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61歳で急死したビル・パクストンに、ハリウッドが追悼

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ビル・パクストンと長男ジェームズ(写真:REX FEATURES/アフロ)

ビル・パクストンが、米西海岸時間25日(土)に亡くなった。61歳だった。パクストンは、最近、心臓手術を受けており、合併症から起きた発作が原因とのことだ。彼の遺族は、「ビル・パクストンが亡くなったことを、辛い思いでみなさんにお知らせします。彼はすばらしい夫であり、父でした。ビルは、美術の部署でハリウッドの仕事を始め、40年にわたり、俳優として、またフィルムメーカーとして、数多くの作品を送り出してきました。彼を知る人はみんな、彼がアートに対して持っていた強い情熱を知っています。彼はまた、温かく、元気に満ちた人でした」と、声明を発表している。

パクストンと、1987年に結婚した2番目の妻ルイーズ・ニューバリーとの間には、ふたりの子供がいる。長男ジェームズ(22)は俳優で、パクストンが主演するテレビの新ドラマ「Training Day」にも、最近ゲスト出演している。

テキサス州フォートワース生まれ。ジョン・F・ケネディが暗殺された時、群集の中で肩車をされている当時8歳のパクストンの写真は、ダラスのシックス・フロア博物館の展示されている。10代の時には、テキサス出身のプロゴルファー、ベン・ホーガンのキャディを務めたこともある。

18歳の時、ロジャー・コーマンの会社ニュー・ワールド・ピクチャーズでセットデザインの手伝いをしてハリウッドのキャリアを始め、コーマンが製作、ジョナサン・デミが監督する「Crazy Mama(日本未公開)」で映画デビューを果たす。ニューヨーク大学で本格的に演技を学んだ後は、テレビや低予算映画を経て、ジェームズ・キャメロンの「ターミネーター」(1984) に小さな役で出演。キャメロンの「エイリアン2」(1986)、「トゥルーライズ」(1994)、「タイタニック」(1997)、「ジェームズ・キャメロンの タイタニックの秘密」(2003)にも出演した。

スティーブン・スピルバーグが製作した「ツイスター」(1996)や、西部劇「ワイルド・ガンズ」(1994) では主演を務めたほか、「プレデター2」(1990)、「トゥームストーン」(1993)、「U-571」(2000)など、数々のアクション映画に出演。「シンプルプラン」(1998)や「One False Move(日本未公開)」、「アポロ13」(1995)などドラマでも実力を見せた。最近では、トム・クルーズ主演の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014)、ジェイク・ギレンホール主演の「ナイトクローラー」(2014)に出演している。

テレビでも活躍。5年にわたってHBOで放映された「Big Love」(2006-2011)では、宗教的な理由で3人の妻と7人の子供をもつ男性を演じ、3度ゴールデン・グローブにノミネートされた(『ダ・ヴィンチ・コード』に主演する話もあったのだが、先にこのドラマに契約していたため、あきらめている)。また、ヒストリー・チャンネルのミニシリーズ「Hatfields & McCoys」(2012)ではケビン・コスナーと共演し、エミー賞にノミネートされている。

次回作は、トム・ハンクス、エマ・ワトソン、ジョン・ボイエガらと共演するSFスリラー映画「The Circle」。撮影は終了しており、北米では今年4月に公開される。テレビでは、「Training Day」が今月放映開始したばかりだが、こちらも第1シーズンの13話は、すべて撮影が終わっている。デンゼル・ワシントンに2度目のオスカーをもたらした2001年の映画のテレビ化版で、アントワン・フークアがエクゼクティブ・プロデューサーを務める。

パクストンの若すぎる死は、ハリウッドに大きなショックを与えた。ツイッターには、彼を惜しむ映画関係者たちのメッセージが、次々に投稿されている。

その長いキャリアで、パクストンは、世界中の人々に、夢と娯楽を与えてきてくれた。心からご冥福をお祈りする。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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