今では当たり前の権利「女性の選挙権」米国で与えられたのは100年前、日本は終戦の年だった
今年のアメリカ大統領選挙が11月に迫り、8月17日から民主党大会が4日間の日程でウィスコンシン州ミルウォーキーで始まった(共和党は8月24日からノースカロライナ州シャーロットにて)。この全国党大会は一般有権者にアピールする重要な場だが、今年は新型コロナウイルスの影響で史上初のオンライン開催となっている。
筆者もオンラインで1日目を見守ったが、テレビ中継やZoomでのブリーフィングをただ観ているような感じで、今ひとつ盛り上がりに欠けた気がした。このバーチャル形態が有権者や投票率にどのような影響を及ぼすのか、新たな選挙戦のカタチとして注目されている。
米女性、選挙権100周年記念日
さてそんなアメリカだが、今年はもう1つ選挙(投票)に関して大きな話題がある。
この国の女性が選挙権(投票権)を勝ち取ったのは、1920年8月18日、ちょうど今から100年前のことだ。その日に承認された合衆国憲法修正第19条で、市民の性別を理由に投票権を否定することが禁じられた。裏を返せば、自由と平等を目指すアメリカという国でさえ、つい100年より前の時代は、女性に投票権さえ与えられていなかったということだ。(一部の州を除く)
今年の女性参政権100周年を祝って、ニューヨーク歴史協会(New-York Historical Society)では、2月28日から8月30日までの予定で「ウーマンマーチ」展が開催されていた。展覧会では、アメリカの女性が投票権を得るためにいかに闘い抜いてきたか、またそれ以降も女性の権利を獲得するために行われてきた抗議デモ、ウーマンマーチの活動などが紹介された。
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展示開始から数日で新型コロナのパンデミック、ロックダウンが起こり、歴史協会は休館となった。現在は屋外スペースのみオープンしており、9月11日から館内スペースもいよいよ再開予定だ。
アメリカで100年前に女性が投票権を獲得するために、女性活動家らによって主張や闘争が起こったのは今から200年前とされている。今日(こんにち)では18歳以上の国民には当たり前にある権利が、100年かけてようやく女性にも平等に与えられた。当たり前の今があるのは、当時の女性が闘ってくれた賜物だ。
日本の女性の選挙権は?
日本で女性が選挙権(投票権)を初めて獲得したのは、アメリカに遅れること25年、第二次世界大戦の終戦の年である1945年(今から75年前)だ。同年12月に制定された新選挙法によって、女性を含む満20歳以上(当時)のすべての国民に選挙権が与えられた。ただし女性が実際に参政権を行使したのは、翌年のことだったようだ。
「平等を求めその後も闘ってきた」米メディア
1920年に承認された合衆国憲法修正第19条で、市民の性別を理由に投票権を否定することが禁じられたのは前述の通りだが、実際にはすべての女性に対して投票権が保証されたわけではなかったようだ。NBCニュースによると「黒人女性にとってはその後も投票税や識字率などで不平等があり、1965年に成立し投票時の人種差別を禁じた投票権法の成立まで、実際には法的に障壁があった」という。
一方近年はというと、2008年と2012年の大統領選挙(共に民主党のオバマ大統領が選出された)では、「特に黒人女性の投票率が高かった。黒人女性は、民主党の最も忠実な有権者としての地位を確固たるものにした」と同紙。黒人コミュニティは、新型コロナウイルスによる打撃がもっとも大きいとされている。今年の選挙へ与える影響はどれほどだろうか。
歴史は動き、女性参政権獲得から100年後の2020年、カマラ・ハリス上院議員が史上初めて有色人種の女性として、2大政党から副大統領候補に正式に選ばれた。今後、初の女性副大統領、または大統領さえ誕生の可能性は大いにある。さらに100年後、いったいどのようなニュースの見出しが躍っているだろうか。
(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止