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伊藤匠七段(21)棋王戦挑戦者決定二番勝負に進出! 敗者復活戦で兄弟子・本田奎六段(26)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月11日。東京・将棋会館において第49期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント・敗者復活戦▲伊藤匠七段(21歳)-△本田奎六段(26歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時57分に終局。結果は87手で伊藤七段の勝ちとなりました。

 伊藤七段は挑戦者決定二番勝負に進み、広瀬章人九段と対戦します。第1局は12月21日。第2局は26日。広瀬九段は1勝、伊藤七段は2連勝で、藤井聡太棋王への挑戦権を獲得できます。

大一番は弟弟子が制する

 2019年度、本田四段(当時)は棋王戦を破竹の勢いで勝ち上がり、22歳の若さで挑戦権を獲得しました。一方、伊藤七段は今年度、20歳で竜王戦七番勝負の舞台に駆け上がっています。

 本田六段と伊藤七段は同じ宮田利男八段門下。斎藤明日斗五段(25歳)も加えた宮田門下の3人の若手は、おおむねいつも好成績をあげ、成績ランキングの上位に名を連ねています。

 公式戦で本田六段と伊藤七段が当たるのは初めて。その一局が、棋王戦挑決進出をかけた大きな一番となりました。

 上座に就くのは、弟弟子ながら段位で先行する伊藤七段。駒を並べる際には、伊藤七段が「王将」、本田六段が「玉将」を持ちました。ちなみに駒の並べ方は、伊藤七段は比較的少数派の「伊藤流」。本田六段は多数派の「大橋流」です。

 振り駒の結果「歩」が3枚出て伊藤七段が先手と決まりました。戦型は角換わり。序盤の駆け引きの末、伊藤七段の腰掛銀に対して、本田六段は右玉に組みました。

 駒がぶつかったあと、伊藤七段は玉を盤上右隅にもぐらせます。結果的にはこの遠い玉形が活きる進行となりました。

 61手目、伊藤七段はタダで取られるところに桂を成ります。ここは大きな分岐点。本田六段はその成桂を取るのか。それとも、相手をせずに攻め合うのか。本田六段は14分の考慮で前者を選びました。

本田「いやあ、(こちらも桂を)成るんでしたね、きっと」

 あるいはその順が正解だったのかもしれません。本譜は伊藤七段が飛車を成り込み、わずかに優位に立ちました。

 本田六段も反撃に出たものの、伊藤七段の読みは攻防ともに正確。伊藤七段は自玉の詰まないことを読み切り、着実に相手玉に迫っていきます。

 87手目、伊藤七段が飛車を打って王手をしたのを見て、本田六段は投了。本局を制したのは、弟弟子の伊藤七段でした。

 伊藤七段は挑決に進出。相手は強豪の広瀬九段です。敗者復活での勝ち上がりのため星一つのビハインドもあり、挑戦権獲得はそう容易なことではありません。しかし若さの勢いで、さらに勝ち進む可能性もありそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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