台湾”国産”潜水艦「海鯤(ハイクェン)」進水
9月28日、台湾が新型潜水艦「海鯤(ハイクェン)」を高雄市の台湾国際造船で進水させました。1980年代後半に台湾海軍はオランダ製潜水艦の調達途中で中国の外交圧力により6隻購入予定が2隻で中断していましたが、外国製潜水艦の完成品購入ではなく複数の各国から技術協力を得て台湾国内で建造する方式に切り替えて、35年の空白期間を経て潜水艦調達事業が再開されます。
※海鯤(ハイクェン)の実際の発音はハイクンとハイクェンの中間が近い。「鯤」とは中国の神話の想像上の巨大な魚の意味ですが、台湾ではクジラ(鯨)の意味もあります。台湾海軍は海鯤の意味を英語では”Narwhal(ナーワル)”だと説明しており、これはクジラの仲間のイッカク(一角鯨)の意味です。なお中国語でイッカクは一角鯨や獨角鯨という表記が普通なので、海鯤=Narwhalという説明はこの艦の特別なもののようです。
※台湾海軍の現役潜水艦はオランダ製の「海龍(ハイロン、1987年就役)」「海虎(ハイフー、1988年就役)」の2隻が実戦配備中。この他に対潜訓練用の非常に古いアメリカ製潜水艦「海獅(ハイシン)」「海豹(ハイパオ)」を2隻保有。
海鯤(ハイクェン)の艦尾部分はX字状の舵に加えて2枚の水平安定翼が見えます。これはイスラエルがドイツのHDW(ホヴァルツヴェルケ=ドイツ造船)に建造させたドルフィン1級潜水艦と同じ特徴です。ただしHDWが台湾に技術協力しているかは公式発表はありません。
「海鯤(ハイクェン)」の艦尾
20230928 總統主持「潛艦國造原型艦命名暨下水典禮」
海鯤(ハイクェン)の進水式典ではアメリカ、日本、韓国の関係者が招待されており、建造に何らかの協力を行った可能性がありますが、公表はされていません。潜水艦の性能数値も未発表です。推定される全長80メートル、排水量は2500~3000トンと予想されます。通常動力型潜水艦としては大型の部類です。
國防自主X國艦國造|海鯤軍艦|潛艦國造原型艦命名暨下水典禮
「海鯤(ハイクェン)」の艦尾(建造中)
建造中の「海鯤(ハイクェン)」の艦尾の様子から、X字状の舵(動翼部分は未装着で根元のみ)と水平安定翼(固定翼)の構造が見えます。中央船体ブロックの耐圧殻の内部はボカシ処理が入っていて見えません。耐圧殻の厚みは機密であるからです。
なお台湾国防部のこの動画で「1987」とあるのは現行のオランダ製潜水艦「海龍(ハイロン)」のことで(海龍と海虎は計画名称から「剣龍」級とも呼ばれる)、「2023」とあるのが新型潜水艦「海鯤(ハイクェン)」です。海鯤級は8隻建造予定とされています。
- SS-793 海龍 1987年就役 オランダ製ズヴァールトフィス級改
- SS-794 海虎 1988年就役 オランダ製ズヴァールトフィス級改
- SS-711 海鯤 2025年就役予定 台湾国産(各国が技術協力)