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ワールド・ベースボール・クラシックで侍ジャパンの最大の敵とは?

横尾弘一野球ジャーナリスト
日本を熟知したR.マルティネスやL.モイネロ(左から)のいるキューバは不気味だ。

 第5回ワールド・ベースボール・クラシックに臨む日本代表“侍ジャパン”が、いよいよ2月17日から宮崎県で合宿を実施する。ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)、大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)らメジャー・リーガーも招集した陣容は史上最強と評され、3大会ぶりの優勝も大いに期待されている。

 戦力的に死角はないと思える侍ジャパンだが、世界一への道で最大のヤマとなるのは2次ラウンド、すなわち準々決勝だろう。

 前回大会までは、4チームが1次ラウンドで総当たりし、上位2チームが2次ラウンドに進出。2次ラウンドでも4チームが総当たりし、上位2チームが準決勝に駒を進めた。日本が優勝した2006年の第1回大会では、2次ラウンドでアメリカと韓国に敗れたものの、アメリカ、メキシコと1勝2敗で並び、得失点率差で準決勝に進出したように、リーグ戦方式では痛い敗戦を取り返すことができる。だが、今大会は5チーム総当たりの1次リーグを勝ち抜いたあとは、3試合続けて一発勝負だ。

 日本代表には、国際大会にアマチュアだけで出場していた時代から、リーグ戦に比べてトーナメントの一発勝負に弱いという傾向があった。大半の大会が総当たりのリーグ戦から決勝トーナメントという方式の中、日本はリーグ戦から連戦連勝するも、決勝トーナメントで息切れしてしまうと指摘され、リーグ戦で捨て試合を作るべきだと言われたりした。

 プロ選手が出場するようになってもそれは変わらず、2004年に初めてオールプロで臨んだアテネ五輪でも、リーグ戦を6勝1敗の1位で勝ち抜けながら、準決勝では同4位のオーストラリアに0対1で敗れ、決勝進出を逃している。また、2015年のプレミア12も、グループBを5勝0敗で勝ち抜けたものの、準決勝では韓国に大逆転負けした。

 一方で、2021年の東京五輪で金メダルを獲得できたのは、メジャー・リーガーが出場しない上に、負けても決勝進出の可能性を残せる変則トーナメントゆえに力を発揮できたという見方もある。

一発勝負、東京ドームにキューバが対戦相手になったら

 今大会の戦力は、そんな過去の嫌なジンクスを吹き飛ばしてくれると思いたいが、一発勝負の初戦となる準々決勝は、一番の難関になるのではないか。吉井理人コーチが、私論と前置きして語った「準々決勝をダルビッシュと大谷の継投で勝ち上がり、渡米した準決勝以降は山本由伸(オリックス)や佐々木朗希(千葉ロッテ)でいいのではないか」という考えには賛成だ。しかし、裏を返せば、それだけのプレッシャーが準々決勝にかかることになる。

 日本が入るプールBは、韓国、オーストラリアと2つの切符を争うと見ていい。そして、準々決勝では日本が1位ならプールAの2位と、2位ならプールAの1位と一発勝負だ。対戦相手の候補はチャイニーズ・タイペイ、キューバ、オランダになるだろうが、やはり不気味なのはキューバ。有力選手の相次ぐ亡命でチーム力はがた落ちし、最新の世界ランキングは8位だが、今大会の日本にとっては最大の難敵と言っていい。

 亡命してメジャー・リーグでプレーする選手の代表入りが認められ、シカゴ・ホワイトソックスで2019年に25本塁打を放ったヨアン・モンカダ、チームメイトで成長株のルイス・ロベルトも代表入りし、近年の課題だった得点力不足は解消されるだろう。一方の投手陣は、ライデル・マルティネス、ジャリエル・ロドリゲス、フランク・アルバレスの中日トリオに、福岡ソフトバンクのリバン・モイネロ、元阪神のオネルキ・ガルシアも名を連ねる。日本の主力打者の特徴も自ら対戦して把握しているだけに、一発勝負の対戦では厄介な相手だ。

 たとえダルビッシュと大谷が継投しても、東京ドームでは僅かにコントロールが甘くなれば一発のある打線。先制ソロ本塁打を許し、打線は小刻みな継投に無得点という最悪の展開も頭を過る。いくら侍ジャパンのチーム力が高くても、一発勝負、東京ドーム、キューバの3点セットが揃う準々決勝は避けたいものだ。

 ちなみに、1次ラウンドを台湾で戦うキューバは、すでに来日して沖縄県内で合宿を行なっており、2月17日からはプロ球団と練習試合が予定されている。チーム関係者によれば、侍ジャパンにも練習試合を申し込んだが、断られたという。

(写真=Paul Henry)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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