大雨と猛暑 なぜ極端な天気に?
空からみる雲は摩訶不思議です。ちょうど、ロシア・シベリア上空約1万2千メートルを飛んでいた飛行機から積乱雲がみえました。積乱雲の周辺は気流が乱れているため、こんなに近くを飛行するなんて驚きましたが、雲がまるで生きているかのように成長している様子は圧巻でした。
積乱雲は10種雲形のひとつで、激しい雨を降らせる雲です。この雲は発生してから雨を降らせるまで、わずか1時間と成長が早いのが特徴で、天気が急変するのはそのせいです。短時間で成長するため、現在でも数日前から予測することが難しく、気象レーダを使って、いち早く発生の芽をつかむことに重点が置かれています。
先日、気象庁で運用が始まった高解像度降水ナウキャストでは5分毎に、雨雲の観測と予測を行ないます。「ナウキャスト」とは聞きなれない言葉ですが、ナウ=今、キャスト=予測を組み合わせた言葉で、1時間先までの予測を頻繁に繰り返し、成長の早い積乱雲を予想する手法です。
カタカナ言葉は訳す手間がはぶけて好都合なのかもしれませんが、素人にはわかりにくい。だからといって、特別警報のように重苦しい言葉も扱いが難しい。天気予報はだれもが必要とする情報なので、ネーミングは簡素でわかりやすいものがいいと思います。
15年ぶり「北暖西冷」の夏
8月13日、気象庁は西日本に日照不足と長雨の気象情報を発表しました。盛夏の時期に発表されるのは異例のことです。一方で、北日本は史上3番目に暑い夏、東日本も平年を大幅に上回る暑さになっています。このような「北暖西冷」の夏は1999年以来、15年ぶりのことです。
この極端な天候は太平洋高気圧の張り出しに原因があります。太平洋高気圧が日本列島全体を覆った時期はわずかで、日本の東で強く、西で弱い状態です。そのため、台風は沖縄から西日本に近づくことが多く、西日本の記録的な大雨につながりました。
なぜ太平洋高気圧の張り出しが東に偏ってしまった?
ひとつはフィリピン付近の海に答えがあります。このあたりで雲が多く発生する(専門的にいうと対流活動が活発になるといいます)と日本付近で高気圧が強まることが知られています。これを「Pacific-Japan(PJ)パターン」といいます。
気象庁がこれまでの冷夏予想から暑い夏へ舵を切ったのは、このPJパターンが明瞭になる可能性が高まったからです。しかし、太平洋高気圧が日本の東で強く、西で弱くなることは予想できませんでした。この差は地球規模でみればわずかですが、日本の天候を考える上では大きな差です。
冷夏予想も外れ、エルニーニョ現象の発生もなかったならば、長期予報は当たらないと思われても仕方がないのですが、私自身は残念な思いがあります。歩みは遅いけれど、着実に1か月先、3か月先の天候を予測する技術が進んでいます。その成果を上手に生かせていない現状をもどかしくも感じています。
【参考文献】
前田修平,2013:様々な時間スケールの大気・海洋の変動,平成24年度季節予報研修テキスト「季節予報作業指針」,気象庁地球環境・海洋部,103-111.