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認知症の人が心穏やかになる対応法3選【介護福祉士がイラストでわかりやすく解説】

こんにちは。認知症のケアサポーター『夢はるか』です。わたしは介護福祉士として、15年以上介護現場で働いてきました。
子どもの頃から好きだった漫画やイラストを描くことで、一人でも多くの人に認知症や介護のことを知っていただきたいと思い、日々がんばっています。

わたしは介護の仕事を通して、たくさんの認知症の方と交流してきました。

認知症といっても、決してひとくくりにはできません。

原因となる疾患や、その人のおかれた環境によって、さまざまな症状が現れます。

そのため、認知症介護には一人一人に合わせた、きめ細かな対応が必要です。

しかし、介護者に共通した心得もあります。

今日は、わたしが認知症ケアで大切にしてきた、3つの『ない』をご紹介します。

この3つを頭に置くことで、認知症の人との心穏やかなコミュニケーションのきっかけをつかめると思いますよ。

ぜひ最後まで読んで、参考にしていただければ幸いです。

1.驚かせない
1.驚かせない

「今日は、何月何日…?」

「いま自分はどこにいて、これから何をしたらいいの…?」

認知症では、時間や場所や人の認識が難しくなる『見当識障害』が現れることがあります。

そのため、不安で動き回ったり、気持ちが荒れることもあります。

家族やヘルパーが、親切に声をかけてくれても、

「知らない人から、いきなり意味のわからないことを言われて驚いた」

などと感じて、余計に気分を害してしまうこともあります。

おすすめ対応法

認知症の人が、何かを探してごそごそしだすと

「何してるんだろう?」

と気になりますね。

そんなとき、すぐに声をかけたくなります。

しかし、差し迫った危険がない限り、まずはその人の行動を見守りましょう。

相手は、子どもではありません。

さりげなく気づいてもらう気配りも必要です。

そして忘れてならないことは、相手の表情を見ながら話すことです。

後から声をかけるのはやめましょう。

声だけでなく、口の動きや、表情も相手の言葉を読み取るために必要な要素です。

お互いの顔が見える場所で、優しい表情と口調を心がけて声をかけましょう。

そうすることで認知症の人を驚かせずに、会話の糸口をつかむことができますよ。

2. 急がせない
2. 急がせない

わたしが、老人デイサービスセンターで働いていたときのことです。

朝、お年寄りの自宅へ迎えに行くと、まだ準備ができていないことがよくありました。

忘れ物がないか確認。火の元OK。戸締りOK。

さあ出発!と思ったら、

「メガネ持ったかな?電気は消したかな?窓閉めたかな?電気消したかな?…」

最初から同じことの繰り返しです。

これでは、思わず「早くしてください!」と言いそうになりますね。

しかし、認知症の人を急がせることは逆効果です。

早く終わるどころか、ますます混乱してしまいます。

おすすめ対応法

記憶が衰えた認知症の人は、複数のことを一度に覚えるのが苦手です。

一つ一つ、一緒に確認していきましょう。

本人が覚えられなくても、

「あなたが見てくれたのなら大丈夫ね」

と言ってもらえる信頼感も大事です。

『急がば回れ』

せかさず、穏やかな対応が近道です。

安心して出発できる気持ちになっていただくことが肝心なのです。

3. 自尊心を傷つけない
3. 自尊心を傷つけない

認知症の記憶障害が進むと、ついさっき食事をしたことも、お風呂に入ったことも忘れてしまいます。

「ご飯食べてない」「お風呂入ってない」

毎回そう言われる、家族の気持ちは複雑です。

何度答えても、わかってもらえないと、イライラが募ります。

「さっきも言ったでしょ!」

「何度言えば分かるの?」

そう言って、ついつい相手の心を傷つけてしまいます。

おすすめ対応法

衝突しそうだと思ったら、一度その場を離れて、気持ちを落ち着けましょう

認知症の人も時間が経つと、他のことに関心が移って、ご飯やお風呂のことは忘れてしまうことも多いものです。

時間が解決してくれることもあります。

相手を傷つける言葉は、その場の憂さ晴らしにはなりますが、長い目で見れば、いいことは一つもありません。

『自分が言われて嫌なことは、相手にも言わない』

『自分がしてほしいことを、相手にもする』

冷静にそう考えられるまで、クールダウンしましょう。

まとめ

認知症の人は、出来事は覚えられなくても、そのときに感じた気持ちは残るといわれています。

『嫌な気持ち』は人を遠ざけ、『楽しい気持ち』は信頼を生みます。

「この人といたら、楽しいことがある」

物忘れがある認知症の人にも、そう覚えてもらうことはできます。

気持ちにアプローチすることが、認知症の人とのコミニュケーションの基本だと言えるでしょう。

認知症介護で困ったときは、今日紹介した3つの『ない』を思い出してみてくださいね。

介護福祉士としてデイサービスや訪問介護の現場で働いてきました。職場の上司の指導で、研究会での発表や、学術誌へのケースレポートの投稿なども積極的に行なっています。また、子どもの頃から好きだった漫画やイラストを描くことで、認知症の知識や介護のコツをわかりやすく伝えることを心がけています。

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