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2500人上限の静かな国技館は今、どんな様子なのか? 大相撲秋場所七日目観戦レポート

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
筆者撮影

七日目の館内の様子

大相撲秋場所七日目。前回の七月場所は平日の十日目に来たからだろうか、4連休の初日とあって、先場所に比べるとお客さんの入りがよく感じられる。通常の賑わいとは程遠いものの、おしゃべりしながら楽しそうに通路を歩いたり、グッズを眺めたりと、思い思いに国技館を満喫している人々の笑顔がまぶしい。人数が制限されているとはいえ、やはり生観戦できることは喜びである。

館内の各売店では、今場所から新発売の「国技館カレー」や「大相撲マスク」が人気で、店によっては開場後30分足らずで売り切れてしまっていたほど。また、力士の四股名が大きく書かれた「応援タオル」も種類が豊富で、自分の“推し力士”のタオルを掲げて応援する人も多い。筆者には特に推しがいないのだが(全員応援という意味で)、直接声援を送れないいま、ファンにとってこれはとても楽しい応援形式だと感じる。

宇良の勝ち越し

筆者は今回、マスCという後方の席で見ていたが、それでも館内が静かであるため、土俵上の力士の「シュッ」という声や、体やまわしをたたく音は鮮明に聞こえた。

土俵上でまず盛り上がったのは、幕下上位の宇良。頭で当たると、その勢いのまま一気に寄り切って、この日勝ち越しを決めた。現在5枚目。来場所で関取に返り咲くことができるか。ファンは皆、待ち望んでいる。

コロナ禍ならではの音

生で見ていると、お客さんの反応や盛り上がりも肌で感じることができる。いい相撲が見られると、大声は出さないにせよ、声が漏れたりため息をついたりしてしまうのだ。

しかし、通常の国技館に比べたら、場内はとても静かである。その証拠に、十両の取組中、奥の支度部屋のほうで、呼出しが幕内力士たちに土俵入りの時間を知らせるために打つ拍子木の音が、東西共にはっきりと聞こえた。普段は聞こえたことがない音なので、不思議に思ったお客さんもいたのではないだろうか。

注目の取組に盛り上がる客席

この日は、琴勝峰が同い年の豊昇龍に対し、土俵際でしぶとく粘って突き落とし。次の取組では、翔猿が巨体の千代大龍を相手に華麗な下手出し投げを決めると、館内が大きくどよめいた。こうして、琴勝峰・翔猿共に1敗を守った。

さらに、人気力士の炎鵬は、この日から再出場の琴奨菊に立ち合いからつぶされ、腰砕けで黒星。これにはお客さんも、「ああ~」と大きなため息が漏れてしまった。

幕内後半の取組はさらなる盛り上がりを見せる。なんといっても、大栄翔・御嶽海・正代の3関脇に土がついたのだ。割れんばかりの拍手とともに、客席からは「おおー」というどよめきが起こってしまったのは言うまでもない。

しかし、その後は両大関がしっかりと土俵を締めてくれた。貴景勝・朝乃山の人気はやはり高く、二人のタオルを掲げるお客さんが多くいた。結びを務めた朝乃山は、照強に先場所の雪辱を果たす形で白星を伸ばした。

こうして、無事に七日目が終了した。観客数が少ない分、帰りの混雑もなく、非常にスムーズに会場から出ることができる。徹底した感染予防対策の上に成り立つ平和な世界に感謝しつつ、感動の余韻を残しながら国技館を後にした。

おまけ~千代の富士優勝額お披露目記念展~

9月8日、JR両国駅に千代の富士の優勝額が飾られたことを記念して、駅構内の3番ホームでは、この日から「千代の富士優勝額お披露目記念展」が開催されている。現役時代の数々の写真パネルは、思わずため息をついてしまうほど惚れ惚れする美しさ。さらに、階段を上った駅のホームには、ミニチュアの優勝額がずらりと並んでいる。一つ一つうっとりと眺めていると、つい時間を忘れてしまうので、どうかご注意を。

数に限りがあるとのことだが、来訪者にはポストカードが無料で3枚まで配られる。両国駅を利用の際は、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。同記念展は入場無料、22日(火・祝)まで。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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