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授業参観で前代未聞の喫煙!? ニコチン依存から抜け出せない金正恩総書記

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
授業参観する金正恩総書記(朝鮮中央通信)

 北朝鮮は7月下旬に水害被害に見舞われ、家を失った北部地域の被災民を平壌に疎開させ、道路が復旧され、住宅や公共施設が新たに建設されるまでの間、政府が生活の面倒を見ることにしている。

 被災民が臨時入所している「4.25旅館」では平壌市内の小学校、中学校の先生らを動員し、学童のための授業が行われているが、朝鮮中央通信は授業開始の初日(16日)に金正恩(キム・ジョンウン)総書記が教育準備状況をチェックするため授業参観を行っていたことを伝えていた。

 被災民はその前日(15日)に平壌に到着し、宿舎に入居していたが、金総書記はその日のうちに早速宿舎を訪れ、食堂で食事する児童らと交わるなど被災民や児童らに寄り添う姿を見せ、労働新聞や朝鮮中央テレビなど宣伝メディアは連日、そのことを大々的に伝え、金総書記の「人民愛」を喧伝している。

 それは良いとしても、授業参観の際、教室の後方で腹を突き出し、一人椅子に座って参観していた金総書記のサイドテーブルにタバコと灰皿が置かれていたのには驚いた。金総書記の周りには党幹部ら随行者がいたが、誰ひとり諫める者はなく、笑いながら、見守っていた。

 タバコを手にしている写真が配信されていなかったため喫煙していたかどうかは確認できないが、手の届くところにタバコと灰皿が置いてあったということは喫煙しても構わないということのようだ。

 いずれにせよ、教室内に公然とタバコと灰皿を置いているだけで前代未聞である。そう言えば、金総書記は被災した平安北道・新義州を視察した時もゴムボートで移動中にタバコを手にしていた。

 無神経と言えば、それまでだが、先代の金日成(キム・イルソン)主席も、金正日(キム・ジョンイル)前総書記もヘビースモーカーだったが、ここまで酷くはなかった。

 北朝鮮は2020年に定められた「禁煙法」で劇場、映画館など公共の場、子供や育児の施設、教育機関、医療・保健施設、産業施設、奉仕施設、食堂、公共運輸手段での禁煙が全面的に義務付けられている。

 禁煙キャンペーンの時は、公共施設、企業所、工場などに担当者が出向き、至る所に禁煙ステッカーを貼っていた。朝鮮中央テレビには「朝から煙草を吸う人は健全ではない。周りの環境にも不快感を与えるので非常識だ」と喫煙家を非難する市民のインタビューまで流されていたこともあった。

 北朝鮮の外務省は2022年5月31日の「世界禁煙の日」に合わせてホームページの中で中国やキューバなど社会主義国の禁煙状況を伝え「我が政府は人民の使命と健康を保護するため先進的で積極的な禁煙政策を実施している」と宣伝していた。

 それが功を奏して確かに北朝鮮も全国的に禁煙が徹底しつつあるが、唯一の例外扱いが金総書記である。 

 ヘビースモーカーはどこにもいるが、金総書記の場合はTPO(時と場所と場面)を構わず、吸っている。歩きながらでも、李雪主(リ・ソルジュ)夫人や娘の「ジュエ」が隣に座っていても、育児院でも禁煙の音楽会や舞踏会でも、また元老や長老らの前であろうが礼節などどこ吹く風で、一切おかまいなしだ。誰よりも規律にうるさい金総書記が自らマナー違反しているのである。

金総書記の喫煙シーン(「労働新聞」と朝鮮中央テレビから筆者キャプチャー)
金総書記の喫煙シーン(「労働新聞」と朝鮮中央テレビから筆者キャプチャー)

 韓国の情報機関である「国家情報院」(国情院)は金総書記が「肥満とアルコールとニコチン依存、さらには睡眠障害に悩まされている」と、分析しているが、写真や映像で確認する限り、肥満とニコチン依存だけは間違いないようだ。

 喫煙が肥満防止のためなのか、それともストレス解消のためなのか定かではないが、体重が一向に減らないところをみると、後者のストレスが原因のようだ。しかし、ストレスが溜まっているからといってどこでも喫煙が許されるものではない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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