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【認知症とカスハラ】すぐに怒り出す、キレやすい人の対応法【介護福祉士が漫画でわかりやすく解説】

こんにちは。認知症のケアサポーター『夢 はるか』です。わたしはデイサービスや訪問介護の現場で15年以上働く介護福祉士です。
子どもの頃から好きだった漫画を描くことを通して、認知症や介護のことを一人でも多くの人に知っていただきたいと思っています。

先日、仕事帰りにスーパーに行ったときのことです。

レジに並ぶと、前の方で大きな声で怒鳴っているお年寄りがいました。

店員さんが一生懸命になだめていましたが、怒りは収まらず徐々にエスカレートしていくようでした。

最近、介護現場以外でも、このような『キレる老人』の姿を見かけるようになりました。

カスハラ(カスタマーハラスメント)と呼ばれるものです。

わたしたち介護福祉士は慣れていますが、一般の人でも、認知症の人に特有の怒りの原因や対応法など、いくつかの知識があるだけでトラブルを最小限にとどめることができます。

怒りの原因は様々ですが、その根本にある2つの要素を知ることで、対応しやすくなります。

1.体調不良

何らかの不調を感じているのに、それが何なのか自分でもわからない。

具体的に、人に伝えることができない。

そんな時に、意味のわからない怒りで示されることがあります。

対応法

介護現場でよく行う対応は、不穏な人には、まずトイレを勧めてみることです。

排尿・排便ができると、気持ちもスッキリすることはよくあります。

また、下痢や便秘など、不快な気持ちの原因がわかることもあります。

2.脱抑制

脳(前頭葉)の萎縮により、衝動や感情を抑えられない状態を脱抑制といいます。

人への配慮や礼儀が失われ、万引きなどの反社会的行為をためらいなく行うこともあります。

この非常識な行為は病気の症状であり、決して本人の悪意ではないことを知っておきましょう。

対応法

暴言や暴力がある興奮状態のときは、無理に話そうとせず、落ち着くまで待つことも必要です。

非常識な態度をとがめたり、怒りの原因を追求したりすることは、その場の状況をさらに悪化させることがあります。

本人も、どうして自分が怒っているのか、わからなくなっていることもあります。

まずは、不安を和らげることを第一に考えてみましょう。

否定しない

態度や言葉を頭ごなしに否定しないようにしましょう。

人を傷つける『怒る行為』自体には共感できなくても、そのやるせない気持ちを理解し、寄り添うことはできるはずです。

自尊心を傷つけない

『なんで怒っているの、迷惑だよ』

そんな一言は、怒りをさらにエスカレートさせます。

怒りという形でしか、自分の思いを表現できなくなっていることを理解しましょう。

誰でも、子や孫のような年代の人に、上から目線で言われたら嫌な気持ちになります。

たとえその人の行為が不適切で、非難されるようなことであっても、その人自身の尊厳は傷つけられるべきではありません。

自尊心を傷つけないように話すことで、きっと事態は良い方向に向かうと思いますよ。

孤立させない

怒りは人を遠ざけます。

たとえその原因が病気だとわかっても、距離を置く人は増えていくでしょう。

しかし社会からの孤立は、認知症をさらに進行させる原因になります。

すぐに怒る人だからといって、つまはじきにされるような社会は、持続可能な共生社会とはいえません。

全50作にも及ぶ人気映画シリーズ、『男はつらいよ』の主人公『寅さん』も、怒りっぽい人です。

彼の家族や、近所の人たちは、時には怒鳴りあいケンカをしながらも、たまに帰ってくる寅さんを、いつもやさしく迎えます。

わたしたちも、そんなあたたかな社会の一員でありたいと思います。

介護福祉士としてデイサービスや訪問介護の現場で働いてきました。職場の上司の指導で、研究会での発表や、学術誌へのケースレポートの投稿なども積極的に行なっています。また、子どもの頃から好きだった漫画やイラストを描くことで、認知症の知識や介護のコツをわかりやすく伝えることを心がけています。

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