「飛車を成り込むことができたので、そのあたりで指しやすくなったかと思いました」

 一方の藤井玉は中央5筋、一段目のままの「居玉」(いぎょく)。いったん攻め始められると弱い形ですが、広瀬八段の攻め駒は藤井玉になかなか迫れません。

 67手目。藤井三冠は自陣に金を打ち、広瀬八段の角を取りに行きます。これが確実な決め手でした。攻防ともに手段が尽きた広瀬八段は、ここで投了を告げています。

 藤井三冠はこれで2連勝と最高のスタートを切りました。この先は竜王戦七番勝負と王将戦リーグが並行して進んでいきます。

 広瀬八段は10月21日、羽生善治九段と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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