非正規雇用の資格制度は「葵の御紋の印籠」的発想でしかない
6月下旬に決まる新成長戦略で政府は、非正規雇用を対象とした資格制度を創設する方針を決めたそうだ。
これを聞いて、まず頭に浮かんだのが「葵の御紋の印籠」だった。テレビドラマの水戸黄門のクライマックスで、お供の格さんが「この紋所が目にはいらぬか」と印籠をとりだすと、その葵の紋に悪者たちがひれ伏す、というアレだ。
あの葵の御紋の印籠と同じように、新成長戦略で決まる制度による資格に、雇う側が「ははっ~」となって、すぐさま雇ってくれればいいが、そうはいかないだろう。何々検定だのという資格制度が、いまでも巷にはあふれている。それが就職に決定的な条件となっているかといえば、そんなことはない。
政府は非正規雇用者が資格をとることで正社員への登用や転職時のアピールポイントになると考えているようだが、そんな資格は採用の参考程度にはなるかもしれないが、肝心の正社員への登用や転職を推進することにはならない。資格者が増えたから正社員への登用や転職機会が増えるわけではなく、あくまで雇う側の都合でしかないからだ。
さらに資格制度は、非正規が資格をとるための働き方しかしないという可能性も考えられる。それが現場に即した働き方ではないかもしれず、そうなると雇う側にとってもマイナスにしかならない。
資格制度をつくれば、非正規雇用者が力を発揮するようになり、正社員への登用やよりよい転職機会にもつながるという発想は、どう考えても現実的ではない。現実を真摯にとらえず、ただ形だけ整えようとしているとしかおもえない。結局、利益を得るのは資格の認定を行うことになる業界団体だけである。
葵の御紋の印籠で解決する、という幼稚な発想から抜けないと、成長戦略など絵に描いた餅に過ぎなくなる。