なぜハーランドはシティを選んだのか?エムバペ、D・ヌニェス、ベンゼマ...“点取り屋”の価値とは。
この夏の、目玉のプレーヤーの一人だった。
アーリング・ハーランドが、マンチェスター・シティに移籍した。ボルシア・ドルトムントで爆発していたストライカーだが、シティが契約解除金6000万ユーロ(約84億円)を支払い、プレミアリーグへの移籍が決定している。
今夏、去就に注目が集まったのが、ハーランドとキリアン・エムバペだった。
ハーランドが移籍を決めた一方で、エムバペはパリ・サンジェルマンと契約延長を行った。2025年夏までの新契約を結び、パリに残ることを決めている。
昨季、ハーランドは、30試合出場29得点を記録した。対して、エムバペは46試合で39得点を挙げた。ハーランド(21歳)、エムバペ(23歳)に顧みても、彼らがリオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドの次の時代を担うだろうといわれている。
■費用対効果の関係
年齢が低ければ、コストパフォーマンスは高くなる可能性が高い。
例えば、アトレティコ・マドリーは、2019年夏に移籍金1億2700万ユーロ(約177億円)でジョアン・フェリックスを獲得している。以前、アトレティコのエンリケ・セレソ会長は「一人の選手獲得に1億ユーロをつぎ込むなんて、誰も想像していなかった。それは私も同じだ。だが状況は変化する。2年前だったら、我々がジョアン・フェリックス獲得に1億ユーロ以上を投じると言ったら、鼻で笑われただろう。確かにリスクはある。だが20歳を迎えたばかりの選手だ。若ければ若いほど、後々、調整できる可能性がある」と語っていた。
つまり、1年や2年の短期スパンではなく、中長期のプランでヤングプレーヤーを確保するというのが、賢い選択なのだ。
そういう意味では、レアル・マドリーのヴィニシウス・ジュニオール(移籍金4500万ユーロ/約63億円)やロドリゴ・ゴエス(移籍金4500万ユーロ)の獲得も、理にかなっている。
フロレンティーノ・ペレス会長は、彼らがまだ10代の頃に、相応の移籍金を積んでブラジルから引っ張ってくる決断を下した。昨季、マドリーのチャンピオンズリーグ制覇に彼らが大きく貢献したことを見れば、すでにマドリーは“回収”の段階に入ったと言えるだろう。
また、リヴァプールはこの夏にベンフィカからダルウィン・ヌニェスを獲得している。移籍金は固定額7500万ユーロ(約105億円)+ボーナス2500万ユーロ(焼く35億円)だった。ただ、これも22歳のストライカーの未来を考慮すれば、回収の可能性が十分あるとユルゲン・クロップ監督が踏んだ結果だ。
■ベンゼマのハイパフォーマンス
ただ、例外というのは存在する。それがカリム・ベンゼマだ。
ベンゼマは2009年夏にレアル・マドリーに加入した。だが同時期にマドリーがクリスティアーノ・ロナウドを獲得したため、ベンゼマにはCFのポジションが与えられながら“アシスト役”が求められた。
2014年夏には、マドリーがルイス・スアレス獲得に近づいていた。スアレスを獲得するには、ベンゼマを売却する必要があった。しかしながら当時の指揮官がそれに「ノー」を唱えた。その時、チームを率いていたのが他ならぬカルロ・アンチェロッティ監督である。
2021−22シーズン、ベンゼマは46試合で44得点を記録した。リーガエスパニョーラで27ゴール、チャンピオンズリーグで15ゴールを挙げ、2つのタイトル獲得に貢献した。
ゴンサロ・イグアイン、エマニュエル・アデバヨール、ハビエル・エルナンデス(チチャリート)、アルバロ・モラタ、ルカ・ヨヴィッチ…。多くの選手が、ベンゼマとポジションを争ってきた。しかしながら、最終的にはベンゼマが常にレギュラーの座を確保した。
「ベンゼマは世界最高の9番だ。マドリーをラ・リーガで首位の座につかせた。ベンゼマが、キープレーヤーになっている」
「クリスティアーノ・ロナウドがマドリーでプレーしていた時、ベンゼマは2番手の役割を受け入れていた。なぜなら、それがチームのためだと思っていたからだ。そういう謙虚さを持っていた。それが今、爆発している。34歳で、世界一のストライカーだ。ゴール、アシスト、コンビネーション…。試合に違うリズムを与える。別次元だ」
これはリオ・ファーディナンドのコメントだ。
現在、バロンドールに最も近いのは、ベンゼマだろう。
長年、ロナウドの引き立て役だったベンゼマは、ついに覚醒した。そして、彼もまたストライカーの価値を高めることに貢献しているのは言うまでもない。